旧短編 | ナノ


※天使シリーズ



彼らが迎えられた直後に現れたそれは幻想的で、きっと誰もが感動する。


天使の梯子


雨の日だった。
「――あさん!お母さん!お父さん!」
病室の一角で叫ぶ少女。
白いベッドの上には医者の手の施しようもない傷を負った患者二人。
一方のベッドには少女が、もう一方には少年が側にいる。
「おいっ、aaaを置いてどっか行くんじゃねぇよ!!」
少年が叫ぶが、ベッドの患者の耳には届いていないと思われる。
何も反応を示さないからだ。
「クソ!aaaはどうなるんだよぉ!!」
ばんばん、とベッドを叩く少年。
不意に、頭を誰かに撫でられた。
「あ…」
重傷を負った患者が、少年を頭を撫で、そして笑っていた。
「aaaをよろしくな…」
そう笑って、患者は動かなくなった。
「ばっ、バカヤロー!」
「お母さん!」
少女の母親も、同時ともいえるタイミングで天に昇った。
「お母さぁあ!!」
わんわん泣く少女、aaa。
少年はaaaのもとに歩み寄り、強く肩を抱いた。

一時間後、泣き腫らしたaaaは新鮮な空気を吸うため少年と外に出た。
雨は上がり、かすかな太陽の光を見出だしていた。
「スゥ…ハー…」
深呼吸をするaaa。
少年であるサンジが空を見上げると、そこには幻想的な風景があった。
「な…だ…、これ…!」
「ん?……え?」
太陽の光が雲の切れ間から漏れ、光線の柱が放射状に地上へと降り注いでいる。
「これ…本で読んだことあるぞ…、"天使の梯子"だ!aaaのお母さんとお父さんの迎えだ!!」
あまりに無理矢理すぎる解釈であっても、子供を納得させるのには十分で、それさえも認めさせる光景だった。
「…っ!!」
感動からか、悲しさからかわからずも、aaaの瞳から涙が零れる。
ぼろぼろと、溢れてやまない。
「ふぅ、う…っ、うわぁああん!」
aaaは両親を亡くしたことを実感する。
「おか、さ…!おとうさ…!」
「aaaは…おれが守る」
「…うんっ」
二人の魂が、空へと迎えられる様を、サンジはaaaの手を握り、泣いているaaaの代わりにずっと見詰めていた。

「あれが15年前だなんて考えらんねーな」
「ほんと。あ、でもサンジは格好良くなったよね」
「aaaは泣き虫から美人になってる、クソ可愛いし」
サンジは鏡の前で、鏡の向こう側にいるaaaに向かって笑いかけた。
「…もう泣いたのはしょうがないじゃない……恥ずかしいからやめてよ…」
「ははっ、悪ィ悪ィ。aaaがクソ可愛いすぎていじめたくなっちまった」
aaaに歩み寄り、純白のドレスを触りながらサンジは目を細めた。
「クソ似合ってる」
化粧の施された顔に触ることなく、ほんの少し、触れるか触れないかほどの距離でキスをした。
「口紅、ついた?」
サンジの問いに、aaaはテーブルにあった白いハンカチをとってサンジの唇をハンカチで拭いてみせた。
「ついてた」
「ん、サンキュ」
白い手袋に包まれた手でサンジとaaaは手を握った。
「15年前もこうやってサンジが手を握っててくれたね」
「そうだったか?」
「うん…あれを見たときに、握っててくれた……、すっごく安心するの」
にっこりと笑うaaa。
「準備、終わりましたかー?」
がちゃりと扉が開き、スタッフが入ってきた。
「はい」
「それじゃあ、おれは先に行ってる」
「うん。あ、サンジ、愛してる」
ベールが下ろされたaaaは、背を向けたサンジに言う。
「…おれも、クソ愛してる」
サンジは少しだけ振り返り、手を振った。

リンドン。
大きな鐘の音。
二人は、大空の下、式を挙げた。


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