棗×風斗 R18 縫様リク

※風斗→棗→梓ベースで濡れ場は棗×風斗です。


僕が知っている棗兄は

いつも悲しい瞳をしている気がする

その視線の先に居るのが、僕じゃないという事実が

僕の心を容赦なく切り裂いていくんだ

いつから僕はこんなにも

棗兄の事を好きになっていたんだろう…

叶わない恋だって解ってる

それでも僕は、棗兄の傍に居たい…

卑怯で、弱虫で、嘘吐きで…

でも、誰よりも優しい棗兄の傍に…――。



夜中の1時…。

漸く仕事が終わりマンションに向かい歩いていると、公園に棗兄らしき人影を発見して僕は思わず立ち止まった。

「…棗兄?」

「…?ああ…風斗か。…今帰りか?相変わらず、忙しそうだな。」

真冬だというのに棗兄はコートも羽織らずにベンチに座っていて、僕は放っておけずに棗兄の隣に静かに腰を下ろした。

「うん、まあね。…棗兄は何してるの?こんな時間に。もしかして…梓兄と何かあったの?」

「…風斗…おまえ、もしかして…俺の梓への気持ち……気付いてたのか?」

棗兄は目を丸くして僕を見つめてくる。こんなに間近で見つめられているのに、その瞳は僕を見ていないんだと思うと…やっぱり少し胸が痛んだ。

「…とっくの昔にね。棗兄、解りやすいんだもん。いつも梓兄の事ばかり目で追ってるし、バレバレだよ。」

僕が淡々とした口調で言うと、棗兄は困ったように微笑む。その笑顔は、あまりにも痛々しくて…僕は思わず棗兄を抱き締めていた。

「…ふ…風斗…?どうした…?」

「…どうして、梓兄じゃなきゃダメなの?辛いんでしょ?そんなに辛いなら、もうやめちゃいなよ…もう、棗兄の悲しそうな顔なんて…僕、見たくないよ…っ…。」

気付かれたかもしれない。そう思った。こんな風に抱き締めてしまえば、きっと棗兄は僕を避けるようになる。これ以上僕に辛い想いをさせないために。

僕が後悔と不安に襲われていると、棗兄は予想外の言葉を僕にくれた。

「…風斗は優しいな。俺…風斗を好きになれば良かったのかな…。」

棗兄の口から発せられた言葉に、僕は思わず棗兄から離れようとした。

けど、それを阻止するかのように棗兄の腕が僕の腰にしっかりと廻される。

「アイツは…梓は、最初から椿の事しか目に入ってないから。それでもいいって思ってた…けど、もう限界かもしれない…。」

棗兄の声は震えていて、僕の胸は締め付けられた。僕はやっぱり…棗兄の傍に居たい。それしか望まない。それだけでいい。

「…ねえ、棗兄?僕……棗兄が好きだよ…。梓兄を今すぐ忘れろなんて言わない。僕を好きになってくれなくても構わない。だから…傍に居させて?」

「…風斗は…それでいいのか?俺、おまえに辛い想いをさせると思う…今だって…風斗に抱き締められているのに、俺はアイツを…梓を想って…泣いてる…。俺って…最低だよな…?」

「…僕は…それでも、構わないって思ってる。棗兄の心の中に居るのが、僕じゃなくても…今、こうして棗兄の傍に居て…棗兄を抱き締めているのは、僕だから。」

腰に廻されている棗兄の腕の力が弱まった隙に、僕はそっと棗兄の身体を離した。棗兄の真っ赤な瞳と目が合い、そしてそっと二つの影が重なった。

抵抗されるかと思ったのに、棗兄の方から舌を絡めてきた。棗兄の舌が熱くて、僕は頭が真っ白になりそうになる。

「ん…っ…風斗……マンション、帰ろう。ここじゃおまえを抱けない。」

「っ…!棗兄……直球過ぎるんだよ、バカ…。」

頬が一気に熱くなるのを感じて棗兄から目を逸らすと、棗兄は僕の顔を優しい瞳で覗き込んでくる。

「……梓の事、忘れさせてくれるんだろ?」

「……うん…僕しか見えなくさせてあげるよ。」

「…そりゃ楽しみだな。…期待してるよ、風斗。」







棗兄の部屋に入ると、後ろから棗兄に抱き締められた。

身に纏っていた衣服を性急に脱がしていく棗兄に、僕は戸惑いを隠せない。

「な、棗兄…?そんなに焦らなくても、僕…逃げたりしないよ?」

「…気付かないか?隣…アイツらの声、聴こえるだろ?」

「…え……あ、本当だ…。それで、不安になっちゃったんだ。…もしかして、さっき公園に居たのも…この声を聴きたくなかったから?」

隣の部屋から聴こえる、梓兄と椿兄の悩ましい声と愛し合う音に僕は思わず声のボリュームを下げ棗兄に問い掛ける。

「…………我ながら、女々しいと思うよ。けど……これを毎晩聴かされるのは、堪えられない…。」

なんだ…僕を抱こうとしているのも、梓兄が椿兄と愛し合っているのを忘れるため…。

僕に触れている今も、棗兄の心の中はこんなにも梓兄でいっぱいなんだ…。

棗兄の心に、僕はどうしたら映れるのかな…?

もう、解らないよ…――。

「…っ…棗兄……やっぱり、止めよう…?こんな気持ちで僕を抱いたって、棗兄が辛くなるだけだよ…。」

「……風斗……泣いてるのか…?ごめん…。」

「謝らないでよ…っ!余計に傷つく…。」

棗兄に背を向けて必死に涙を拭うけど、涙は次から次へと溢れ出してしまう。

数秒後、背中に棗兄の温もりを感じ、僕は思わずびく、と身体を揺らした。

「風斗……自分勝手かもしれないが…独りにしないでくれないか…今、独りになるのは…辛い…。」

「ぁ…っ…棗、兄……っ…首、くすぐったい……っ…。」

棗兄の唇が首筋に押し当てられ、僕は思わず身を捩らせ甘い声を漏らした。

「…くすぐったいだけ?気持ち良いんだろ…素直になれよ、風斗…。」

服の裾から棗兄の手が滑り込んでくる。冷え切った手で乳首を摘まれ、僕は堪らなく興奮してしまった。

「ん、あっ…ひぁっ…!棗兄…もっと…っ…もっと、僕に触れて…?今だけは…僕だけを見て…?」

「風斗……おまえの感じてる声、可愛いよ…そそられる。なあ…次は、どうして欲しい?」

耳元で甘く囁かれ、僕は立っていられなくなり床にズルズルと座り込んでしまった。

棗兄はそんな僕の目の前に膝立ちになり、意地悪く問い掛けてくる。

「…っ…僕、の…固くなって震えてるの…触って…気持ち良く、して…?」

「…触るだけでいいのか?俺は舐めたいんだけど?」

「…っ…棗兄の…好きなように…していいよ…?棗兄となら…どんな恥ずかしい事でも、してみたい…から…っ…。」

顔を真っ赤にしながら言うと、棗兄は切なげな表情で僕を見つめた。

そして、僕の履いているジーンズを下着ごと脱がすと、僕自身に愛しげに指を這わせてきた。

根元からゆるゆると扱きながら、先端の大きい部分を舌を遣い舐めてくる。

ただでさえフェラなんてあまりされた事がないのに、棗兄にされていると思ったら余計に感じてしまう。

「ん…ふ、風斗……もうキツイんだろ?出しちまえよ。」

「えっ…あ、ぁあっ…っ!ん、ぁ、…っ…いぁぁぁっ…――ッ!」

急に僕自身を握る手に力を込められ、僕は我慢できずに棗兄の咥内にその欲を放った。

「…んくっ…。濃いな…風斗、溜まってたのか?」

「…僕は忙しいから、自慰してる暇なんてないんだよ…っ…ていうか、飲むなよ!どうしていいか解んないだろ…っ!」

「…そうなのか。だったら…これからは、俺とするか?」

棗兄の言葉に、僕はどう答えたらいいのか解らず、暫く沈黙が続いた。

何とか沈黙を破ろうと、僕は言葉を紡ごうとした。

「……でも、棗兄はまだ…――。」

「…風斗の気持ちを知って、正直戸惑った。でも…嬉しいと思ったのも本当の気持ちなんだ。こんな俺でも、愛してくれる人がこんなに近くに居るんだって思ったら…嬉しかった。」

「…棗、兄…。もう少し、解りやすく言って…僕は……棗兄の傍に居てもいいの…?棗兄の事を…好きで居ても、いいの…?」

瞳を潤ませながら棗兄に問い掛けると、棗兄は優しい瞳で僕を見つめ、そっと唇を重ねてきた。

「……傍に居て欲しい。俺を好きで居て欲しい。そして、いつか俺も……風斗を心から愛したい。」

今はまだ好きになれない…遠回しにそう言われているような狡い言い方だった。

でも、棗兄の傍に居られるなら…僕は、それで構わない。

「…棗兄…続き、してくれないの…?」

「…風斗…。」

「…梓兄と重ねてもいいから…僕を抱いて…?棗兄……っ…。」

濡れた視線を棗兄に向けると、棗兄は余裕のない表情で僕の腰を掴んだ。

そして、まだ閉じたままの僕の秘部に指を三本捩り込むと、グチュグチュと卑猥な水音を立て掻き回してきた。

「っ…風斗の中…俺の指を美味しそうに咥えてる…すげえエロい…もう、挿れても大丈夫か…?もう我慢の限界なんだが…。」

「んぁっ…は、ぁっ…!ん…あ、ぁあっ…っ…!う、ん…大丈夫だから…挿れて…僕を、棗兄で…いっぱいにして…?」

「風斗…っ!」

棗兄の熱く膨張しきった欲の塊が僕の秘部にゆっくりと埋め込まれていく。

初めて感じる棗兄自身の熱さと大きさに、僕はどうにかなってしまいそうになる。

「あぁっ!んぁっ、は、ぁっ!ん、んっ…!や、ぁっ…!棗、兄…っ!」

「…っ…気持ち良いか?風斗…っ…。」

「あっ…!ん、ぁっ…っ…棗、兄は…?僕の中…気持ち良い?」

涙目で棗兄を見つめると、棗兄は激しい律動はそのままに僕の頬に優しく唇を寄せた。

「…ああ…すげえ、気持ち良いよ…ずっとこうしていたいくらいだ…。」

「っ…!棗…兄…っ…あっ…んぁっ…ひ、ぁっ!もっ…イッちゃ…あっ……っ、あぁぁぁっ…――ッ!」

最奥を激しく突き上げられると、僕は身体をビクビクッと跳ねさせながら自身から熱い欲を迸らせ、棗兄に抱き付きその胸に頬を埋めた。

数秒後、棗兄も僕の中に欲望の証を放つと、僕を思いきり抱き寄せ、髪を優しく撫でてくれた。




お互い、辛いままだけど 何も変わっていないけど

棗兄が優しく笑うから、僕はその微笑みの傍に居たいと願わずには居られない。

棗兄が僕を必要としてくれた…それだけでも、僕は充分幸せなんだ。

「棗兄…好きだよ…。」

「……風斗…。」

この言葉に君が、応えてくれなくても…

僕を抱き締めるこの優しい腕を、振り解くなんて僕には出来ないよ…。

「いいよ。今はまだ、このままで…。」

君の悲しみや痛みも、これからは僕が一緒に堪えてあげる。だから…。

「…風斗…ごめんな…。」

「…泣かないで。僕、棗兄の傍に居られるだけで幸せなんだから…。」

いつか君が、今の恋を忘れられることが出来た時に…僕が傍に居てあげたいんだ。

そっと棗兄の目尻にキスをすると、棗兄はくすぐったそうに笑った。

「風斗は…何でそんなに欲がないんだ?俺に愛されたいとか思わないのか…?」

「……めちゃくちゃ思うよ。だから、棗兄の傍にずっと居て、棗兄の心をじわじわと奪おうとしてるんじゃん。」

「…風斗…もう一回、するか。何だか今、無性に風斗の感じてる声が聴きたくて仕方ない。」

「…バカ…今からしたら、朝になっちゃうよ…?」

頬を真っ赤にして呟くと、棗兄は何も言わずに唇を重ねてきた。

そしてそのまま僕達は、胸に別々の痛みを抱えながら、朝まで温もりを分け合ったのだった――。

今はまだ、このままで
(これ以上欲張りになったら、そこで終わってしまうような気がするから)

end.






縫様からのリクエストで、棗×風斗を書いてみました。遅くなってしまってすみません。
風斗の片想い的な感じで書いてしまったので、気に入って頂けるかどうか不安です…。
でもこういうお話って個人的にはすごく好きなので、楽しんで書かせて頂きました。
縫様、リクエストありがとうございました。皆さんに少しでも気に入って頂けたら嬉しいです。

素敵なお題は確かに恋だった様よりお借り致しました。ありがとうございました。



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