棗×昴 R18
38度6分と表示された体温計を手に、俺は大きな溜息を吐いていた。
「やっぱり何回計ったって、変わらないよな・・・これじゃあ、明日のロードワークはやめておいた方がいいか・・・。」
さっきから何度計っても、俺の体温は一向に下がる気配は無くて。
俺は憂鬱な気分を振り切るように、ベッドに寝転がり目をギュッと瞑った。
あー・・・だるい・・・頭痛え・・・気持ち悪い・・・。
体調管理には充分気をつけていたはずなのに・・・疲れてんのかな?俺・・・。
だんだん頭も働かなくなってきたし・・・今日はこのまま寝よう・・・。
そう思って、部屋の明かりを消そうと手を伸ばそうとした。
なのに、身体がちっとも思うように動いてくれなくて、俺は溜息を吐くと枕に顔を突っ伏した。
その時・・・チャイムが鳴った気がして、俺は重い身体を引きずるようにして玄関まで向かいドアを開けた。
「はい・・・?誰・・・?」
「・・・昴。具合、どうだ?」
・・・んん?・・・え・・・何で・・・何で、なつ兄がこんな所に・・・!?
「な、ななっ・・・なつ兄・・・!?」
久しぶりに聴く低めの優しい声に、俺の意識は一気に覚醒した。
「・・・何、そんなに驚いてるんだ?・・・昴、おまえ風邪引いたんだって?」
「・・・う、うん・・・まぁ・・・。なつ兄・・・もしかして、看病してくれるのか・・・?」
俺はなつ兄を部屋に上げると、どうしていいか分からずにベッドの端に腰を下ろした。
「なんだよ、信じられないって顔してるな。」
「え・・・!俺、そんな顔してた・・・?つーか・・・看病って、その・・・一晩中・・・?」
一晩中なつ兄と二人きりだなんて、逆に熱上がっちまいそうな気がするんだけど・・・。
「ああ、そのつもりだけど。昴は、俺じゃ不満か?」
「そんな事は無いけど・・・ゴホッ・・・ゴホッ・・・はぁ・・・。」
「大丈夫かよ・・・昴、薬は飲んだのか?」
背中を擦るなつ兄の手が優しくて、俺の身体は更に熱を帯びたような気がした。
俺・・・どうしちゃったんだ・・・?なつ兄に触れられて・・・ドキドキするなんて・・・。
「あ・・・まだ、だけど・・・。」
「じゃあ、ちょっと待ってろ。」
なつ兄はそう言うとテーブルに無造作に置いてあった風邪薬を手に取った。
そして、数秒黙り込んだ後、薬を口に放り込み水を口に流し込むと、口移しで飲ませてきた。
「んっ・・・ふ、・・・っ!・・・なつ兄・・・何考えてんだよっ・・・!?」
「・・・ちゃんと飲めたか?・・・昴の色っぽい姿見てたら、欲情しちまった。悪いが・・・今夜は寝かせられないかもしれない。」
なつ兄の考えている事が解らない。なつ兄は俺を看病しに来たんじゃないのか・・・?なのに・・・寝かせられないって・・・何・・・?
「欲情とか・・・寝かせられない、とか・・・!何、訳の分からない事、言ってるんだよ・・・!」
きっと、今の俺の顔は耳まで真っ赤になっている。
なつ兄に優しく髪を撫でられて、苦しくなっている俺が居る。
今頃気付いた・・・俺の中にあったなつ兄への"憧れ"が、いつしか"恋心"に変わっていた事に・・・。
「・・・昔はあんなに、俺に懐いてくれてたのにな・・・。いつから、こんなに昴が遠くに感じるようになったんだろうな・・・。」
なつ兄は苦しそうに呟くと俺に熱い視線を向けてきた。その瞳は濡れているように見えた。欲に濡れた・・・野獣のような、瞳だ。
「俺は・・・今でも、なつ兄の事は大好きだよ・・・?」
「・・・昴・・・そんな可愛い事、そんな泣きそうな瞳で言うなよ。襲いたくなるだろ・・・?」
「・・・構わない・・・から・・・俺の傍に居て・・・?なつ兄・・・。」
涙目でなつ兄を見上げると、なつ兄は俺をそっとベッドに押し倒してきた。
なつ兄のオレンジ色の髪が俺の頬を掠め、俺はギュッと目を瞑った。
なつ兄の顔をボーっと見つめている間に、服は全部脱がされ俺は生まれたままの姿になっていた。
「・・・昴。好きだ・・・。ずっと、昴とこうしたかった・・・昴に、触れたかった。」
鎖骨に唇を押し当てられると、身体がびくっと震え、下半身が熱くなってくるのを感じて俺は身を捩らせた。
視界がぐらぐらと揺れ動いている。薬を飲んだせいで、睡魔が襲ってきたのかもしれない。
俺はなつ兄の着ているシャツの裾を掴むと、掠れた声で呟いた。
「・・・なつ兄・・・早く、刺激くれないと・・・俺、寝ちゃう・・・かも・・・。」
「この状況で眠くなるって・・・どんだけ俺に心許してんだよ、おまえ・・・。まぁ・・・可愛いからいいけどな。」
乳首を撫でながら、深いキスをしてくるなつ兄に俺の身体は確実に反応を示していく。
「んぁっ・・・はぁ、ん・・・なつ兄、胸だけじゃ・・・足りない・・・もっと、強引に・・・して・・・?」
「・・・昴は・・・俺にどこ触って欲しい?なぁ・・・教えて?昴・・・。」
耳元で囁くように言われ、俺は思わず甘い声を上げてしまった。
「ぁ・・・!ん・・・っ・・・俺の、ここ・・・興奮して脈打ってるんだ・・・なつ兄が・・・何とかして・・・?」
俺はなつ兄の手を掴むと、ためらいがちに自分の熱く固くなっている中心に触れさせなつ兄を見つめた。
「・・・!昴・・・まだ乳首しか弄ってないのに、こんなに固くして・・・俺、優しくできなくなりそうだよ・・・昴が欲しくて・・・堪らない・・・。」
なつ兄の細くて長い指が、俺自身をいやらしく弄る。形を確かめるように握り込まれ、俺は頭が真っ白になりそうになった。
「・・・んぁ、や・・・んんっ・・・なつ、に・・・い・・・あっ・・・も、イキそ・・・んぁ、ぁ、あっ・・・っっっ!」
強弱を付けて扱かれると、俺は呆気なくなつ兄の手のひらに熱い精を迸らせ絶頂を迎えた。
「・・・いっぱい出したな。ジェル無いから、昴ので慣らすか・・・。」
そう言うとなつ兄は俺の脚を大きく開かせ、俺の秘部にそっと指を入れてきた。
「んっぁ・・・!なつ、兄・・・痛い・・・!ぅ・・・っ!」
「ごめんな・・・でも、慣らさないと・・・もっと辛いから・・・。」
なつ兄の中心に目をやると、そこは既に膨張しきっていて・・・俺は思わずなつ兄の首に腕を廻しなつ兄にしがみついた。
「・・・なつ、兄・・・男同士のセックスって・・・痛くない・・・?」
「・・・どうした?怖くなっちゃったか・・・?大丈夫、最初は痛いかもしれないけどすぐに良くなるから・・・昴は安心して俺に全て委ねて・・・。」
なつ兄は慣れてるのかな・・・誰と、いつ、どこでこういう事してるんだよ・・・なつ兄は・・・俺だけのものにはなってくれないの・・・?
俺は途端に不安になり、涙目でなつ兄を見上げた。なつ兄の瞳もまた・・・暗く沈んでいるように見えた。
「なぁ・・・なつ兄・・・なつ兄は、俺の事、本当はどう思ってるんだ・・・?」
「・・・俺は・・・昴を愛しているよ。昴の傍に居たい・・・もっと、もっと・・・昴と一緒に居たい。そう思ってる・・・。」
なつ兄の真剣な瞳から目が離せなくなる。そして、なつ兄の手が俺の腰を掴んだ。
「本当に・・・?ずっと・・・俺の傍に居てくれるの?なつ兄・・・。」
「・・・昴さえいいなら・・・俺は一生おまえの傍に居るよ。心から・・・昴の事だけを、愛してる・・・。」
俺の瞳から、大粒の涙が一粒溢れた。その滴を愛おしそうに舌で舐めると、なつ兄はゆっくりと俺の中に入ってきた。
「あっぁ・・・!はぁっ、ひぁっ・・・!なつ、に・・・!なつに、い・・・っ!好き・・・好きっ・・・!はぁ、んぁっ・・・!」
「昴・・・っ!は、ぁ・・・っ!昴の中・・・すげえ狭くて・・・気持ち良いよ・・・っ!」
奥まで何度も突き上げられ、俺は声を我慢する事も忘れ与えられる快感に身を委ねた。
そして、明け方まで愛し合った俺達は、ベッドの中で身体を寄せ合いながら眠りについた――。
次の日の朝、起きるとなつ兄の顔が目の前にあって、俺はホッと胸を撫で下ろした。
なつ兄・・・ずっと隣に居てくれたんだ・・・嬉しい・・・すげえ、嬉しいよ・・・。
なつ兄の髪をそっと撫でると、なつ兄はゆっくりと目を開けて俺を見つめた。
「・・・な、なつ兄・・・おはよ・・・。」
「・・・おはよ、昴。昨日は無理させちまってごめんな。でも・・・昴、すげえ可愛かったよ。」
朝っぱらから言う台詞じゃないと思いながらも、俺はなつ兄の胸に頬を寄せて小さな声で呟いた。
「俺があんな風になるのは・・・な、なつ兄の前だけなんだからな?」
「・・・そうか・・・昴は俺じゃなきゃ感じないのか・・・。いいな、それ。」
「そ、そう改めて言葉にすんなよ!すっげえ恥ずかしくなるだろ・・・!」
なつ兄の胸を軽く殴ると、なつ兄は満面の笑みを浮かべ俺を抱き締めてくれた。
たとえ、この幸せな時間が永遠じゃなくても・・・構わないと思った。
なつ兄が俺を愛してくれる限り、俺はこの手を・・・なつ兄が与えてくれるこの優しい愛を・・・ずっとずっと、離さないから・・・。
この愛を離さない
(君の愛が途絶えないように、今は繋いだこの手にそっと願いを込めるだけだよ)
end.
正直言うとこの作品は、棗が棗っぽくない事ばかり言っていて、書いている途中で何度も投げ出したくなった作品です(笑)でも昴の相手が固定化しそうになっていたので、書いてみようと思いました。皆さんに少しでも気に入って頂けたら嬉しいです。
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