旧短編 | ナノ


※現代パロディ(学パロ)
サンジ:化学教師
aaa:生徒




初めて水酸化銅を見たとき、本当にきれいだと思った。
まるで南国の海の様に青くて――。
しかし、誰もが言う。
綺麗な花には棘がある、と。


綺麗なモノにはがある


放課後の化学室。
静かな風と、二人の息だけが聞こえる。
「あの、サンジ先生……好きです!」
両手を握り締め、精一杯の言葉をかける女生徒。
「………、ごめんね。君、生徒だし…」
その目の前で、悲しそうに断る白衣の化学教師、サンジ。
「そう、です…よね……」
口元を押さえ、ぽろぽろと涙を流し始めた女生徒に、しかしサンジは動揺しない。
「すみませ…、失礼します…っ!」
とうとう女生徒は化学室から出て行ってしまった。

パタパタと女生徒の走る音が廊下から聞こえる。
サンジはそれを聞きながら、化学室の後ろの席に隠れていたaaaに歩み寄った。
「盗み聞き?」
「違うよ……、出て行くタイミングがなかっただけ」
たまたまサンジに化学を教えてもらっていたaaa。
シャーペンが机から転げ落ち、イスから立ち上がり、しゃがみ込んでシャーペンを拾っていると、女生徒が化学室にやってきたのだ。
aaaは反射的に机の陰に隠れて息を潜め、女生徒はaaaに気付かず、話を進めてしまった――。
それだけのこと。

「気付かなかったあの子も悪いでしょ」
開けた窓から入る風に舞うカーテン。
「はは…、そうだね」
笑うサンジは窓の外を見た。
サッカー部がグラウンドで練習している。
「……」
サンジは無言で流しの縁に腰掛ける。
「はぁ…」
ポケットから煙草を取り出し、くわえる。
「サンジ先生、……ここ」
窓から見て向こう側で、aaaが首元をとんとん、と軽く叩いている。
「あぁ…これ。つけたの、aaaちゃんじゃん」
サンジの着るシャツから見え隠れするキスマーク。
「そうだけど……。それ、さっきの子、見たんじゃない?」
「違うよaaaちゃん……"見た"んじゃない…、"見せた"の」
サンジは笑ってはいるものの、黒いオーラを身に纏っている気がする。
「ひど…っ、なんで」
「そりゃあ、彼女いるのとか、誰とか、質問責めになるのを回避するため」
すはー、と煙草を指に挟んで、煙を口から吐く。
最近、よく見る光景。
「生徒の告白とか……面倒だし」
「じゃあ……私は、」
aaaは窓にいるサンジから視線を外して言う。
(遠回しに…別れてって言ってる?)
手を胸の前で弄る。
不安の証拠だ。
「aaaちゃん以外に決まってる」
「……ほんとかな」
「信用しないなら、それでいいよ」
サンジは携帯灰皿で煙草の火を揉み消した。
「信用…したいけど…」
「aaaちゃんがいるから…だよ」
サンジは立ち上がり、aaaに近寄る。
「じゃあ、サンジ先生……、言って?好きって」
aaaもサンジに近付き、ぎゅうと抱きしめる。
サンジはaaaの頭を撫でた。

「ガキなのに大人なaaaちゃんが好き」
性悪のサンジ。
生徒ではaaaだけが知っている秘密。

「いらないのついたけど」
きっ、とサンジを睨みつけるがヘラヘラと笑っている。
「本当のことだし」
ぐしゃぐしゃとaaaの髪に指を絡ませる。
「でも、それでも好きなんだろ?」
おれのこと、とサンジ。
「…うん」
サンジのシャツを握るaaa。
「トゲ……サンジ先生のトゲ、私に絡み付いて離れないの…」
サンジの首に両手を回し、背伸びをして精一杯顔を近づける。
「あぁ…、ちゃんと握っとけ。離れちまわねぇように、さ」
サンジはaaaの後頭部に手をあて、引き寄せた。
「…んっ!!」
aaaはサンジとキスをした。

きっと私は、それが毒だと知っていても飲み干してしまうんだろう。
その、青い水を――。




○注意
水酸化銅及び化学物質は毒ですので、誤飲には注意して下さい

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -