「少しでも私を愛してくれていたようなら、私が生きていることを教えてあげてください」
私は長い黒髪を持つヒソカの友人に言った。

後悔するほど愛してる

「…ヒソカ、大好き。愛してる」
「ボクもだよ、aaa」
aaaは五年くらい前に天空闘技場でヒソカに出会った。
そこからなぜかヒソカと一緒に行動をともにするようになり、体の関係をもつようになっていったのだけれど、aaaは、ヒソカとともに生きるには弱すぎた。
熟れすぎた果実というわけではない、青い果実というわけでもない。
うまく果実にならなかっただけだ。
そんな人間、ごろごろといる。
そしてヒソカは、そんな人間を掌で握り潰す容赦のないひとだ。
aaaの実力を見込んで一緒にいただろうから、青い果実でもない人間を、側には置かない。
つまり、いつかは殺されてしまう。
aaaは、そう確信した。

「…もういらないや」
「ふーん。…結構一緒にいたみたいなのに、殺しちゃうんだ?」
「青い果実以外興味ないからね◆」
ふ、と笑うヒソカの声が聞こえた。
aaaはヒソカのいるリビングから離れた寝室いたのだけれど、トイレに行ったときに二人の声が聞こえて、聞き耳をたててしまっていた。
「で、どうやって殺すの?」
何回か会ったことのある、ヒソカの友人とおぼしきひとの声。
名前はたしか、イルミだったはず。
「んー…それなんだけど、これ、前にクロロにもらってさ。使ってみようと思って」
「あ、それ俺使ったことある」
扉を隔てていてわからないけれど、音を聞く限り、水のちゃぷちゃぷという音が聞こえるから、きっと毒だ。
「これって苦しまずに死ねるやつじゃん。…ヒソカなりの優しさ?」
イルミがヒソカに問うた。
「へぇ、そうなの?」
ヒソカは知らなかったと呟く。
「ふーん…」
イルミはヒソカを疑っているふうだ。
「aaaが死んでいく様子はきっと綺麗なんだろうなぁ◆」
aaaは自分の名前が出て、びくっと体を震わせた。

いつか殺されてしまうと思っていたら、もうか。

「それじゃあね」
イルミがヒソカに挨拶をして部屋を出ていこうとしたので、aaaは慌てて家を出てイルミを追った。
「あれ、キミ」
「…あの、私、殺されるんでしょう?」
「聞いてたんだ?」
イルミの髪が風に舞った。
「はい。…あの、イルミさんはお金で動いてくれるんでしょう。私のお金、全部あげますから、私を生かしてくれませんか。…ヒソカには、内緒で」
aaaは、はぁっと溜息を吐いた。
「…うーん。でもヒソカを敵に回すのはなぁ」
「お願いします!!」
aaaはイルミに頭を下げた。
「えー…じゃあ、いいよ」
イルミは無表情で感情もなく言った。
「でも……もし、少しでも私を愛してくれていたようなら、私が生きていることを教えてあげてください」
イルミさん判定でいいですから、とaaaは頭を上げて言った。
「わかった。予定とか決まったら連絡するから…」
「あ、えっと」
連絡先を教えようにも書くものがなく、aaaはあたふたする。
「ヒソカのケータイ見るからいいよ」
イルミは手を振って闇に消えた。

aaaは外に出ていることが不自然でないように、店に寄って飲み物を買って帰った。
「aaa、どこに…」
「喉渇いたから」
「そう◆」
ヒソカはaaaの提げていた袋を持つと、aaaを抱きしめて甘いキスをした。

こんな愛のあるキスをするのに、彼は私を殺そうとしているなんて、信じたくなかった。

数日後、イルミから連絡があった。
「明日するみたいだよ。俺が毒をすり替えて仮死状態にするから」
イルミの説明を受け、aaaは覚悟を決めた。
決行の日、aaaはヒソカ、というよりイルミに毒を盛られ、死んだ。
そして、違う死体、イルミが事前に用意していた誰かわからない死体が棺桶に入れられ、土の中に埋められた。
aaaは仮死状態のままゾルディックの屋敷に連れていかれた。

「…ん」
「お、起きた」
aaaが目を覚ますと、目の前に銀髪の少年が顔を覗き込んでいた。
「わぁっ!!」
「うわっ、なんだよ!」
話を聞くと、少年はキルアと言うらしくイルミの弟で、仮死状態のaaaを介抱していたらしい。
「…ありがと」
「別にいーよ」
キルアの笑みが、少しだけヒソカに似ていると思った。

「……aaa」
墓に向かってヒソカが名前を呼んだ。
なぜヒソカが殺した女の墓を作るのか、イルミにはさっぱりわからなかった。
「…aaa」
ヒソカはまた名前を呼ぶと、小さく唸った。
「……」
後ろからヒソカの背中を見ているイルミは、どうしようか悩んだけれど、ヒソカの肩が震えているのを見て、口を開いた。
「aaa、生きてるよ」
「!」
ヒソカが勢いよく振り向いた。
「……どういうことだい」
「aaaに依頼されてね。ほんとは内緒なんだけど……ヒソカがaaaのことを愛してるようなら、生きてることを教えてあげろってさ。言わないほうがよかった?」
愛してなかったか、とイルミが聞くと、ヒソカは黒い殺気を放った。
イルミはそんなことどうでもよさそうに飄々としている。
「……aaaはどこだい?」
「俺の家」
ヒソカはそれを聞くと無言で歩き出した。
イルミはそれを見送ると、ケータイを取り出してaaaにかけた。
「aaa、ヒソカ、そっちに行ったよ」

イルミの連絡を受けて、aaaは不意に泣き出した。
キルアが慌てているのに、涙が止まらなかった。

「aaa」
普通、aaaの家からゾルディックの屋敷までに二日はかかるのに一日で現れた最愛のひと。
いつものいやらしい念の雰囲気や重い殺気もなしに、ヒソカは優しく微笑んだ。
「……ヒソカ!」
涙が零れ落ちるのも気にせず、aaaはヒソカに走り寄った。
もし殺されるなら、それでもいいという覚悟で。
「aaa◆」
しかしその覚悟は無駄だったようだ。
ヒソカはいつものように優しく抱きしめて、キスをした。
「…ヒソカ、私ね、愛してるよ」
「ボクも、愛してる◆」
照れて笑うヒソカが可愛くて、しょうがない。

イルミがキルアの目を塞いで溜息を吐いているのが視界に入り、ここがゾルディックの屋敷ということを思い出した。


〇Message
80000hitありがとうございます!
ヒソカで切甘でしたがどうだったでしょうか
話がよくわかんないかもですね、すいません
キリリクありがとうございます


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