侑介→昴×絵麻

※昴ED「ずっと隣に」+Extra「行動で示して」が元ネタ。
※昴と絵麻の台詞は全部変えてます。
※絵麻が出てきますが、あくまでも侑介→昴が基本になっています。
※侑介と昴はくっつきません。裏もありませんのでご注意を。






オレは・・・ずっと、すば兄の事が好きだった。

日向なんかよりも、オレの方がずっと一緒に居たんだ。

なのに・・・どうして、よりによって・・・日向なんだ?

日向が家族じゃなけりゃ、強引にでも奪い取っていただろう。

けど、オレには出来ない。日向はオレの家族だから。

それに、今のすば兄から、日向を奪う事なんて・・・オレには無理だ。

すば兄の悲しむ顔なんて、オレは見たくないから・・・。



「なぁ絵麻、今日って・・・そのっ・・・暇か?」

「昴さん。はい、空いてますよ。何かあるんですか?」

「そうか。それなら、久しぶりにデートでもしようか。」

なぁ、すば兄。オレ以外の奴に、そんな可愛い笑顔を見せないでくれよ・・・。

日向以外は瞳に入らないとでも言うのか・・・そんなに、日向がいいのか・・・。

日向は・・・たった一年、傍に居ただけじゃねぇかよ・・・!

「はい、是非!昴さんがどこに連れて行ってくれるのか、楽しみです!」

「ははっ。そうか。よし、じゃあ今日はおまえの行きたい所、どこでも連れてってやるよ。絵麻はどこに行きたい?」

やめてくれ。そんな優しい声で、日向の名前を呼ぶのは。

そんな事を口に出せる筈もなく、オレは無言でリビングから出て自分の部屋に閉じこもった。

夜になって、京兄から携帯に「夕食が出来ましたので、侑介も早く降りてきてください。」と電話が入ったけど、とても食事どころじゃなかったから断ってしまった。

それに・・・日向が作った料理なんて今食ったら、オレは・・・日向に八つ当たりしてしまいそうな気がして怖かったから・・・。


深夜0時――。

ピンポーン

突然チャイムが鳴り、オレの身体はびくっと震えた。

誰だよ・・・オレは今落ち込んでんだよ・・・。

渋々ベッドから出ると、乱暴に玄関のドアを開けた。

「はいはい!こんな時間に一体誰・・・って、すば兄!?」

「・・・・・・侑介。今・・・ちょっと、いいか?話したいんだ・・・お前と。」

いつになく真剣なすば兄の瞳を見て追い返す事なんて出来なくて、オレは無言ですば兄を自分の部屋に入れた。



「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

マズい・・・すば兄を部屋に入れたのはいいけど、すば兄、何も話さねえ!き、気まずい・・・!

気まずい沈黙を打ち破りたくて、オレは必死に言葉を探した。

「・・・・・・あ!あのさ、すば兄。今日・・・日向とどこ行ってたんだ?」

「・・・え?あぁ・・・知ってたのか。俺が今日、絵麻と出かけてたの。」

あ・・・日向以外目に入っていないって・・・分かっていたのに・・・。

どうして、こんなにもこの胸は痛むんだろう。

オレは涙が出そうになるのを必死で堪えながら、すば兄を見上げた。

「お、おう。まぁな・・・。それで?すば兄はここに、何しに来たんだ?」

「・・・・・・つば兄にさ、言われたんだよ。行ってやれって。・・・ちゃんと話した方がいいって。」

つば兄のヤロー・・・余計な事言いやがって・・・!

でも・・・丁度いい機会かもしれないし、勇気を出してみるのも良いかもな・・・。

そう思ったオレは、意を決してすば兄への想いを打ち明け始めた。

「そ、それなら!少しだけ・・・オレの話、聞いてくれるか・・・?」

「・・・ああ、いいよ。何でも話してくれ。俺に出来ることがあるなら、何だってしてやるから、元気・・・出してくれよ。」

「すば兄・・・っ・・・オレ・・・ずっと前から、すば兄の事が好きだったんだ。」

「っ!!侑介・・・おまえ・・・マジで言ってるのか・・・?」

「マジだよ・・・だからオレ・・・すば兄が日向に惹かれてるって気付いた時から・・・すげぇ苦しくて仕方なくて・・・今日も、すば兄が日向とデートしてるって思ったら、何にも手に付かなかった。」

全てを打ち明けると、すば兄は俯いたまま固まってしまった。やっぱり、困らせちまったのかな・・・?

「・・・・・・ごめんな、侑介。俺・・・お前に何もしてやれない。俺には・・・絵麻を裏切る事は出来ない・・・。」

すば兄の口から出た言葉は、あまりにも予想通りで・・・オレの瞳からは次から次へと温かい滴が溢れてくる。

「・・・・・・すば兄・・・オレの方こそ、いきなりこんな事言ってごめん・・・困らせて、ごめん・・・!」

「・・・侑介・・・・・・泣くな・・・俺は侑介に笑っていてほしい・・・勝手な事言ってると思うかもしれない。でも、これが俺の侑介への素直な気持ちなんだ・・・。」

すば兄の真っ直ぐな気持ちが痛い程に伝わってきて、オレの胸にどうしようもなく切ない気持ちが生まれた。

すば兄に抱きつくと、すば兄は何も言わずに抱き締め返してくれた。

「すば兄・・・最後に、一つだけ頼みがあるんだ。聞いてくれるか・・・?」

「・・・?なんだ?侑介・・・?」

「キス・・・・・・・・・してほしい。そしたら・・・すば兄の事を好きでいるの、やめるから・・・。」

「・・・っ・・・・・・そんなすぐに、忘れちゃうのか・・・?俺の事・・・。」

どうして・・・そんな事、言うんだよ・・・すば兄?

すば兄は・・・日向しか見てないんだろ?オレの事なんて・・・どうでもいい筈だろ・・・?

言えない言葉が心の奥に降り積もっていく。まるで、湿った雪のように重たくて・・・冷たいよ・・・すば兄・・・。

「・・・・・・忘れたくねぇよ。忘れたくねぇけど・・・オレの想いのせいで、すば兄が悲しい思いをするのだけは、オレ・・・嫌なんだよ。」

涙を浮かべながらすば兄を見つめると、すば兄の顔がゆっくりと近づいてきて・・・そっと唇が触れ合った。

すば兄らしい可愛らしい口付けに、思わず頬が緩んでしまう。すると、すば兄は安心したように笑ってオレの髪を撫でてきた。

「やっと・・・笑ってくれたな。いつも、悲しそうに俺を見ていたから気になっていたんだ。俺のせいだなんて・・・少し、驚いたよ。」

え・・・?すば兄が・・・オレの事を・・・見ていてくれたって・・・マジかよ・・・?

そんな事、今言われたら・・・オレ、諦めるどころか・・・もっと好きになっちまうじゃねぇかよ・・・!

「すば兄・・・バカじゃねぇの?そんな事言われたら、諦められなくなっちまうだろ!すば兄は・・・ずりぃよ・・・!」

オレはすば兄の胸を思いっきり叩いた。すば兄は何も言わずに辛そうな顔でオレを抱き締めると、背中を撫でてくれた。

なぁ、すば兄?すば兄の事・・・嫌いになりたいよ。すば兄の事なんてさっさと忘れて、楽になりたいよ・・・。

そう思うのに、どうしてオレの頭ん中は、こんなにもすば兄の事ばかりなんだろう・・・。

「・・・侑介。今日はもう遅いから・・・寝よう?今夜は・・・ずっと傍に居てやるから。」

そう言うと部屋の照明を消し、オレをベッドに横にさせ自ら添い寝してくるすば兄。

すば兄の冷たい優しさが、今はすごくオレの胸を締め付ける。

「すば兄・・・すば兄がオレにこんなに優しくしてくれんのって・・・やっぱ、オレが弟・・・だから・・・?」

「・・・それは違うよ。俺は、侑介が弟じゃなかったとしても、侑介には優しくしていたと思う。」

「オレ・・・すば兄を好きだった事、ずっと・・・忘れらねぇかも・・・。」

すば兄の胸にそっと頬を寄せると、オレは静かに目を閉じた。

すば兄の身体から微かに香るすば兄以外の香りに、気付かない振りをして・・・。

この恋が終わる前に
(この溢れる想いの全てを、君に伝えたかった。)

end.




昴を攻略し終えてすぐに書き上げた作品。EDの侑介があまりにも可愛かったので、書かずには居られませんでした。裏は書けなかったしマイナーなCPだと思うけど、思い出として載せさせてください。皆さんに少しでも気に入って頂ければ嬉しいです。


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