旧短編 | ナノ


※aaa:16、7歳



真っ白で静かな私だけの世界。
そこに現れたのは、深紅の髪と瞳を持った――。





「あ゛ーっ、さみ!」
秋のくせして、と悪態をつきながら悟浄は枯れ葉を踏み倒し山道を進む。
最初は散歩のつもりで歩いていた。
しかしあまりの寒さに帰ろうとしたが、情けないことに迷ってしまった。
「……家、とかねぇかな」
キョロキョロと周りを見渡しながら歩くと、山小屋よりは贅沢な家を見つけた。
しかしその建物からは、妖気が匂う。

「……」
悟浄は眉をひそめながら、家の扉を開けると、目の前にはキッチンとダイニング。
妖気はあっても人影は見当たらない。
「……あっちか?」
奥に扉があった。
ドアノブに手を掛け、ゆっくりと開ける。
そこにはベッドと、布団を被って寝ている少女。
「……」
その少女の顔を確認すると、悟浄はそっとベッドに座り、少女の耳元に口を寄せた。

「おはよう、お姫サマ」

「!?」
勢いよく飛び起きた少女に悟浄は微笑みを浮かべた。
「誰!」
布団から這い出し、枕元にあったと思われる刃物を取り出した。
「おー怖い。大丈夫、悪いもんじゃないから」
震えながら刃物を握る手に悟浄は己の手を添え、そっと下げさせた。
「ほんと……?」
「大丈夫」
悟浄は少女の頭を撫でると、強張っていた少女の顔が綻んだ。

「なんで……その、」
「沙 悟浄。悟浄って呼んでね」
ハートを送りながら言うと、少女は微笑みながらキッチンに向かった。
「私はaaa。悟浄はなんでこんなところに?」
aaaについて行きながら、本当のことを答えた。
「いやー、散歩してたら迷っちゃって。寒くってここに来ちゃった」
驚かせてごめんね、と笑いながら謝ると、aaaは「ううん」と言った。
「ん、でもさ、俺、妖怪だったりするんだよねー」
キッチンで湯を沸かすaaaの真後ろに立って、悟浄はそう言った。
aaaに近付くと感じる、妖気。
「ふうん……だから妖気がしてたんだ」
aaaはそう言いながら、キッチンの戸棚を探り、調味料か何かをパラパラと湯の入った鍋へと入れた。
「aaaチャンは、妖怪なの?」
「………、うん」
少し俯きながら、aaaは返事をした。
髪をかきあげ、掛けられた耳にはカフスがあった。
「これ…」
悟浄はカフスを触った。
「随分前に、お坊さんにもらったの」
己の耳を触る悟浄の手を握るaaa。
「その"お坊さん"は?」
何も考えないままに、悟浄はaaaの手をそっと握り返した。
己よりも少し小さな、aaaの手。
「死んじゃった。妖怪に殺されたの」
「悪ィ」
ぱ、と握っていたaaaの手を離してしまった悟浄。
「ううん。ずっと前のことだから……」
ふるふる、と頭を横に振り、aaaは沸騰したスープをカップに注いだ。
「どうぞ。外は寒かったでしょ?」
にっこりと微笑んだaaaからカップを受け取った。
aaaの笑顔は、何をも映してはいなかった。

二人は向かい合うように、ダイニングテーブルに座っている。
「aaaは妖怪なんだろ?異変とかは、ないの?」
カップに口をつけ、ふぅーとスープを冷ます。
「……ない、です。まだ子供だからか、それとも他の何かなのか、私には、分からないけれど」
椅子に腰を掛け、ぶらぶらと足をばたつかせながら、aaaは言った。
「へぇ……他のやつらが襲ってきたりは、しない?」
「妖怪は、私も妖怪だから大丈夫だけど……人間の時は、凄く、怖い」
妖怪より、と両腕で肩を抱いたaaa。
「でも、本当に怖いのは、妖怪でも人間でもなくって……、」
悟浄と目を合わせたaaaは咄嗟に口を噤んだ。
「?」
aaaの瞳が、揺らいでいた。

aaaは10年前に"お坊さん"に遭ったそうだ。
幼かったaaaは人間と生きる術をその"お坊さん"に教わった。
その時に妖力制御装置を貰ったという。
しかしその一年後、aaaの目の前で"お坊さん"は妖怪に殺された。
必死に逃げたaaaは妖怪に殺されずに済んだ。
しかし、aaaは殺されることよりも恐ろしく辛い試練が待っていた。
"一人で生きる"という試練。
町の人間に妖怪とバレると殺されかねないのでなるべく人間からは離れて暮らした。
だから一人で生きてきたのだと、そうaaaは語った。

「人間に育てられた妖怪なの……」
にっこりと笑うaaa。
しかし、淋しさが残っている表情だった。
「人間みたいに馬鹿で甘くって、弱いの」
人間みたいに、とまたそう言った後、唇を噛んでいた。
その唇に指を這わせると、びくっと体を震わせた。
「……悪ィことじゃねぇ」
悟浄がaaaの頬を撫でると、ぽろりと涙を流した。
「うわっ!大丈夫か!?」
悟浄は慌ててaaaの涙を拭った。
「ん……悟浄は優しいね」
「はは……ンなことねぇけど、女には優しいのよ、俺!」
ばちん、と悟浄がウィンクをするとaaaはくすくすと笑った。

「じゃあ俺、もう帰るな」
ぼすっ、という音を立て、aaaの頭を撫でた。
「あ…、うん」
椅子から立ち上がり、悟浄は扉を開けた。
ぴゅう、と吹く冷たい風。
おお、寒ィと悟浄は声を上げながら一歩を踏み出すと、引っ張られている感覚がした。
「……aaa?」
服の裾を掴んでいたのは、aaaの細い指だった。
「あ、う……ごめんなさい、ばいばい」
「……aaa。また近いうちに来る、絶対。約束な!」
そう言って、悟浄はaaaの頭を抱え込む様に抱きしめた。
「……嘘じゃない?」
悟浄の胸で呟いたaaaの髪を梳きながら、「本当」と囁いた。
「ありがとう」
aaaは悟浄の長くて赤い髪を触りながら微笑んだ。
そして悟浄は山を下りた。

二日後。
「おーい。足が長くてカッコイイ悟浄サンが来てあげましたよー」
家の扉の前に立ち、そう叫んだ。
すると、突然扉が開き、何かに飛び掛かられた。
「うお!?」
「悟浄!!」
悟浄に抱き着いたのはaaaだった。
悟浄はaaaを抱き上げ、aaaの家に入り扉を閉めた。
「どうした?」
「うぅー…、ごじょう、ごじょー…!」
ぎゅううと悟浄を抱きしめる力は強まるばかりで、名前を呼ぶ以外のことをしようとはしない。
「aaa…」
背中を摩ると、だんだん腕の力が弱まっていった。
「悟浄……」
「ン?」
ごちん、と額を合わせた。
「会いたかった……」
「そっか」
ダイニングを通り抜けaaaの部屋に入り、ベッドに腰掛けた。
ベッドにはぬいぐるみが2、3個あった。
「なぁ……aaa、」
aaaの顔色を窺いながら、悟浄は口を開いた。
「悟浄っ」
しかし悟浄の言葉を遮らんと、aaaが悟浄を呼んだ。
「?」
「なんで、何で来てくれたの……?」
「何でって……aaaチャンが可愛い顔して"来て"って言ったから、かな」
悟浄がそう言うと、aaaはぼっ、と顔を赤くさせた。
「わっ、私はそんなのこと…ッ!」
「約束だったしぃー」
「や……約束なんて、破れるよ。簡単に…」
目を反らしながらaaaは言う。
「俺は約束は破らないの!」
ぎゅ、とaaaを抱きしめると、aaaは体を悟浄に預けた。
「悟浄…ありがとう……」
ひくっ、と喉を鳴らしながら、aaaは泣いている。
「aaa、好きだ」
一目惚れよん、と言いながら胸に埋めたaaaの髪にキスをした。
「悟浄…っ!」
ばっ、と悟浄の顔を確認するaaa。
悟浄は微笑んでいた。
「ずっとこんなカッコだと襲っちゃいそー」
ははは、と笑いながら悟浄はaaaの体を離そうとした。
「……い、いよ……」
「うそッ!?」
大人をからかうんじゃありませんっ、と怒る悟浄を尻目に、aaaは悟浄の服の胸の辺りを握り、悟浄の深紅の瞳を見つめながらaaaははっきりと言った。
「抱いて、悟浄。私のことが本当に好きなら」
「では早速ー」
据え膳食わぬはナントカの恥ー、などと呟きながら悟浄はaaaをベッドへと押し倒した。

「あっ」
「イイ声」
悟浄の長く赤い髪がaaaの胸に垂れ掛かる。
「aaaは処女なの?」
狭い中を二本の指で解しながら、悟浄が問うと、シーツに顔を埋めるaaaは微かに頷いた。
「きゃーっ、嬉しい!悟浄がんばっちゃうー」
「えっ…、優しくして、よ…?」
不安そうな顔を向けたaaaに、心配をかけないよう飛び切りな笑顔をして「気持ち良くしてあげるから」と言った。
「挿れるよ」
悟浄は性器を入口に押し付けた。
「んんっ、悟…じょう……!!」
水音を立てながら入り込む悟浄の性器がやっと最後まで入りきった頃には、内臓が押し上げられるような感覚と痛みがaaaを襲った。
入口からは微かに鮮血が流れ出ていた。
「あっ、うぅー…!」
「痛い?」
悟浄は胸の突起を指で弄り、そして舌を這わせると中がきゅう、と締まった。
「感じては、いるんだな」
胸を弄ったまま、悟浄はaaaの腰を掴みゆっくりと動かし始めた。
「あっあ……ひ、んっ」
「aaa、こっち向いて」
痛みと恐怖で目を閉じていたaaaは目を開けると、目の前には汗を少しかいて綺麗な髪を乱し深紅の瞳は真っ直ぐに口端を上げる悟浄の姿。
「悟浄っ、ごじょう……あぁっあ!!」
色っぽい悟浄と目を合わせると、aaaの体はびくびくと震えた。
「っう…」
悟浄は咄嗟に中から性器を取り出し、aaaの腹で達した。

「悟浄……好き」
aaaは悟浄の頬の傷を擽った。
「俺は愛してる」
ぎゅ、と布団の中で抱きしめ合うと、aaaは瞼を閉じて寝息を立てていた。
「可愛い」
呟きながら、悟浄もゆっくりと眠りについた。


真っ白な世界。
広くて静かで寂しい場所。
誰もいなかった私だけの世界に、その人は現れた。
名前は悟浄。
深紅の髪と瞳を持った、私と同じ妖怪。
手を差し延べて、抱きしめ合って、悟浄は私に愛をくれた。
これからは、真っ白な世界に二人。
もう、寂しくない。




○おまけ
明るい日差し。
「あ、…ご、じょう?」
「ん?どした」
aaaの髪を梳きながら、悟浄はaaaの顔を覗いた。
「……大好き!!」
aaaはぎゅう、と悟浄を抱きしめると、大きな体がaaaを包んだ。
(よかった。夢じゃない)


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