版権 (A/PHは本田さんの誕生日)
Coward parallel line
※このページは黒崎様宅「JACK25」の「Sederheim」シリーズに登場するアキさんと監視人さんの二次創作です。本家にお邪魔する際はご迷惑をお掛けすることのないようお願い致します。
『アキは俺が好きって言うけどさ。じゃあ、俺が死んじゃったら? どうする?』
過去に一度だけ、アイツが訊いてきた質問だった。
適当にからかってやることも出来たけれど、膝に乗り上げた彼の目がなんだか遠くて(本人は気づいていないのだろうが)、だから、俺は正直に悲しい、と答えた。なにも手につかなくなるかもしれない、と。
嘘ではない。初めは確かに、以前同様一時の遊びのつもりで手元に置いた。気まぐれだ。それでも、自分の飽き性はよく分かっているから、2年を超えてもなお彼をここに置き続ける自分は、相当彼を気に入っているという証で、そしてもうこれが"気にいる"の範疇を超えていることも認めていた。
そのことを、隠しているつもりはまったくない。幼馴染の医者には珍しいこともあるものだと驚かれるほどだし、これまでの自分を思えばこんなに俺自身を与えて、甘やかしてきたのは彼だけだろう(昔はよく複数人侍らせて暇をつぶしていたし、いまとなっては言い方は悪いがただ弄んでいただけの彼らの顔など思い出せない)。
そしておそらく、いや確実に、そんな彼を失ったときの自分はひどい喪失感に見舞われるのだ。まったく、そんなことを思うようになるなんていよいよ彼への墜落は激しいらしい。そういう自分も嫌いではないのだが。
少しでも伝わればいいと抱きしめた肩口で、彼が息をのむのが感ぜられた。服に手をかけていつものように肌をさらすと、耳元で「…冗談ばっか…」と彼が自嘲気味につぶやくものだから、顔を見ようとデスクへ押し倒す。
そこにはどつしようもないくらい苦しげな顔を背けた彼がいて、いったい何にそんなに絶望しているのかと訊きたいほどだ。
……本当は、知っているのだが。
彼は怯えている、信じられるものなどひとつもないというように。
何に、と言われれば少し答えに窮する。例えばそれは、俺から受ける想いだったり、彼自身の感情だったり、お互いの見えない過去だったり、これからの不確定な未来だったり。優しさとか温かさと呼ばれるものを、彼は容易に信じないし、受け入れない。そんな臆病なところがまた柄にもなくかわいいと思わせたりするのだが。
「冗談? それこそ戯言だろう?」
それでも、こんなに与えているのに知らないとは言わせない。
「そんなに信じられないなら、」
また身体に教え込むぞ、と耳元からその頑なな頭へと流し込んでやる。軟骨に軽く歯をたてれば、散々躾けてきた身体はぴくりと容易に反応して甘い息を漏らした。
一度離れた俺を見上げる瞳。いつも通りに赤くなって反抗でもすればこちらも常通りに動けたであろうものを、今日はそうはさせてくれないようだ。
「…いいよ」
そしてさらにそれは、俺の動きを止めるほどで。一瞬意味を理解するのが遅れた。
「 酷くして 」
余計な事を考えずに済むように――…、そうやって何も言えずにいた俺に向かって伸ばされた指先は微かに震えていて、なんとも形容しがたい感情を植えつける。
寂しい、やるせない、愛おしい、憤り、おそらくはそういう類の感情たち。
頬に触れた手を自分のそれで包み込んだ。疑うことしか知らない、この憐れで愛おしい男が少しでも安心するように。
「教えてやるさ、お前がそう望むなら」
わかるまで何度でも。
泣きそうに歪んだ口元にキスを落とす。
頬に触れていた手を開放してやると、そのまま首へと腕が回り、珍しく自らすがり付いてきた。本当に今日はどうかしているらしい。
絡んできた舌に応えながら、どうしてやろうか、と考える。
そう、酷くなんかしてやらない。そんなに信じられないなら、どこまでも甘やかしてやろう。
慣れろ、与えられることに、大事にされることに、想われることに。
もういやだと泣くまでぐずぐずに溶かして甘やかして、そうして教え込むのだ。
いかに俺が、お前を”気に入っている”のか、その事実を。
冷たく震えていた指先は、いつの間にか熱をもって絡まっていた。
END.
ついにやってしまった…!!前々から黒崎様宅のキャラたちが好きすぎて萌えていたのですがご本人様に了承を得て調子に乗りこんなことに……特にこの話の元になっている漫画がもう毎日眺めてしまうほど好きでつい妄想を爆発させた結果キャラ崩壊ですごめんなさい(土下座)。反省は山より高くしております。(後悔はしておりません。←)
いつでも加筆修正承ります!