旧短編 | ナノ


※現代パロディ
名字使うよ!



「サンジ先輩。これ、やっておきました」
サンジの机には大量の紙の束が置かれた。
「ありがとう」
にこ、と笑いながらサンジがお礼を言うと、書類を渡した女はきゃーと言って頬を染めていた。


わたしだってできるもん


「……」
唇を尖んがらせる相手がパソコンとは、なんとも空しいものだ。
進まない仕事に溜息を吐きながら手を動かす。
誤字脱字が大量にあることに、aaaは気付かない。
「……aaaさん、終わった?」
「!!」
隣に、サンジが立っていた。
「えと……ごめんなさい、まだです」
「そっか、頑張って」
ぽん、と肩を叩いて、サンジは席に戻っていった。
aaaはそれを見た後に時計を見遣ると、時計の長針は「10」のところにあった。
(が…頑張らないと)
キーボードがかちゃかちゃと鳴る中、仕事をし終えた大半の人達が帰っていく。
焦って早く終わらせようとする度、誤字脱字が増えていく。
それを直していると、時計はもう「11」を指していた。
「さっ、サンジ先ぱ…!、あれ?」
仕事をし終えて最終確認のためサンジに見せようとしたが、サンジはデスクにはいなかった。
「ど…どこに」
aaaがうろうろとサンジを探しに行くと、廊下の奥、角を曲がったところから声がして、aaaは反射的に立ち止まった。
「あれ?まだいたんだ?」
「あっ、サンジ先輩もまだいたんですかー!一緒に飲みに行きませんか?」
昼間の女の声だ。
「残念、aaaさんがまだ終わってないから」
とサンジが言う。
「あー…、aaaさん遅いですもんねぇ、仕事するの。それに比べてわたしは――」
とべらべら喋る女の悪口に、aaaは堪えられなくなり仕事場に戻った。
なぜか体ががくがくと震える。
(サンジ、せんぱい…)
パソコンの画面をじっと見つめていると、ギィとドアが開いてサンジが戻ってきた。
「…終わった?」
「あ、は…はい…」
声が、裏返る。
書類をサンジのデスクに持っていくと、サンジはにっこりと笑って受け取った。
「…うん…うん」
書類を何度も見ながら、サンジは書類を整えた。
「いいよ、お疲れ様」
「……」
「…………わたしだって」
押し込めていた気持ちが、口から出ていく。
「私だって、やろうと思えばできます、できるもん…っ」
抑えられない感情。
「明日は…頑張るから、だから…っ!」
「…さっきの聞いてた?」
「っ!」
びく、とaaaの肩が揺れる。
「知ってるよ、aaaちゃんができる子だってことくらい。いつも側にいるおれが一番ね。それに、」
サンジは青のネクタイを緩め、かばんをデスクに置いた。
「…こうやって二人で一緒に仕事するの、好きだから」
サンジはaaaに缶コーヒーを差し出した。
デスクにはもうひとつ、缶コーヒー。
「aaaちゃんは早く仕事してくれるから、いつも多めに渡してるんだよ」
「それ、ひど…っ」
aaaがサンジから受け取った缶コーヒーを開けると、ぷしっと音がした。
「ほんと…、サンジ先輩って、サイテーですね」
サンジも缶コーヒーを開け、コーヒーを嚥下する。
「それ知ってるのはaaaちゃんだけだけどね」
サンジはaaaの頭を優しく撫でた。
「帰ろっか」
「…はい」
ごくっ、と缶コーヒーを飲み干して、サンジのカラの缶を受け取りごみ箱に入れると、かばんを手に取り、もう片方の手でサンジの手を握った。
「…私だってできるもんっ」
「だから知ってるって」




〇おまけ
「さっき飲みに行かないかって誘われてさぁ…」
(行ってくるとか言わないよね…?)
「飲みたくなっちゃった、飲みに行こっか」
「…うんっ!」


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