山道の街道を人に紛れて、二人と一匹が歩く。確かに金髪碧眼のキアロは珍しい存在だが、それ以前に歌手としての人気のほうが絶大なためか、道行く人がその姿を見ようと振り返る。そして足元の謎の物体に眼をあわてて背けていった九郎がこのなかで一番一般人の雰囲気を醸し出していた。そしてこの目立つ団体はとても隠密行動をしているとは思えなかった。 「あの…キアロさん…?」 あまりの視線の痛さに負け思わず、キアロに話を向けた 「んー?なんだい?」 「キアロさんって案外有名人なんですか?」 「うーん、そのさんってやめない?かったくるしいのはきらいなんだぁ」 質問に答えないキアロにイライラしつつ 「じゃなっくて!視線が!!痛いんです!!」 「え?視線?」 「ええ、こんなん隠密行動してるとはさすがに思えないんですど、せめて街道から外れませんか?」 今更そんなことに気付いたキアロは、あぁ!!と思いついた顔で、そのあとに多少顔を曇らせ、 「でも、それじゃああたしが目立たないじゃん?」 「あんた馬鹿だろう」 九郎が冷めた目でキアロに言い放ったキアロは図星を突かれたらしく少し悔しそうな面持ちをしたが、すぐに立て直し 「ぬ…冗談冗談だよぉ…ははは…あそこらへんで脇道に入ろう」 「えぇ、ぜひそうしましょう。この道中でもう気づかれてるかもしれないけど」 街道を少し行って、丁度人が切れたとこでキアロと九郎は脇道にはいったその後に後ろで慌ててきた追手はその姿を見失ってしまって 舌打ちを打った そのまま脇道の道なき道を進む二人 「おそーいおそいよ九郎!!」 「キアロさんがずるいんです!!上なんて卑怯です!!」 そう言って九郎は恨めしげに木の上に暇そうにぶら下がっているキアロをにらみつける かくいう九郎はと言うと道なき道をかき分けてその後からウパァはとことこと付いて歩いていたその様子をキアロは暇そうに眺めていると、奥から九郎のかき分けた道から4人〜5人の浪人の姿が見えた 「九郎ー」 「なんですか?!」 九郎は足元にからまる雑草にイライラしながら答えた 「追手」 「は?」 九郎があわてて振り返った途端浪人はもう刀を抜刀して九郎の眼前まで迫ってきていた 「お命丁戴ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 「うわぁぁぁぁ!!」 勢いのついた一振りをギリギリ紙一重のとこでよけ、九郎も慌てて刀を抜刀しようとしたのだが、柄の部分が長すぎて、慌てながら鬼包丁を抜刀というより引っこ抜いた。その合間を敵が逃すはずもなく懐に入りこまれ、しまったと思うその刹那九郎の胴体を真っ二つにしようと刀が迫ってきていた。と同時にその動きは何かに止められるように止まり野太い悲鳴が上がった九郎は何があったのか分からず、その悲鳴が上がった方向を見やると浪人の腕がなくなっていた若草の草がそこだけ赤黒い血によって染められてその下には浪人のであろう刀を持った腕が主人から離れ離れになって悲しそうに横たわっていた 「油断しすぎだよぉ九郎」 もうその血をみて今でも卒倒しそうな九郎に向かってキアロがこの場にそぐわないようなゆるい声音で言った。青ざめながら九郎はキアロのほうを見やると、先ほどと変わらず木にぶら下がっているキアロの両手には長さ30センチはあるだろうか、針のような針にしては大きすぎる、今までどこに隠し持っていたのかが不思議になるくらい大量の針がキアロの手に収まっていた 「どうするぅ?浪人のみなさん?」 キアロが相変わらずゆるい口調で浪人たちに話しかけた 仲間の一人の腕が吹き飛んだのを見て勇敢にかかってくる勇者はおらず、浪人たちはおびえた風に転がりながら逃げ去っていった逃げていく浪人を見送りながらぶら下がったままキアロが意地の悪い顔で 「さぁて、九郎には馬鹿撤回してもうかなぁ?」 「馬鹿じゃないで…馬鹿じゃないです!!」 「うむ!苦しゅうない!」 満足したように、キアロがぶら下がったままの態勢をなおすと途端に気持ち悪そうに 「うぇ…あまりにもひっくり返ってたから酔った…」 「キアロ…やっぱり馬鹿でいいんじゃない?」 呆れた風に九郎が言うとキアロの顔が輝いた 「やっと!さんつけなくなったね!」 「めんどくさくなっただけだよ。とにかくはやくここから離れたい」 相変わらず青ざめている九郎が後ろを指さして言った 「やっぱあたしも下降りてあげる!!」 九郎が胸の底で扱いやすいなと思ったのは暫く九郎だけの秘密 |