祈織×琉生


「もう秋、か・・・。」

この街にも少しずつ、秋の気配が近づいている。

街を歩く人たちの中にもちらほら秋服を身に纏っている人が居て、見ているだけで楽しい。

サンライズ・レジデンスの近くにある公園で僕は、ある人物を待っていた。

「僕の恋も・・・この落ち葉みたいに風に舞って消えてしまうのかな・・・。」

人通りも少なくなり、風が冷たくなってきた頃。

後ろからポンと肩を叩かれ、僕はゆっくりと振り返った。

「・・・来てくれたんだね、祈織くん・・・。」

「約束していたからね。・・・僕は、約束は守る主義なんだ。」

「・・・ふふ、そっか。・・・少し、話したい。ここ・・・座ってくれる?」

僕はベンチの端っこに座り直し、隣を指差す。

祈織くんは黙って隣に座り、僕が話し出すのを待っている。

・・・なんて言ったらいいんだろう?おかしいな・・・言葉が出てこない。

昨夜殆ど寝ずに考えたはずなのに、祈織くんの顔を見たら・・・全部忘れちゃったかも。

「・・・あの、ね。祈織くん・・・僕、ずっと・・・祈織くんのことが・・・好き、だったの・・・。」

「・・・琉生兄さんが・・・僕のことを?」

こくん、と頷くと祈織くんの目を見つめて想いを打ち明けた。

「・・・祈織くんのことは、今でもすごく好き。きっと・・・これからも、完全に忘れるなんて、できない・・・けど、」

どうしたの・・・僕。さよなら、しなきゃって・・・わかってるのに・・・どうしてこの胸は痛むんだろう?

どうして・・・涙が出てくるんだろう?祈織くんを困らせたくないのに・・・笑ってさよなら、したいのに・・・。

「・・・泣かないで、琉生兄さん。それと・・・僕にも話をさせて?」

「・・・?祈織くんも・・・僕に話があったの・・・?」

祈織くんの指が目尻に触れると、温かくて更に涙が出た。

「うん。・・・琉生兄さんの気持ち、すごく嬉しかった。僕も・・・琉生兄さんのこと、好きだよ。だから・・・」

え・・・?僕、耳がおかしくなったのかな・・・?今、祈織くんが僕のことを好きだって・・・そう、聴こえた・・・。

「忘れるなんて言わないで。さよならしようなんて、思わないで。さよならなんて言われたら、僕も泣いちゃうかもしれない。」

祈織くんの目を見つめると、少しだけ潤んでいるのが解って、僕は胸が張り裂けるように痛くなった。

「・・・忘れない。さよならもしないよ・・・傷つけて、ごめん・・・ごめんね、祈織くん・・・っ」

僕は人目も気にせず祈織くんの胸に飛び込んだ。そして・・・祈織くんは、僕にキスをくれた。

「んっ・・・ふ、ぁ・・・祈織くん・・・。」

「ん・・・琉生兄さん・・・好きだよ。」

啄ばむようなキスを何度もされて、僕はまた祈織くんに恋をした。

「外でキスなんて、僕、はじめて・・・。嬉しい・・・すごく幸せ。」

「そういえば、僕もないな・・・。琉生兄さんが幸せなら、僕も幸せだよ。」

祈織くんが僕だけに微笑みかけてくれている。夢じゃないかと思うくらい、幸せだよ・・・。

「・・・琉生兄さん。これからもずっと・・・好きで居てくれる?」

「・・・祈織くん・・・大丈夫。ずっと好きで居る。・・・祈織くんの手、ずっとずっと・・・離さない。」

祈織くんの右手を両手で包み込むように握ると、祈織くんは少し照れ臭そうに微笑んだ。

僕は、夕陽に染まった真っ赤な空に、そっと祈った。

この恋が、ずっとずっと続きますように、と―――。

さよならなんて言わないで
(さよならなんて言えないくらい幸せにしてあげるから。)

end.


久しぶりにR指定のない作品を書きました。たまにはまったりしてていいですね。CPは当サイト初の祈織×琉生でした。


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