棗×梓 R-18


想いはいつだって留まる事を知らなくて、始まりはいつも突然だったね。

棗の心に触れたくて、そっと棗の頬に手を伸ばしたけれど

その瞳には、もう別の誰かが映っているの?

もっと棗の事が知りたくて、堪らない。

ねえ、棗?

僕をこれ以上、一人にしないで。

そっと手を握っても、何にも伝わる事はないの?

問い掛けても何も始まらないのなら、いっそ夢の中へ沈んでしまおうか。

そんなネガティブな発想さえ浮かんでしまうのは、どうしてだろう?

棗が好き…それだけの想いで、二人で恋を始めようか。

今なら出来る…そんな様な気がしているから…――。




「棗…起きて。ねえ、棗…!」

ある日の深夜――。

僕は一人、棗に電話をかけていた。棗の声が聴きたくて、仕方なくて…それで。

けど、棗はどこか上の空で、僕の言葉に相槌しか打ってくれなくて。

寂しくなってしまった僕は、少し大きな声で棗の名前を呼んだ。

「棗!僕と話しているのに、集中してないでしょ。さっきから"うん"とか"ああ"とかばっかり!」

「…あっ…そうだな。…何の話だった?」

「僕…寂しいんだよ…?ただでさえ、夜は寂しいのに…。だから棗に電話したの…棗の声が聴きたかったから…。」

受話器の向こう側で、棗の吐息が聴こえた気がして思わず黙り込むと、棗は少し笑った。

「ふっ…そんなに寂しいなら、今からそっちに行こうか?それとも…俺の家に来るか?何なら、迎えに行くぞ?」

「えっ…本当?うん…来て。マンションの前で待っているね?うん…じゃあね。」

棗の優しさに触れた気がして、少しだけ頬が緩む。

急いで用意をしてマンションを出ると、そこには既に棗の車が止まっていて、中を覗くと棗と視線が重なり、少しだけ気恥ずかしくなってしまう。

「棗…早いね?待たせちゃったなら、ごめんね?」

「いいよ。梓の為ならいくらでも待つし…謝る必要はない。それより、早く乗って…夜は冷えるし、クーラー要らないよな?」

棗の優しい所も気配り上手な所も、どれもが愛しくて、僕の心は棗で埋め尽くされていく。

「それで…梓は俺にどうして欲しいんだ?寂しさを埋めることくらいしか、出来ないが…。」

「…キスして…抱きしめて…それだけでいいから…。」

「…本当に?それだけで満足できるのか…?…もっとして欲しい事、あるだろ?」

意地悪く問い掛けてくる棗に、僕は思わず赤面してしまう。

して欲しい事なんて、恥ずかしくて言えない事ばかりだから…。

「もう…棗は意地悪だね…?でも…そんな所に惹かれる…。」

車の助手席で、棗の運転している姿を見ながら、そんな事を話した。


―棗自宅―


「棗…好き…。だからもっと、エッチな事、僕にして…早く…っ…。」

「待てないのか?ったく…仕方ねえな…梓は淫乱だからな…。」

棗のベッドに向かい合って座り、キスをした。互いの舌に舌を絡めるだけで、腰が砕けるくらい気持ち良くて、いつまでもしていたいと思った。

深い口付けに酔い痴れる暇も無く、棗の手が僕の履いていたジーパンを下着ごと下げてくる。

露になった僕の姿を見て、棗の表情も徐々にエロくなっていくのが解る。

「やっ…そんなに、見ないでよ…感じちゃうっ…。」

「別に感じたっておかしくないだろ?もっとエロイ声聴かせろよ…ほら、早く…。」

棗の唇が僕自身を這い廻る感覚が堪らなくて、僕は夢中で腰を淫らに揺らし甘い声を上げた。

「は…っ…あ、ひっ…あっ…ん…っ…ね、棗…っ…好き…大好き…っ…!」

「俺も…っ…梓が大好きだ…だから、もう不安になる事はないから…っ…俺が、ずっと…オマエを守る…守ってみせるよ…っ…。」

「…!なつ、め…棗…そんな事、言われたら…僕…っ…嬉し過ぎて、苦しくなりそう…っ…あ、ぁっ…ひ、ぁっ…!」

自身を愛撫されながら、最奥を突き上げられ、頭の中が真っ白になりそうになった。

互いの熱を分け合うような行為に、二つの本能が交ざり合う様なそんな感覚を憶え、僕と棗は朝方までずっと抱き合っていた――。



棗の優しい所も、時折見せる切なげな表情も、全てが僕の生きる糧になっている。

ずっと夢見ていた棗との甘い生活も、これから現実になる。

そう思ったら、今まで胸の奥にあった寂しさも何処かへ行ってしまった。

「…梓。もし、不安になったら、いつでも俺を呼べよ。…間違っても、他の奴の所には行くなよ?」

「…ふふ、そんな事、当たり前だよ。だって、僕はもう…棗しか見えていないんだから…。」


恋のはじまり、夢の終わり

(二人の恋は、始まったばかりなんだから。)
end.


読者の皆様、お久し振りです。
いろいろ考えた結果、またぼちぼちとやって行くことにしました。
今回は棗梓を書きました。短くなってしまったけれど、意外と気に入っています。
一人でも多くの方に楽しんで頂けたら嬉しいです。


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