窮屈な世界




12:53pm


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 ある日の昼下がり。日光の差し込む教室で皆が昼食を摂っていた。
 教室の半分より向こう側では女子が器用に口と手を両方動かし食事とお喋りに興じている。
 男子陣はというと、相変わらず美味しそうな中身の懐の弁当は何と父親が作っていると言うし、こちらも相変わらず男にしては少ない光の弁当。圭はというと実家が料理屋なだけあり見た目からしても手が込んでいた。本日唯一の買い弁は永だけだ。
 そんな中、紫と緑の弁当包みが一枚ずつ並び、その上には全く同じ形に全く同じ内容のタッパー。箸まで同じだ。その二つの持ち主は、それらと同じようにそっくりな外見をした双子で、違う所と言えば中身、性格は丸きり違うと言うところか。

「飯だー!」
「いただきます!」

 二人はぐぅと鳴る腹の音を抑えながら、待ちきれないようにせかせかと蓋を開ける。そして中身を一瞥した後、それぞれ箸を着けはじめた。
 しかし両者、箸で摘みあげた物を口に運ぶのでは無く、隣の片割れの弁当へと放り込んで行く。

「柊と桜、…何やってんの?」
「「あ?」」

不思議そうに箸をくわえながらその様子を観ていた光が尋ねると、見事なハモり具合で反応を返しながら二人が顔を上げた。

「何って…豆、移してる」
「うん、茄子移してる」

 見りゃわかんだろ、とでも言いたそうな顔をしながら言われ、や、そうなんだけどさ、と光が呆れたように返す。

「何で急にそんなこと始めたのさ」
「…何かおかしいか?」
「え、だって…」

 勝手に弁当の中にもの入れられちゃうってどうなの、と光が食い下がろうとしたとき、三人の様子を静観していた懐が助け舟を出した。

「…お前ら他の友達にも同じことするか? 普通勝手に弁当の中に物放り込むなんてしないだよ。相手がそれを好きか嫌いかなんて解んねぇんだから」

 懐の一般論に、ああ成る程ね、確かに、と一様に頷く。
 それもそうだ。母親の胎の中で十月、生まれてから十七年間、ずっと傍に居て過ごしてきた。お互いの嫌いな物や好きな物、感じている事も思っている事だって当たり前の様に解る。互いに依存し合っていると言っても過言では無いし、自分達から望んでその堕落した関係に甘んじている二人には、こんな些細な事は気に留める要因にすら為らない。当たり前の様にこういう行動が出る事それこそ、二人の中では"当たり前"であり日常だ。

「俺は豆が嫌いで、桜は茄子が嫌いなんだよ。だから交換。」
「やっぱ一緒に暮らしてるとわかるもんなんだなー」
「永だって兄弟のは割とわかんだろ。…まあお前らはもう全部解りきってるだろうしな」

 懐の言葉に、双子だから、という意味かそれとも、二人の背徳的な関係に勘づいてからか、という懸念が残ったが、別に隠している訳では無いし(公表していないだけ)、仮に懐が気づいていたとしても言い触らす様な人間でも無いから、特に気にはしない。

「ふ〜ん、やっぱ双子だと違うね〜」

 納得がいったように頷く光の弁当から、黙々と端を進めていた圭が卵焼きを一つ浚って行く。それをちらっと見てからそのまま黙認した光と何も言わずに咀嚼する圭も、大して二人と変わらないんじゃあないの。と一同が思ったのはここだけの話しだ。





 そうして今日もまた、平穏な昼休みは過ぎていく。

















with 学校の友達グループ
ちなみに懐×永、圭×光 は固定設定。




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