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ずるいひと。(弥政)
「 政 」
呼ばれて吸い寄せられるように近づけば、弥一の細く華奢な手が己の襟首を掴んだ。
そのまま首ごと身体を引きずり寄せられ、重力に逆らえぬまま思わず弥一の背後の壁、彼の顔の横に手を突く。互いの目に互いの姿の映りこむのがみえた。己の影で弥一の表情が陰る。近い。
「な、何でござろうか…」
黎明色の瞳に居る己が情けなく狼狽えていて、やはりもっと余裕が欲しいものだ、彼のように。
「なんでもねえよ。……ただ、お前に触れたくなった、それだけだ」
弥一はいつも嘘と真を五五にしか言わない。確かに、半は真だがしかし、半は嘘だ、触れたいだけ、と言った彼にいままさに口づけられている己の瞳にはそんな、狡い嘘吐きが映っているのだろう。
(…なんで、)
(なんでもねえよ。……ただ、お前が愛しかった、それだけだ)