雪と墨[リフレイン] 暗い暗い部屋で、一人の少女がそこに月があるかのように、光を求めるように、見えない窓に向かって歌った。冷たいお母さんとお父さんを抱いて、おもちゃを抱えた子供のように。誰に向かって歌っているのかなんて、誰に向かって歌っているかなんて、どこにおいてきたっていうの?どこにいったの?そんな声を聞いたような気がして、少年はその歩みをふと止めた 「…?え?」(これは歌?)引き寄せられられるように、歩みを止めて、ゆっくりと歌がしたほうを振り向いた。 「親父、なんか歌が聞こえる。」 「…………?きこえねぇぞ歌なんぞ。文楽。」文楽も神妙な面持ちで首を横に振った「……………俺ちょっと見てくる!!!」 「葛?!」文楽の制止の声を背中に聞いて、葛はその音につられる様に緩く歩いていていた歩みを忙しなく吸い寄せられるように走り出す。聞こえる。寂しいような、だけど明るく、まるで少女が自分を勇気付けているように。なんだか自分の胸がきゅうきゅうと苦しい。 最終的に声を辿り屋敷中をうろうろしたが、長い長い縁側を通り抜け、鯉がゆらゆらと泳いでいる庭の池にたどり着いた。聞こえる。ここのどこかから声が聞こえる。自分たちとは違う不思議な旋律が池の端の岩の下から聞こえる。すぐ岩の元に駆け寄り、岩に耳をそっと当てる。冷たい岩の下から確かにとても微かな音は聞こえていた。 「ここだ。」 よくよく岩のまわりを見てみると、確かに誰かが動かしたような後がありそれを砂利で隠してあった砂利を必死に掻き分けると、明らかにどこかにつながる抜け道のような扉がある。 ぎぃぃぃと音をたてながらその扉が開いた。下に続く階段は静かに闇が佇んでいたごくりと生唾を飲み込み、階段足をかける。かつかつかつと壁に反響して自分にその音が返ってくる暫く歩くと光がぽつんと灯っている。 蝋燭に移るものは俺が、見たことない色の髪と、緑のビードロ目の女の子だった。あまりにきれいな色だったもので、しばらく突っ立ったまんまボーと眺めていた。心臓がドキドキするたんび、落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせる。 少女はうつろな瞳で、「…あなたはだあれ?」 「え、おれ?俺は徳川葛、君を助けにきたんだ。」 少女は体をゆらりゆらり揺らしながら、立ち上がりゆっくりと微笑んだ 「そう、知ってるわ。知ってる。お父さんとおかあさんをこんなにしたのはあなたよね?」 死体は腐食処理をされたのか剥製のように、その少女に抱かれていた物を見て、葛はその尋常ではない状況にぞっとした。 「え…?いや…ちが…」少女は葛にゆらりゆらりと歩み寄ってきた。ガリガリにやせ細っていたのにその気迫に負けて、後ろに身を引いた。そのとき脇腹に激痛が走った。 「っぐ?!」 この子隠しナイフを持ってたのか?!くっそ油断したと自分を叱咤した。 刺されたところが悪かったのか、血が溢れんばかりに出できた。 「お願いだよ…私を…」 それをいったきり少女は気を失った。 脇腹を押さえ止血を試みるが一向に血が止まる気配がない意識も朦朧として視界もぼやけている中ひとつ若い青年の声が降り注いできた。今思えばそこには葛とキアロしかいなかかったはずのなのにおかしな話だ。 「その出血量だと死ぬな?兄弟」 「誰…?」 うつろに見やるとぼんやり黒い服を着た青年が見下ろしている 「簡潔に言おう、もうすぐお前の親父さんも来ることだろう。お前に力を貸してやる。電気というものを操る力だ。今はまだ死んでもらったら今後困る。」 ぽんと黒い服の青年が葛の頭に手を乗せるとバチバチっと音を立てて葛の周りに電流が走った。 「うわっ?!なに?!」 「それが電気だ。今傷口はそれで一応止血しといてやったよ。」 おお、そんな使い方もできるのかと葛は感心した意識がはっきりしてきてきたので青年をまじまじ見つめると見たことのないデザインの服を着ている服の後ろについている鎖がしゃんと鳴った 「お兄さん、ありがとう。えっと名前は…」 と葛は遠慮ぎみに青年に求めた青年は少し眉をひそめながら 「…針誠一…お前らは雷神って呼んでるな。ああその電気の使い方は平城、飛鳥という人間に聞くといい。」 ポカーンと誠一の話を聞いていた葛が思い出したように、目をキラキラ輝かせながら 「ねえ今度はいつ会えるの?」 その返答は空をきった。 ―――――― 「葛?!」脇腹から血が手出ているのを確認して文楽が驚いた表情をして葛に駆け寄った。「大丈夫だよ血止まってる。それよりこの子」葛は背中におぶさっている子を見やり吉宗に確認した。 「おう当りだ。にしてもまぁよく見つけられたな?俺ら全くわからんかったぞ?手傷を負ったにしては上場じゃねえか」 「うんまぁね、この子に刺されたんだ」 さらと葛がいって、暫く考えたように顎をさすると吉宗の顔がにやけた 「ほう?そういえば文楽、お前まだ仕事次ぐやついなかったよな?」 「まさか…!!この子にやらせるつもり?!」文楽が驚きと怒りをあらわに吉宗に怒鳴る「なぁに子供が一人位増えたってどうってことないだろ?しっかりしつけていけよ」 「あーもう、君のそういうとこも嫌いだよ!!」 吉宗はニヤニヤしたまま 「葛お前はもうちっと修行が足りなかったようだな、いい奴がいるからそいつにみぃぃぃぃっちり鍛えなおしてもらえ」 葛は顔が引きつりながら 「はぁい…」 ――――――――― 今日も淡々と仕事をこなしたあと葛は思い出したように 「そういやさ、お前俺刺した事覚えてる?」 「え?いつのこと?」 「初めて会ったときのことだよ、お前出会いがしらにブスーっと」 「あんときの記憶曖昧なんだよね。何でだろ。」 まぁ確かにあの現場で生きていたキアロのほうが奇跡に近い状況だったと今は思う。 「あんまり思い出したくない内容だもんなぁ、あんときなお前に指された後黒い兄ちゃんに助けてもらったんだよ。力かしてやるって不思議な話だよなぁ?」 覗き込むように、キアロが星屑をちりばめたような髪を垂らす 「それで葛エレキテルだせるようになったの?」 葛は月のまわりの星を数えながら 「おう、そうなんだよ今もこの力がうまく使えてるのかもわからん」 「えー使えてるんじゃない?少なくとも私はそう思うけどなー?」飄々とキアロが輝くような笑顔で 「これからも私を守ってね!!好きだよ葛!!」 なんていうから俺は顔から火が出るかと思った。 |