旧短編 | ナノ


World of nightmare(ワールド オブ ナイトメア)





aaaはそこにあった、汁まみれの果物ナイフを首に切り付けた。
流れていく血の感覚がわかる。
aaaは意識が遠くなるのを感じた。

「あ…!、aaaちゃん!!」
叫んだサンジは慌ててaaaに駆け寄った。
手に持っていたデザートたちは床に散らばった。
「なんで、aaaちゃん…、aaaちゃん!」
aaaの首から出る血を止めながら、サンジはチョッパーを呼んだ。
「チョッパー!!早く来てくれぇ!!」
力の限り、叫んだ。

診療室の白いベッドで小さくうずくまるaaa。
切られた首にはガーゼの上に包帯が巻かれている。
しかし包帯は赤い。
「なんでaaaはこんなことしてるのよ!」
ナミが怒鳴り散らす。
「知るかよ!、そんなの……、おい、グル眉!テメェはどうなんだよ!」
「知らねぇよ…」
サンジはベッドの近くのイスに座り、頭を抱え込む。
「おい、サンジ…、ふさぎ込むなよ!aaaが起きた時に笑ってねぇとaaaが辛いだろ!」
ウソップがバシーンとサンジの肩を叩いた。
サンジは三十秒ほど無言になり、その後「…そうだな」と呟いた。
「aaaが起きたらすぐに言えよ!すぐに!」
ルフィはそう言い、皆を連れて部屋を出ていった。
「あぁ…」
サンジ一人を置いて。

「aaaちゃん…」
何も出来ない己が悔しい。
サンジはベッドで眠るaaaの髪を、そっと撫でた。
「ん…」
aaaが小さく身じろぎをした。
「aaaちゃん!」
「あ、ん……サンジ?」
目覚めたaaaは、目を見開いた。
「死んで…ない?」
aaaは首を触った。
包帯が巻かれた傷。
「…ッ!」
aaaは一瞬にして、悔しそうな顔をした。
「aaaちゃん!」
サンジの声で、aaaは我に返る。
「生きててよかった…!」
「サンジく…」
サンジがaaaを抱きしめる。
aaaは顔を歪めた。
「aaaちゃん、aaaちゃん…」
生きていることを確かめるように、サンジは何度もaaaを呼ぶ。
その寂しそうなサンジの声に、aaaは泣きそうになった。
「サンジくん…」
唇を噛み締め、サンジにバレないようにした。

サンジの心が落ち着いた頃。
「aaaちゃん…、なんであんなことしたの」
サンジはaaaの包帯の巻かれた首を見ながら喋る。
「わ…たし、…は…」
声が震える。
「ここに、いちゃいけないって、思って…」
唇を噛むが、泣き声が漏れる。
涙が、溢れてしまう。
「…なんで?」
先程のようなサンジとは裏腹に、厳しい表情をする。
「だって、わたし…」
aaaは涙を拭った。

aaaは昔、ルフィとは違う海賊と一緒にいた。
幼かったが、格闘を極めた彼女は一目置かれていた。
しかし船長に逆らうことは出来ず、彼女は海賊として悪の限りを尽くした。
しかし格上の海賊に襲われ、海賊団の危機に死を覚悟した彼女は、ルフィ一味に、詳しくはサンジに助けられ、一味に加わったのである。

「わたし、…私…、いっぱい悪いことしたのに…、みんな、笑っ、て…くれて…」
aaaがひくっ、と喉を鳴らすと、サンジは背中を撫でた。
「海賊なら誰でも悪いこと、するよ…」
aaaの涙を拭うサンジ。
「私は…っ、わたしは…!、死んじゃえばいいんだって…!!」
ベッドのシーツを握り締め、aaaは涙を零した。
サンジはaaaの言葉に、イスを鳴らして立ち上がり、aaaの肩を掴んだ。
「aaaちゃん…!、そんなこと、思ってても言っちゃいけねぇ!」
サンジの覇気に、aaaは戸惑う。
「aaaちゃん、生きてくれ…、おれのために生きてくれ…!!」
泣きそうな顔をするサンジに、aaaも顔を歪める。
「だって、私…、人も、殺したこと…あるのに!、だめだよ……私、生きて、笑ってちゃ…、だめ…!」
「違ぇよ…、死んだ人の分も生きて、笑って、楽しまねぇと…、だめなんだよ!」
サンジはaaaを抱きしめた。
「aaaちゃん、クソ愛してるから…、おれのために、生きてくれ…!」
サンジの瞳から涙が溢れていた。
「…サンジくんっ」
aaaはサンジの首に両腕を回し、サンジの頭を包み込むようにして抱きしめた。

よく、生きていることが恐ろしくなる。
自分を生かす世界さえも、恐怖の存在となる。
けれど、彼が「生きてくれ」と言うのなら、私は。
死さえ畏れず、この世界を生きよう。
彼と、サンジと、一緒に。





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -