※学パロ

片想いですがチョコを渡して参りたく候う。


リンゴ


たまたま会った、そう、たまたま。
悲しくも相手は会ったことすら忘れているだろう。
なにせ、会ったといっても横を通りすぎただけなのだから。
学校で、別の教室へ移動する授業だったためaaaが教科書を持って教室に向かっている最中にことは起こった。
三年生が前からやってきたのだ。
街の不良を統べているだとかこの学校の裏会長だとか千人斬りをしただとか、そんな噂が絶えないイケメンルックスの、三年生のヒソカに。
aaaは顔を見ただけで心臓が飛び出してしまいそうになった。
前から歩いてくるヒソカにドキンドキンと胸を高鳴らせながら、aaaはゆっくりと歩いた。
そして、ヒソカの横を通りすぎた時、aaaはヒソカがこちらを見て笑っているのに気が付いた。
「…!」
顔が真っ赤になっているのに笑ったのか、それともほかの何かなのかaaaにはわからなかった。
しかし、ヒソカを好きになった事実は、確実に本当だった。
aaaは勢いよく振り向くが、ヒソカはさっきと変わらずどこかへと歩いている。
呆然と立ち尽くしたまま、ヒソカの背中を眺めていた。

そしてバレンタイン当日。
aaaはどこにいるか、いや学校にいるのかもわからないヒソカにチョコを渡そうとしていた。
「…こんな女子何人もいるんだろうなぁ」
そう言って、aaaは盛大な溜息を吐いた。
「ていうかどこにいるんだろ…」
放課後aaaは校内を縦横無尽に歩き回っていたが、どこにもあの目立つルックスはいない。
帰ったのか、と落胆していると、視界の端に水色の髪が揺れた。
ばっ、とそちらを振り向くとすでに消えていて、aaaはすぐさまその影を追いかけた。
「待ってください!」
長身のせいか自分よりもはるかに速いスピードで歩く男をaaaが呼び止めた。
「ん?」
振り向いた男は水色の髪を上げていてシャツの胸元が大きく開いていた。
そしてそれは、前に会ったことのあるヒソカだった。
「キミは…」
「あの、えっと、チョコもらってください!」
ヒソカの言葉を遮るように、aaaはチョコを差し出した。
「…あ、思い出した。キミはあの時のリンゴちゃんだ◆」
ヒソカはaaaに近付き、aaaの顔を見下ろした。
「!?、リンゴ…ちゃん?」
頭上にクエスチョンマークを浮かべるaaaが持っていたチョコを受け取るヒソカ。
「そ◆ だって、前に会った時、顔真っ赤だっただろう?」
に、と笑いながらヒソカが言った。
aaaの頬が紅潮する。
「これ、ボクにくれるんだ?、嬉しいなぁ。キミ、名前は?、リンゴちゃんじゃ呼びにくいよ」
ヒソカは手元のチョコケースを一瞬で消してみせた。
「!?」
aaaは驚いて、ヒソカの顔と手を何度も見る。
「おいしくいただくからね◆ ねぇ、名前…」
「あっ…はい、aaaです…けど」
「aaa、か。イイ名前だね◆」
ヒソカはぺろりと舌なめずりをした。
aaaは体の奥が疼いたような気がした。
「aaa。キミは…ボクのことが好きなのかな?」
「!、………はい」
「あぁ◆」
aaaは目を疑った。
ヒソカがなぜか恍惚な表情を浮かべていたからだ。
「いい声だね、aaaは◆」
「は、はあ?、…ありがとうございます」
「……付き合いたいかい?」
ヒソカの言葉に、aaaは顔を真っ赤にさせながら頷いた。
「くく…、やっぱりリンゴちゃんだ。いいよ、付き合おう」
「いっ…いいんですか…」
「もっとキミを知りたくなっちゃった◆」
優しく笑ったヒソカ。
aaaは心臓みたいに鼓動する体を必死に抑えながら立ち尽くしていた。
「…aaaも、ボクに教えてくれ◆」
ヒソカはもっとaaaに近付き、aaaを抱きしめると唇に軽いキスをした。

「ヒソカ先輩って見た目通り軟派なんですね…」
噂も本物だきっと、とaaaは思った。
「それは褒め言葉かい?」
喉を鳴らしてヒソカは笑った。
「な、軟派だからって捨てないでくださいね…!」
「ボク、本当に大切なものほど壊したくなる派なんだけど」
「えっ」
aaaは背筋が凍った。
「その表情もいいねぇ◆ 大丈夫、壊したくなくなるほど大切になればいいだけだから」
「ど…どこが大丈夫なんですか…」

一波乱ありそうです。

〇Happy Valentin's Day!



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -