旧短編 | ナノ


好きな人のことならなんでも知りたいと思って何が悪い。


だってなんでも知りたいじゃん!


毎日が宴のように騒がしいモビーディック号の食堂。
その中でも一際うるさいのが隣に座っているサッチだ。
しかしその明るさが、今のaaaを一時的に保っていると言える。
「なぁ、aaa!」
「そんなわけないだろ…!」
サッチの話は大半が下ネタだから相槌程度で同意してしまうと酷い目に合う。
夜の営みについてのアホな噂が立ったりする。
だから、聞いていなくとも同意ではなく、否定をすればその場の話、つまりはクソな下ネタを流せる、はず。
「ほんとかぁ?ほら、サッチ様に教えてみろ」
(……無理だった)
aaaは溜息を吐いて、サッチの隣で優雅とも言える格好、足を組んで度の高い酒を静かに飲むマルコを見た。
(…聞いてる?聞いてない?どっちだよ、顔に出せっ)
サッチは尚もうだうだと聞いてくるから頬に一発食らわせた。
サッチが机に突っ伏す。
「はぁー…っ」
赤くなった拳を見ながら、aaaは息を吐き出すと、マルコがこちらを見ていた。
「…ここは男の酒場だろい、そういうことを聞かれたくないんだったら来るな」
(う…っ!!)
マルコからの厳しい言葉に、aaaは固まる。
「……別にいいじゃねぇか、花がねぇと盛り上がんねぇしよぉ」
サッチが起き上がり、aaaの肩に腕を置く。
「……」
マルコは小さく溜息を吐いて、グラスを口につけた。
ごく、と酒を喉に通す。
「あ…と、マルコがそう言うなら、そうする。お、おやすみ」
「えっ、ちょっ、aaaちゃん?」
「…aaa、」
aaaはそそくさと食堂を後にした。
「てめぇのせいでaaaが行っちまったじゃねぇか!!どうすんだよ!てめぇとの下ネタ談義なんか面白くねっての!」
「aaaともしてねぇだろいっ」
マルコが叫んだ声が、aaaの耳に微かに届いた。

「あ、にゃんこ!」
「にゃーん」
クルーの誰かが乗せたのか、猫が尻尾を振りながらうろうろしている。
にゃーん、と声を真似て手招きすると猫が擦り寄ってきた。
背中を撫でると、毛が気持ちよかった。
「…嫌われちゃった」
「誰にだい?」
後ろから声がして、aaaが振り向くと、月の逆光で姿がよく見えなかった。
けれど、この声の主はよく知った人だ。
「…マルコ……」
「……誰に嫌われたんだよい」
マルコがaaaの側に寄ってくる。
aaaは「みゃあ」と鳴く猫を抱き抱え、後ずさる。
「マルコに…」
「はぁー……、悪かった」
マルコは溜息を吐きながらしゃがむと、aaaの髪をわしわしと撫でた。
「怒ったわけじゃなかったんだよい」
マルコが猫の喉を擽ると「ぐるぐる」と言った。
「ただ…」
「ただ?」
aaaがマルコの言葉を繰り返す。
「……」
マルコは言いづらそうに押し黙った。
「なに、」
「聞いてみたかっただけだよい」
「………………あー…………下ネタを!!」
aaaは少なからず動揺した。
大人なマルコに、こんな子供というか"男子"的な面があったことには驚きだ。
「……ガキだと思ってくれて構わねぇよい。怒って悪かった」
ぽんぽんと頭を撫でて、マルコは踵を返した。
「マルコっ!」
aaaはマルコの腕を掴んで、引き止める。
「わたしね、マルコがいいなら下ネタも話すよ…。サッチが一緒なのは嫌だけど」
「…当たり前だよい、おれだってサッチと話す気はねぇよい」
マルコが手を撫でてくる。
「今度…おれの部屋で…。覚悟してろよい」
「…うん」
こく、とaaaが頷くとマルコはaaaの頬にキスをした。
「まっ、マルコ?」
「…そういうことじゃないのかよい?」
「いやっ、そうなんだけど、やっぱ…恥ずかしい…っ」
マルコから視線を外し、猫を抱きしめる手を強めた。
「みゃーん」
猫が嫌がるので、仕方なく離すとどこかへ行った
「……可愛すぎるよい、今から話しに行くよい!」
「えっ…」
マルコはaaaを抱き抱え、部屋に連れていった。

「aaaの下ネタ、たっぷり聞かせてもらうよい」
「マルコってむっつりスケベだったんだね…、オッサンか!」




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