「ふーたん、おかえり!」

「ただいま。…って、弥?おまえ、何でこんな夜中に起きてんの?」

「ぼくね、ふーたんとお話したかったから待ってたんだ!」

弥の無邪気な笑顔を見ていると、そんな疑問も忘れそうになる。

でも、こんな夜中に起きてて、誰も注意しないなんて、何かがおかしい…。

………あっ!

もしかして、これ、夢なんじゃ…。

そう思った瞬間、視界がぼやけて、意識が遠のいて…

気付いたら、僕は自分の部屋のベッドに寝ていた。

「なんだよ、やっぱ夢か…ってゆーか、何で僕、弥の夢なんて見ちゃってんの…?」

「ふーたん!」

「うわーっ!おまっ…いきなり出てくんなよ…!心臓止まるかと思っ…」

言い終わる前に、口を塞がれた。え…なに…何なの?この状況は…!

僕、弥とキス…してる…!

「ふーたん、ぼくとちゅうするの、いやなの…っ?」

「いや、そんな事ないけど…いやいや!おかしいだろ!いちお、兄弟なんだぞ?解ってんの?」

「だって、ぼく、ふーたんのことだいすきなんだもん…。」

いやいやいや、まずいってば!大体、こいつまだ小学5年…むりむりむり!ないないない!

「ありえなーい!…あれっ?…明るい…ひょっとして、今のも夢…?」

今の夢から推測すると、僕は…弥のことが好き?!

「さっきの夢よりこの現実の方が悪夢なんですけど…。」

その日の朝食の時、弥と目も合わせずにいたら、弥がどことなくむくれている気がした。

「ふーたん、なにかあったの?」

「いや…実は、昨日、夢におまえが出てきたんだよね…それでヘコんでて…。」

「?どうして、弥が夢に出てきたら落ち込むの?」

雅臣兄さんに突っ込まれ、僕は昨夜の夢の内容を思い出し頬を赤くした。

「ふーたん、おかおが赤いよ?どうしたの?」

「…おまえさ、僕のこと、好き?」

「うん!だいすきだよ?」

「………はぁぁぁ…夢だけど、夢じゃなかった…。」

「あ、それ近所のトロロのせりふだよね!」

「ふぅん…ふーちゃんが、弥のことをね…なかなか意外な組み合わせだよね…。」

「う、うるさいな!勝手に理解しないでよね…あ〜もう、マジ落ち込む…。」

「大丈夫だよ、弥はまだ小さいしふーちゃんもまだ未完成。きっとこれが最後の恋にはならないから。」

「ちょっ、まだ恋って決まった訳じゃないから!あー…もうご飯いいや!…行ってきます!」

僕は恥ずかしくて、弥と一緒の空間に居るのが苦しくて、まだ時間前だけど仕事に向かった。

「??ふーたん、どうしちゃったのかな?かなかなはなにかわかったの?」

「んー…ふーちゃんはお年頃だからねえ…色々想い悩むことがあるんだと思うよ。」

朝日奈家に新たなカップルが誕生する日は、そう遠くはないかもしれない。

夢の中でも

(恋だなんて認めない!)

end.

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