旧短編 | ナノ



島に着く一週間ほど前。
「aaa、好きだ」
「……私は、………ごめん」
好いてくれるゾロの気持ちを無下になんか出来ない。
それに、私も好きだ。
けど、この気持ちはきっといつかゾロの重荷になるから――。


詐欺


詐欺師として生きてきたaaaは海賊に襲われてボロボロのところを麦藁一味に拾われた。
それからは恩を返すため、一生懸命働いた。
といっても大したこともなく、島に着いて得意の詐欺で金をボロ儲けしてくることしか出来なかったけれど。
「おーい、これ……ってあれ?ロビンしかいないの?」
今日もいつものように金をゲットしてきたわけだ。
「みんな出掛けたわ」
船番のロビン以外には誰も船にはいなかった。
「ふーん……そう」
抱えた袋を女部屋に持っていく。
袋の中身は大量の金だ。
賭けポーカーで儲けた金。
(よいしょ…っ)
どさ、と袋を置いて女部屋を出ると床の軋む音がした。
(誰か…いる…?いるのはロビンだけのはず…。ロビンは甲板で本読んでるから……、侵入者!?)
壁に隠れて、こちらに近づいてくるのを待つ。
ギシ、ギシ、ギシ。
(今だ…っ)
ばっ、と曲がり角を曲がると、そこには固い壁が。
「う…っ!」
顔面を打ってしまった。
「うおっ!aaa…!?」
「あ、あれ…?ゾロ…?」
侵入者と思っていた人物はゾロで、しかも固い壁かと思っていたものはゾロの腹筋だったらしい。
「悪ィ、大丈夫か?」
ぶつけた鼻が赤くなっている、とゾロが鼻を触る。
(ひえーっ)
鼻と言わず顔全体が赤くなりそうだった。
「だっ、大丈夫!!」
にこ、とゾロの方を向いて笑うと、ゾロは風呂上がりだったのかタオルを肩にかけ、髪からはポタポタと水が滴っていた。
(なんかっ、かっこよすぎて眩しい…っ!)
「?、aaa?」
「あっ、いやなんでも!悪かった!それじゃっ」
ゾロの手をぺしぺしと叩いて、aaaはゾロの前から走り去った。
(やっぱ………気まずいよな…)

甲板に出て、aaaは出るかぎりの大声で叫んだ。
「ロビーン!騙しやがってー!!」
ロビンのもとへ寄ると、当のロビンは笑っている。
確信犯だ。
「なんのことかしら?」
ふふ、と笑うロビン。
「しらばっくれるなぁー!!みんないないって言ってたのに!ゾロいるじゃんか!」
「あら、そうだったの?忘れてたわ」
「嘘だー!」
ぎゃあぎゃあと言い合っていると、ゾロが現れた。
「何してんだ?」
「べっ、つに…………なんでもないっ」
ふい、と踵を返して、ゾロの横を通る。
「…なんだったんだ?」
女部屋に行ったaaaを指差し、ゾロはロビンを見る。
「…なんでもないそうよ?」
「…?」
ゾロは頭を傾げた。

(あークソっ、私の馬鹿!あれじゃあ避けてるとしか思われないじゃん!)
女部屋のベッドで頭を抱えるaaa。
(一週間前の、びっくりしたなぁ…。ゾロが私のこと好きって……そんな、そんな……凄い嬉しいに決まってるじゃない!!)
今度はベッドでゴロゴロと寝転がる。
「…おい、aaaいるか?」
コンコンと扉が叩かれた。
声の主はゾロだ。
「はっ、はい…!」
「……悪ィ、前のやつ取り消してくれねぇか?」
ゾロは扉を開けないまま喋る。
「前のやつって……告白の、こと?」
「あぁ……避けられんのは、…」
続きは、言わなかった。
「それって…私のこと、好きじゃないってこと……?」
「お前に避けられるくらいなら……んな気持ち、抑えてた方が、なくした方がマシだ…」
ゾロの低い声に、aaaは眉を八の字にした。
「私は…私は…っ」
ベッドから扉の前に移動して、ドアノブに手をかけた。
「避けてたわけじゃないよ、ただ…ただちょっと、恥ずかしくて……」
しかし扉は開かずに、扉に体をもたれる。

ゾロが好きだった。
船に乗った時から。
ゾロの告白で自分の心が浮き彫りになった。
私はゾロが好きだ、でも、ゾロの重荷になるのが怖かった。
だから私は、私の心を騙したんだ――。

「私は…ゾロのこと好きだ…、大好きだ………でも、怖かったんだ…ッ!!」
「aaa…っ!」
ガチャ、と扉が開いてaaaの体は扉の前にいたゾロの胸に倒れ込んだ。
「……ゾロ?」
不意の出来事に、aaaの顔は真っ赤だ。
「それ、ほんとか!?」
「えっと…、うん」
「…!」
ゾロはaaaを力いっぱい抱きしめた。
「スゲェ嬉しい…」
「ごめんね。……私、ゾロの重荷になるのが怖かったから…」
「ばかやろ…、んなことあるわけねぇだろが!」
ぎゅうぎゅうと抱きしめるゾロに、aaaは少しだけ涙を流した。

「aaaって詐欺師だよな…」
「うん」
「……もしかして…………からかってんのか?」
「…そんなに私が信じられないのかっ」
「確かめただけだっつの」
「ちゃんと大好きだもん!」
「……知ってる」


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