版権 (A/PHは本田さんの誕生日)



日西す(古みく)


side:iItsuki

朝比奈みくるという女は要注意人物だ。
あの見た目の愛らしさと間抜けな性格と、上級生らしかぬ下手な態度に隠されたものがどんなに強大か知れない。本人に全く自覚がなかったとしても、だ。
だから、それならばさきに手込めにしてしまえばいいと思いついた。
しかし彼女は鈍感でない限り誰がみても凉宮ハルヒお気に入りの彼に好意を寄せていて、果たしてそこに組織的な意図があるのかは謎だがかなり親密になろうとしている。
これは由々しき事態だ。凉宮ハルヒを動かせる人物が、どこかひとつの組織に属してしまうことがあってはすべての均衡が崩れる。そんなことは防がなければならない。

「朝比奈さん」
「あ、はい。なんでしょう、古泉くん?」
「好きです」
「……はぁ」

だから急襲をかけてみることにした。そしてこうなったら持久戦にでもなんでも持ち込んでやるつもり、だったのだが。

「……あの、古泉くんは、凉宮さんのことが好きなんじゃないんですか?」

びっくりした。この女、愚鈍そうにみえてそういうところは勘が働くのか。面倒くさいな。

「……いえ、僕は凉宮さんのような少々過激な方を恋人にできるほど器の大きい人間ではありませんので」

そうさ、凉宮ハルヒにはもう、彼がいるんだよ、朝比奈みくる。

「それに、年上でちょっと抜けてるあなたのほうが、僕にとってはたいへん魅力的です」

扱いやすくてね、と思いながら、さっさと落ちてしまえ。そう内心で毒づいてしかし笑顔を保って彼女を見やれば、いつもの能天気そうな顔が一変し、現れたのは見たこともない冷ややかな顔。……はは、尻尾を出したか牝豹め。

「……ばかね、古泉くん」
「おや、告白の途中にばかと言われるとは予想外です」
「告白?……自分の気持ちを底に沈めて、私に嘘をつくことを告白と呼んでいるなら、あなたは予想以上にばかだったってことになるわ」
「……なかなか、辛辣なことをいいますね」

しかしその見えた牝豹の尻尾に、変に気分が高揚しているのはなんだ。同属をみつけたからか。……確かにばかだな。

「ばかよ。ほんとに。あなたも、そして私も」

そうして彼女の手がこちらに伸びてくる。






side:Mikuru



「ばかよ、ほんとに。あなたも、そして私も」

そう、本当にばか。お互い届かないと知ってる相手を想って、そして身動きできずにぬるま湯の団員ごっこをしているだけ。全く違う相手を想って、堂々巡りを繰り返して、でもきっとだからこそ、お互いのことが一番よくわかってるの。

手を伸ばして古泉一樹の頬にふれる。私とは違う時間に生きる体なのに、同じように温かな体温を感じられることに安心した。驚いている彼の顔なんて、滅多に見れない貴重なものが見られたけど、でも私はそんなのじゃ足りない。もっと本当のあなたを見せて。

「……っ」

くっつけた唇を相手のそれから離すと、ようやく私の求めていた古泉一樹がそこにいた。

「……朝比奈みくる、お前はいったい何だ。何を考えている」
「……やっと会えたね、古泉一樹くん」

私と同様、彼が素を隠していることはわかっていた。同属の勘だ。そして私は凉宮ハルヒに選ばれた彼と同じくらい、この本当の古泉一樹を望んでいる。

「私にしか、あなたはわからない。あなたにしか、私はわからない」

ねぇ、そうでしょう?
そうしてやっと出会えた彼に体を寄せて抱きつけば、はぁ、と息をついて抱き返される感覚がした。

「そうだな、君にも僕にも、もとから選択肢なんて存在していなかったんだろう」

微かに強まった腕に愛しさと悲しさと僅かな侮蔑の思いを抱いて、けれど確かに私は安堵していた。




そう、私にも彼にも、お互いしかいないのだ、かなしいほどに。
だから私たちは、打算と妥協に満ちた平行線のようでいてがんじがらめになっている運命に依存しあう。












きっとふたりはこんな感じ。
この設定をベースにいくつか古みくをアップする予定。











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