このページは全てサンジ夢です
※現代パロディ、海賊もの共にあります。


91 【後京極摂政前太政大臣】
きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む

夜も更け頃。
「ふぁ…」
明日のご飯の支度も済んだので部屋に向かうサンジ。
恋人であるaaaはとうに眠ってしまっていて。
本当は二人で過ごしたいのだけれど、サンジが料理人である限り、クルーの為にご飯を作らなければならない。
相反する思いにただ空しく、波の音と虫の鳴き声が耳をくすぐった。


92 【二条院讃岐】
わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね かわくまもなし

「暗いわね、どうしたの」
「え、そう?」
サンジは笑ってみせると、ナミは溜息を吐き頭をぽんぽんと叩きながらみかんのなる木に向かって行った。
「暗い…か…」
サンジは溜息を吐いた。
船長のルフィと遊ぶ新しいクルーのaaa。
ふい、とすぐに視線を外し、海を見遣った。
ざあざあと船が波をかき分ける。
この海の底に沈むおれの心。
気持ちを伝えられずただ傷つき涙を流す女々しい自分がいる。
(バカみてぇ…)


93 【鎌倉右大臣】
世の中は 常にもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱手かなしも

島についた。
「今日は船番なの?」
ひょこ、と隣から顔を覗いたサンジに驚きつつも返事をした。
「う、うん…」
「そっか…おれもここにいるから、何かあったら言ってね」
サンジはaaaの手を取って、手の甲にキスをした。
紅潮する頬。
サンジはそれを見てぐしゃぐしゃと頭を撫でて微笑みながら男部屋へ去っていった。
「はぁー…キスされちゃった」
手の甲を眺めながら呟いた。
視界の端では小船を出す老人。
漁に出るのだろう。
aaaは口づけられた部分に唇を寄せた。
(もう少しだけ、平穏を…)


94 【参議雅経】
み吉野の 山の秋風 さ夜ふけて ふるさと寒く 衣うつなり

そろそろ冬島に着くころだそう。
「さんむ!!死ぬよこれ!」
見張り番のaaaとその隣に佇むは明日の支度をし終えたサンジ。
「あっためてあげるー!」
そう言ってサンジがaaaに抱き着こうとすると、aaaはサンジの腹に蹴りかかった。
「寄るなー!」
ぐい、と顔を近寄せるサンジにaaaは狼狽える。
「えーっ、aaaちゃん、遠慮せずに!」
「遠慮じゃないから!」
襲い掛かるサンジから逃れようと暴れるaaaから羽織っていた毛布がふわりと落ちた。
サンジがその毛布を掴み、aaaに掛け、その中にもそもそと入ってきた。
「ありが……って、入ってくるなよっ」
「だっておれも寒いから」
ぎゅっと抱きしめられてしまえば、おしまいだった。
aaaは抵抗できずサンジを受け入れるだけ。
「……もうっ、今日だけだから」
「うん」
ぎゅう、と握られた手が熱くなった気がした。


95 【前大僧正慈円】
おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣に 墨染の袖

地面に沈む鳥。
よくある光景だ。
ぼーっと突っ立ってそれを眺め、不意に思い付いたかのようにaaaはそれを掌に包み込んだ。
「aaaちゃん?」
「サンジ、これ」
「!、どうするの」
「お墓つくる」
てくてくと効果音が付きそうな歩き方で森の方に向かって行くaaa。
「おれも行くよ」
土を掘り返し、そこに鳥を寝かせ、土を元に戻した。
「また幸せに飛べるといいね」
「きっと、飛べるよ」
君の優しさで。


96 【入道前太政大臣】
花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり

「きれい」
「そうだね…」
ふわふわと空を流れる桜の花びらを窓から眺める二人。
桜の花びらは庭を散り敷き雪のように幻想的。
「……」
これを眺めたのは何年目?
降り積もるのは雪ではなく私の齢。


97 【権中納言定家】
来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ

『約束よ』
契りを交わしたのは何年も前。
「……覚えてるわけない、か」
はぁ、と溜息をついて手を進めた。
連絡さえ来ないのに、未だ約束を守る自分がいた。
そして、まだ彼女を思う自分がまだここに。
「手紙、出してみっかな」
ふと浮かべた笑み。
サンジは包丁を握った。


98 【従二位家隆】
風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける

「何あれ、すごい」
「あれは島の名物の…」
ロビンの説明に耳を傾けながら、眺める祭。
暑苦しいながらやはり夏の風物詩といったところか。
「ね、凄いねサンジくん」
に、と笑うとサンジの手が腰に回った。
「店出てるから行こうか」
「うっ、うん…」
サンジの服を引っ張り、aaaは俯いた。
「aaaちゃん…大好きだよ」
「へっ、こ、こんな場所で…!?」
慌てるaaaの手をそっと握った。
「おれだけを見て」
「!……うん」
その手をそっと握り返した。
風がひゅうと吹いた。


99 【後鳥羽院】
人もをし 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆゑに もの思ふ身は

「私は馬鹿な女なの」
「ふうん?」
サンジに入れてもらった紅茶に口をつけ、またテーブルに置いた。
「好きな人を好きと想ったり嫌いと思ったり。おかしいでしょ」
「それが人間じゃない?」
世の摂理だよ、と笑うサンジ。
「難しく考えずに気楽にいこうよ」
「……ウン、そうだね」
目の前にいる男、サンジに気持ちを伝えられずもやもやするaaa。
それを世の摂理なら、私は。
いつかは想いを伝えられるのかな。
「ありがとう…サンジ」
かたん、とイスから立ち上がりサンジに笑いかけた。
「いいえ、プリンセスのためなら」
サンジも微笑み返した。
その笑みに、また惚れた。





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