棗×梓 R18



梓の瞳に映るのは、俺じゃない――。

そう気付いたのは、もうずっと昔のこと。

でも、どんなに梓が椿を好きでも俺は構わないんだ。

俺が好きになったのは、紛れもなく椿の事が好きな梓なんだから…。

もう、梓を愛さずには居られない…もう、居られないよ…梓。

梓への気持ちに背を向けてしまったら、俺が俺じゃなくなってしまうような気がするから…。




「梓…今頃、何してるんだろう…。」

時計を見ると、午前1時を廻っている。ベッドに入ったのは、2時間も前なのに。

俺はベッドから降りると、水を飲みにキッチンへと向かった。

すると、玄関の向こうから誰かの足音が近づいてくる事に気が付き恐る恐るドアを開けると、俺は思わず目を見開いた。

「…!あ、ずさ…どうしてここに…?」

足音の正体は…梓だったから。

俺がずっと会いたかった人。

愛しくて、触れたくて、仕方がなかった人が…今、目の前に居る。

「棗…ごめんね、突然。…上がってもいい?」

寂しげに睫毛を揺らしながら微笑む梓の姿に、俺の心は切ない気持ちでいっぱいになった。

どうして、梓は俺のところに来てくれたんだろう…。椿と喧嘩でもしたのだろうか。

俺が梓の向かいに座ろうとすると、突然梓が俺の手を掴んだ。

「…梓?どうした?」

「…隣に来て?もっと近くで話したいんだ…棗と…。」

梓の視線は僅かに熱を帯びているように見えて、俺の心臓はドクンと高鳴った。

「…梓…。どうしてこんな時間に、一人で来たりしたんだよ…。」

「…僕の気持ちを伝えておきたかったから…多分、棗は…勘違いしているよ。」

「…え…?梓の…気持ち?…勘違い…?突然来て何言い出すんだよ…。」

梓は俺の頬にそっと両手を添えると、俺の唇に自分の唇を重ねてきた。

「ん…っ…棗……僕は…棗が好きなんだ…信じられないかもしれないけど…。」

「ん……本当なのか…?いつから…?」

「…棗が、僕たちの住んでいるマンションから居なくなったあの日から…。」

震える手で梓を抱き寄せてみると、梓はおずおずと俺の背中に腕を廻してきた。

ずっと感じたかった梓の温もりに、俺の瞳からは大粒の涙が溢れ、梓の肩を濡らした。

「あず、さ…っ…信じて…いいんだよな…?」

「うん…信じて?僕は…棗に恋してる。棗の事だけを想ってる…。」

俺は梓をベッドにそっと押し倒すと、梓の服のボタンを一つずつ外しながら梓に語りかける。

「梓…俺、ずっと梓を抱きたくて…自分のものにしたくて…気が狂いそうだった。梓の事を忘れようともしたよ。けど、できなかった。梓のいない明日なんて、俺にはもう考えられないんだ…。」

「…棗…僕はもう、棗のものだよ…?だからたくさん抱いて?僕だって…棗がいない明日なんて、生きたくないよ…。」

梓の頬に一筋の涙が流れ落ち、俺はその綺麗な滴を指で拭うと梓の目尻に優しくキスを落とした。

乳首をぺろりと舐めると甘い声を上げる梓。その声を何度思い浮かべただろうか…数えきれないくらいだよ…。

「んんっ…は、ぁ…んぁっ…棗…じ…焦らさないで…?」

「…梓は、俺にどうしてほしい?」

「…そ、そんなの…解ってるくせ、に…っ!」

涙目で睨んでくる梓に、俺の下半身は微かに反応し始める。俺は梓の唇を舐めると、耳元でこう囁いた。

「…言って?梓…俺、梓の口から聴きたい…いいだろ…?」

梓は身体をびくびく、と震わせ、頬を真っ赤に染めながら掠れる声で呟いた。

「…僕の…ここ…棗に触って欲しくて…もう、こんなに固くなってるの…棗の手で…楽に、して…?」

上目遣いで見つめられた瞬間、俺の中の理性が音を立てて崩れ去っていった。

「梓の…すげえ、熱いな…こんなに先走り垂らして…そんなに俺に抱かれたかったのか…?」

「…っ…そうだよ…ずっと、ずっと棗に抱かれたかった…棗に…触れて欲しかった…。」

梓自身を口に含みちゅぱちゅぱと音を立て舐めていくと、梓は俺の髪を掴み艶めかしい声で啼いた。

「ん…ふ、もっと…もっと、梓の可愛い声、俺に聞かせて…?」

「やっ…ぁ、んん…恥ずかし…よっ…あっ…んん…っ!」

梓自身に舌を這わせたまま、いやらしく蜜を溢す梓自身をゆっくりと扱くと、梓は悲鳴に近い嬌声を上げて俺の咥内にその欲を吐き出した。

「んっ…あぁぁあぁんっ…!っ…ごめん…!棗…大丈夫?」

「…梓のイクところ、初めて見たけど…やばいな。暫く頭から離れなさそうだ…。」

「…僕の咥えたまま恥ずかしい事言わないでくれないかな?棗…。」

梓に指摘され渋々梓自身から口を離すと、まだ触れた事のない梓の柔らかそうな秘部にそっと舌を這わせた。

「あっ…んぁっ、はぁ、んん…なつ、め…っ…。」

なぁ、梓…俺だけの梓だって、思ってもいい?やっぱりまだ不安なんだ…梓をこの手で抱き締めるのも、こうやって肌を重ね合うのも…何もかもが初めてだから…。

「梓…俺だけのものになってくれる?」

耳元で甘えるように訊くと、そっと耳たぶを甘噛みした。梓は身体をびくんと震わせながら小さく頷いてくれた。

「うん…いいよ。僕を…棗だけのものにして…?」

そう言って笑う梓の表情は、どこか儚げに見えて…俺は思わず梓をぎゅっと抱き締めた。

「梓……俺のも、触ってみる…?」

小さな声で呟き梓を見つめると、梓は頬を真っ赤にしながら遠慮がちに俺自身に触れてきてくれた。

「あ……棗の、すごく熱くて…脈打ってる……可愛い…。」

「っ…!可愛いとか…言うなよ…っ…恥ずかしくて死にそうになるから…。」

「ふふっ…だって、ぴくぴくしてて可愛いんだもん…舐めてもいい?」

梓は俺の股間に顔を埋めると、両手で根元を掴み舌先で先端を突いてきた。

大胆な梓の行動に、俺の脳内は梓でいっぱいになっていく。

梓の舌の感触が、堪らなく気持ち良くて…俺は思わず生唾を飲み込んだ。

「梓…っ…俺、もう我慢できねえかも…梓の中に入ってもいい…?」

「…うん。いいよ…僕の中に、棗のおっきいの…頂戴…?」

潤んだ瞳で見つめてくる梓に、俺の興奮は高まっていく。

俺はヒクヒクと収縮して俺を待ち兼ねている梓の秘部に自分の固く張り詰めた自身を宛がうと、ゆっくりと腰を沈めていく。

「っ…は、ぁ…っ…梓…っ…好きだ…っ…梓…!」

「あぁっ…んぁっ、ひぁっ、あ、ぁっ…僕、も…っ…棗が好き…っ!」

何度も激しく突き上げる度、梓は悩ましい声で喘いだ。

接合部からは梓と俺の体液が混ざり合ったものが零れていて、俺はその光景に目が離せなくなった。

腰の動きを更に速めると、梓は俺の背中に爪を立てながら絶頂を迎えた。

その数秒後、俺も梓を抱き締めながら梓の中に欲望の証を注ぎ込んだ―――。




行為が終わった後も、俺は梓を抱き締める腕を解けなかった。

梓の額にそっとキスをすると、梓は擽ったそうに笑った。

梓を想えば想う程、俺の脳内は梓で埋め尽くされてしまう。

でも…これからは、梓がすぐ傍に居る。俺の手の届くところに、ずっと居る。

どうしてこんなに幸せなのに、切なくなってしまうんだろう。

これからは、梓への想いだけじゃなくて…梓そのものをいつも抱き締めていよう。

梓への想いを巡らせながら、俺はそっと梓に優しくキスをした。

明日も、明後日も、その次の日も…梓の傍で笑っていられますようにと願いながら――。
いつまでも君の傍で
(その笑顔は俺だけのものなんだよな?)
(棗、嫉妬してるの?・・・大丈夫だよ、僕には棗だけだから。)

end.


たまには両想いなナツアズを。
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