このページは全てゲンマ夢です
※現代パロディ、忍者ともにあります。


1 【天智天皇】
秋の田の 仮庵の庵の 苫をあらみ わが衣手は 露に濡れつつ

「aaa」
ゲンマに呼ばれ振り向くと、そこには目の粗い苫のせいで露に濡れるゲンマの姿がある。
「ばか、こっちおいでよ」

手を差し延べると、ゲンマは静かにこちらに寄ってきた。
隣に座ったゲンマを抱きしめると、手が濡れた。
「冷たかったでしょ」
冷たくなった手を握ると、握り返してくれた。
ふと目の前が眩しく光った。
「夜明けだ……行くぞ」
ゲンマは重い腰を上げ、aaaに手を差し延べた。
「うん」
薄いマントを羽織って、私とゲンマは任務へと出発した。



2 【持統天皇】
春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香久山

蝉の鳴き声だ、ミンミンとうるさい。
縁側で横たわり、ゲンマはごろりと寝返りをうった。
「あちィ…ねむれねぇ」
ごち、と手の甲を額に当てた。
春もいつの間にか過ぎて夏になったらしい。
ふと目を開けると、目にはいっぱいの白銀の世界が広がった。
毎年、夏になると白い衣を干す天の香久山。
「きれいだな」
そしてまた蝉の鳴き声を聞きながら目を閉じた。



3 【柿本人麻呂】
あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む

山鳥のしだり尾は果てしなく長いと聞く。
「あーくそ」
布団にくるまったゲンマは悪態をついた。
今、aaaは任務中だ。しかも長期の。
一週間も前は支障はなかったのに、今は何故かとてもaaaに帰ってきて欲しいという気持ちでいっぱいだった。
あと二時間で夜明けだというのに、とても夜が長い気がする。
まるで山鳥のしだり尾のように、長く――。



4 【山部赤人】
田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ

「ゲンマさん!こっち来てみて下さい!」
aaaがゲンマを呼んだ。
「んー…」
ゲンマは気怠そうにaaaの後ろについていく。
はぁ、と吐いた溜息は白い。
「これ!すごいでしょう!」
手を広げたaaaの後ろの風景に思わず口を開けたままになった。
真っ白な富士山の上に降りそそぐ雪。
「ね!ね!きれいですよね!」
ぴょこぴょこと自分の周りを跳ね回るうさぎを捕らえた。
「ん、ゲンマさん」
aaaの顔は見ずに、ただ富士を眺めた。


5 【猿丸大夫】
奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき

奥山を歩く鹿がいた。
紅葉が次々と地面に這いつくばってゆく。
その紅葉を踏み分け、かさかさと音を立て、ゲンマは走っている。
風を感じ、紅葉の独特の香りを感じていると、ふと遠くから鹿の鳴き声が聞こえた。
そして沸き上がる感情。
隣に誰もいないからか、鹿の鳴き声のせいか、今年の秋は悲しく感じられる。



6 【中納言家持】
かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きをみれば 夜ぞふけにける

「う……」
ぶるりと身体が震えた。
天の川に羽を広げてかけた橋に霜がおりている。
「寒ィわけだ」
ゆっくりと周りを見渡し、そして身を丸めた。
夜はもう更け、星が空を駆け巡っている。



7 【安部仲麿】
天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも

任務で木の葉の里から出ている。
「おい、ゲンマ」
アオバに呼ばれ、ゲンマは振り返った。
そうすると、視界に空いっぱいの月が映し出された。
「……今日は月が綺麗だな」
アオバの呟きを無視して、ゲンマは仰いで月を見た。
春日の三笠山に出ていた月のように、明るく二人を照らす。



8 【喜撰法師】
わが庵は 都のたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と 人はいふなり

木の葉の里は平和バカと言われているが、しかしそこは忍者の楽園だと俺ァ思う。
もしそうでなくとも、旅館くらいはあるんだから、木の葉には一度でいいから来てみるといい。



9 【小野小町】
花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに

「はぁー…」
溜息をつくと幸せが逃げると人は言う。
しかしそんなことも言ってられない。
まるで今の自分の心のように降る春の長雨のせいで、せっかく咲いた花の美しさはあせてしまった。
そして私は茶髪の忍者を思うだけ。



10 【蝉丸】
これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関

スッと何人もの人が横を素通りしていく。
別れを告げた友人を背に、私は歩き出した。
すると、まるで世界を回る時間が長くなったかのように、私と前方にいる男以外の事物の動きが遅れたように思えた。
「……!」
魅入ってしまった。
整った顔立ちに、すらりと伸びた手足。
茶髪で長めの前髪がゆっくりと揺れている。
楊枝をくわえた唇が、とてつもなく色っぽかった。
「あ、」
す、とその男が横を通った瞬間、世界はいつもの時間を取り戻し、事物は動き出した。
私はそこで初めて"彼"と出逢った。
逢坂の関。




※地名はそのまま使っています。


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