モチ



祐一先輩の策略で、拓磨・真弘先輩と一緒に暮らし始めて数日。
美鶴ちゃんの作ってくれた綺麗なお弁当を広げ、会話に花を咲かせる。
事の発端は弁当争奪戦の中で珠紀が言った一言から始まった。

「美鶴ちゃんのお手製お弁当は大事だもんね。拓磨の場合。取らないわよ拓磨なんかから」

自分でも心底可愛くないと思う。
でも、何か面白くなくてそんな事を言ってしまうのだ。

「まぁ美味いからな。悔しかったらお前もこれぐらいになってみろ」
「あー!人の料理食べたことも無いくせにー!」
「作らないヤツ程そうゆうことを言うもんだぞ」

・・・・。
なんて失礼なヤツ。
内に溜まったこの怒りをどう処理してくれようかと拓磨を睨み付ける。
その光景に祐一はため息を吐き、慎司は苦笑いを浮かべている。
そんな中口いっぱいに美鶴製弁当を頬張った真弘が、さも当然のように呟く。

「珠紀の料理?マジで美味いぞ?」
「・・・・・・」

変わらず食事を続けている真弘にとっては何でもない台詞だったのだろうが、他3人の守護者が真弘の言葉で一瞬にして凍りつく。

「え!?本当ですか?真弘先輩」
「ベタかもしんねぇけどやっぱアレが一番美味かったな〜」
「アレってなんです?」
「卵焼き」
「卵焼き?」
「あぁ。俺好みの味付けだったぜ」
「よかったぁ〜」
「また俺様の為に作れ」
「もぉ、先輩は〜。しかたないですね」

また今度ですよと、どう見ても二人の世界で和やかに会話を続けている。

「・・・ちょっと待て」
「真弘先輩っ!」
「いつの間に・・・」

立ち直った3人の守護者が真弘に詰め寄る。

「あぁ、珠紀が俺様の為にだな。俺様への愛たっっっぷりの手作りの弁当を」
「そーゆーことじゃないっす!!!」
「美味かったぞ〜珠紀の弁当」

ニヤッと口に笑みを浮かべ勝ち誇ったように真弘が言う。

「・・・珠紀。俺は稲荷ずしが食べたい・・・」
「えぇ!?祐一先輩!?」

拓磨が真弘に詰め寄っている間に、祐一が珠紀に迫る。

「僕は・・・先輩の手料理ならなんだって」

慎司まで・・・。
しかも顔を赤らめて言う台詞じゃないだろう!!

「っ!珠紀ちょっと来い!!」

我慢が限界に達した拓磨は、珠紀の腕を強引に掴み屋上を後にした。

「え!?拓磨!?」

すれ違う生徒の目も気にせず、拓磨は珠紀を連れずんずん進む。

ついた先は校舎裏にある日当たりのいい場所。
屋上からは死角で、よく真弘が木に上り昼寝をしている場所だ。
その木に珠紀を押し付け、両手を木の幹に添えることで珠紀の逃げ道を塞ぐ。

「どうしたの?拓磨」
「・・・・・」
「拓磨?」
「俺はお前のなんだ」
「え?・・・彼氏?」
「なんで疑問系なんだよ・・・」

珠紀の返事に脱力を隠せない。

「??」
「いつ、真弘先輩に弁当なんて作ったんだ」
「この間の調理実習で」
「は?」
「拓磨サボったじゃない」
「あ〜・・・」

確かそんな事があったような気がする。
調理実習なんてかったるくてずっと昼寝してたような。

「その日美鶴ちゃんのお弁当もあったから、真弘先輩にあげたの」
「・・・・・」
「本当は拓磨にあげようと思ってたのに拓磨、いないんだもん」

起きたら放課後だったんだよ。
・・・不覚だ。
俺じゃない男が俺より先に珠紀の手料理を食べた。
ただそれだけの事に煮え切らない感情が俺の中で蠢く。
珠紀は俺の女。
それはクラスのヤツも守護者の連中も理解している。
それでも未だに珠紀を狙っている男は耐えないわけで・・・。

「拓磨?」
「っ!」
「んっ!・・ぅ」

やりきれない思いに俺は、珠紀に乱暴な口付けを押し付けていた。

「ふっ・・・んぁ」
「はっ・・」

何度も、何度も。
呼吸をする間も与えないほどの口づけ。
膝から力の抜けた珠紀の腰に手を回しきつく抱きしめる。

「はっぁ・・」
「ん・・・」

ようやく拓磨が唇を離すと二人を銀糸が繋ぐ。
力の入らない珠紀を抱き込み、拓磨は珠紀の首筋に顔を埋めた。

「たく・・・ま?」
「・・・ん」

背に回された拓磨の手が熱い。
そんなことをぼーっと考えていると首筋に熱と痛みを感じた。

「拓磨っ!?」
「はっ・・・わりっ・・・もう少し・・・」

首筋に拓磨の熱い舌を感じ、また・・・きつく吸い上げられる。

「やっ・・・拓磨・・ダメっ・・!」

力の入らない珠紀の抵抗など聞き入れられるわけもなく、拓磨はさらに珠紀を抱きしめた。



―――・・・



「もうっ!これじゃ制服から見えちゃうかもしれないじゃない!」
「・・・悪い・・・」

バツが悪そうに頭をかき、拓磨は珠紀と目を合わせようとしない。
嫉妬に気が狂い、気が済むまで珠紀の唇を貪った後では何も言えない。

「もうっ!」

しきりに首筋を気にしているが、襟首からちらちら見える自分の所有印に口元がゆるんでしまうのは仕方が無いことではないだろうか。

「悪かったよ」
「本当にどうしたの?」
「別に・・・」
「・・・もしかしてヤキモチ・・?」
「うっ・・・」

首を傾げながら拓磨の顔を覗き込む珠紀に鼓動が跳ねる。
可愛い・・・。

「ふふっ」
「なんだよ」
「そっか〜。拓磨妬いてくれたんだ?」
「・・・悪いかよ」
「ううん?嬉しいの」

柔らかな笑みを浮かべ、いつもの帰り道を珠紀が振り返りながら歩く。

「ねぇ拓磨、明日のお昼は二人で食べようか」
「は?」
「お弁当作ってきてあげる」
「え・・・」

ね?と珠紀が拓磨の腕に自らの腕を絡め首をかしげる。
やっぱ可愛い・・・。
拓磨は赤らむ顔を掌で隠した。

「大好きだよ。拓磨」
「俺だって・・・好きだ」

たかが弁当一つも許せない位に・・・。



アトガキ
うん。拓磨は珠紀ベタ惚れ全快でいたらいいよ。
たかが弁当で独占欲丸出しになる拓磨も結構スキです(笑)
これ、微裏かしら?

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