「キャプテン……、ごめんなさい」
よく思ったら、おれはいつも泣き顔しか見たことなかった。


その笑顔は反則だから


「……で、壊したって?」
「ごめんなさい!」
頭を下げるaaa。
しかしキッドのイラつきはおさまらない。
事の発端はaaaとクルーが遊んでいた時に遡る。
雑用のaaaが仕事を終えてクルーと遊んでいた。
すると、血気盛んな海賊はうっかり船の一部を壊してしまったのだ。
「が、頑張って私が直しますから怒らないでください…」
今にも泣きそうな顔で謝るaaa。
「お前が直せると思ってんのか」
「…思ってません」
aaaの目尻から、耐え兼ねた涙が溢れ出した。
「もういい」
キッドが手を差し延べると、叩かれると思ったのかaaaが体を震わせた。
「っ!!」
ぽん、とaaaの頭に乗ったキッドの大きな手。
なでなで、とaaaの頭を撫でるキッド。
「泣くんじゃねぇよ」
「ごめんなさい…」
aaaは誘われるように、キッドの胸に倒れ込んだ。
ひっく、と嗚咽まじりに泣くaaa。
「……」
キッドは顔をしかめて、それからaaaをたくましい腕で抱きしめた。
「キャプテン!?」
「怒ってんのはてめぇに対してじゃねんだよ」
「…え?」
aaaが見上げると、キッドは耳まで真っ赤な顔をしていた。
その顔があまりにも"キャプテン"らしくなく、吹き出してしまった。
「aaa、テメェ…!!」
「ひっ、キャプテンごめんなさいー!」
キッドはaaaをぎゅうと力強く抱きしめ、息苦しさにaaaは魂が抜けそうになった。
「キッド、やりすぎだ」
キラーがぐったりしているaaaを見ながら言った。
「う…、aaaっ」
ぺちぺちと頬を叩くと、aaaはキッドの首に巻き付いた。
「キャプテンいじわるですー…」
「悪い。…お前に責任なすりつけた奴にムカついてたんだ」
ふぅ、と溜息を吐き、そっぽを向いてaaaの耳元で囁いた。
「………キャプテン、」
顔を赤く染めたaaaは、キッドの頬に小さくキスをした。
温和な空気にも関わらず、一人暗い空気を纏ったクルーがいたことは、誰も知らない。

「島が見えてきました、キャプテン」
一クルーがキッドに言った。
「そうか」
キッドは豪華なイスから立ち、分厚いコートを翻して島を見た。
「ふわぁ、街が綺麗ですねー」
いつの間にか、aaaが隣にいた。
「……行くか」
キッドが小さく呟いた。
「へ?」
「…もう言わね」
「いっ、行きます!行きたいです!」
aaaはキッドのコートを掴み、引っ張った。
「……」
キッドは無言でaaaの手を握った。
aaaよりも大きな手は、温かかった。

「キャプテン、これ可愛くないですか?」
久しぶりの島だからかそれとも久しぶりのデートだからか、はしゃぐaaaにキッドの頬も思わず緩む。
「似合いますか」
「あぁ」
aaaの持っていた髪飾りを奪い取り、店員に金を払った。
「もらう。ほら」
「キャプテン…」
髪飾りを髪につけてやるキッド。
「あ、あの、ありがとうございます」
髪飾りを触りながら、にこ、と笑うaaaにキッドは心臓が高鳴ってしまった。
(やっべぇ、あまりにも可愛すぎて勃っちまった…!)
慌てて顔を押さえてしゃがみ込むが、あまりに不自然な行動なためにaaaが「どうしたんですか」とコートを引っ張っている。
「aaa、おれのこと好きか?」
がし、とaaaの肩を掴み、紅潮した顔がバレないように凄い形相で尋ねた。
「えっと、大好き、だよ…?」
優しく笑うaaaに、キッドの足はすでに進んでいた。
aaaは腕を引っ張られながらキッドについていく。
「キャプテン、どこに…って、うわぁあそこホテルですよー!!」
「行くぞ」
引きずられながら、aaaはキッドにホテル、というよりラブホテルに近い雰囲気のホテルに入っていった。


タイトル:確かに恋だった より


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