旧短編 | ナノ


※現代andファンタジーパロディ



窓の近くにいたのは男性。
緑の髪に赤い瞳を持った――。


キュバス


「え…っ!?」
朝、目が覚め、起きてみると同じ布団の中に男がいた。
見たことあるような、ないような。
「ちょっと……あんた誰よ!」
ぺちぺちと頬を叩いて男を起こす。
「……あ?」
重い瞼を開いた男が頬を叩いていた手を握った。
「……aaa、なんだ」
「はっ!?なんであんたが私の名前を……!!あんた誰!?」
「おれは…ゾロだ」
ば、と握られた手を振り、ゾロの手から解放する。
「あ?、……覚えてねぇのか?」
ゾロはaaaの頬を抓った。
「ちょっと!」
「おもしれぇ顔。…てめぇがおれを呼んだんだろ?だから来てやったんだ」
ぷ、と笑いながらゾロが話す。
整った顔のゾロが笑うと、aaaは頬を赤らめた。
「呼んで…ないっ!!」
断固として否定するaaa。
「いいや、呼んでた。夜に、"愛されたい"って言っただろ」
ゾロのその言葉に、aaaは夜何があったかを思い出そうとした。

昨日の夜。
aaaは彼氏に別れを告げられた。
一方的な別れに、aaaは泣き崩れた。
生憎、慰めてくれる友人はたまたま旅行に行って、おらず、一人ベッドで枕を濡らしていた。
両親は幼い頃に他界。
親戚もあまり仲は良くなかった。
大学に行くようになって出来た恋人に、少なからず深い愛情を求めていた。
まるで家族を愛するような想い。
しかしそれは恋人には重かった。
aaaは布団に潜り込み、泣くと同時に、「誰でもいいから愛されたい」と願っていた。
ふと感じた寒気。
風の音。
窓が開いているようだ。
aaaが布団から這い出て、窓を見ると、そこには緑の髪と赤い瞳を持った男が立っていた。
そして、「おれを呼んだだろ。愛してやるよ、死ぬまで」と言った。
aaaは抵抗もせず、男に体を預けた。

「なんか思い出したか?」
ゾロの赤い瞳がaaaを見つめる。
「あんたは……なんで、私のところに来たの」
ゾロを睨み付けると、笑った。
「おれは悪魔。てめぇみたいな心に隙間がある奴の場所に現れる。そして、愛を捧げる」
「そんな………、都合の良いことなんて、現実にはない」
aaaがゾロにそう言い切ると、ゾロは喉を鳴らし笑った。
ゾロという男は笑ってばかりだ。
「ああ、そうだ。"命の代わりに"、を忘れていたぜ」
ベッドの端にいたaaaの唇にキスをするゾロ。
「っ!」
「おれに、愛されてみねぇか?死ぬのが怖くなかったらな」
ゾロの手がaaaの頬に添えられる。
(誰にも愛されていないのなら、悪魔でもいいから…愛されていたい…)
aaaはごくりと唾液を飲み込んだ。
「ねぇ、ゾロ。私を愛してよ」
太い男の指に、aaaは手を重ねた。
「いいぜ」
ゾロはまた笑った。

それから、悪魔ゾロは恋人のように振る舞った。
しかし夜の行為は激しかった。
それがaaaの生気を吸い取る行為だと知ったのは、結構後のことだった。
「ゾロ…」
ソファに寝転がるゾロに問う。
「あん?」
「私が死んだら、またどこかに、私みたいな人のところに行くの?」
切なげに笑うaaaを視界の隅に捉えたゾロは、ソファの横に立っていたaaaを引き寄せた。
「さぁな。てめぇが死んでからじゃねぇとわかんねぇよ…」
赤い瞳に映ったaaa。
「ねぇ、ゾロ……私、わたし……ゾロに愛されたいよ…」
何故か溢れてくる涙。
(よく思ったら、私は死んだら用済みで……、私は死んでも誰にも愛されないままなんだ……)
そう思うと、の涙だった。
「ゾロ…抱いて…」
ゾロに抱き着くと、腰に回された筋肉質の腕。

揺さ振られる体。
止まらない律動。
「あっ…あぁっ!」
この行為で一時でもゾロの心を手に入れられるなら、と赤い瞳に映る己を見て思う。
「ゾロ…好きだよぉ…っ…」
不意に口をついた言葉。
「aaa…っ」
「あっ、あ…!!」
快楽の波がaaaをさらって行く。
いやらしい音と空気が部屋を包んでいる。
「aaaっ…う、く…、あ…っ」
「ゾロ…っ!」
aaaがゾロにしがみつくと、ゾロも抱きしめ返した。

「aaa、おれと離れるのが怖ぇか?」
「うん」
即答だった。
「……へぇ。じゃあてめぇも悪魔になれ。おれと同じ"夢魔"だったら、ずっと愛してやれる」
「ほんと?」
aaaはゾロの瞳をじっと見ていると、視線を外された。
そして、照れると呟いていた。
「あぁ」
「どうすればなれるの?」
「ここを噛め」
とんとん、と動脈あたりを指す。
「死なない?」
不安になるaaaに、ゾロは笑ってみせる。
「悪魔は強ぇ。そんなんで死んでたまるか」
「………うん。するね?」
aaaはゾロに跨がり、ゾロの首にそっと噛み付く。
そして、ぐっ、と力を込めると、口いっぱいに広がったゾロの体液。
「……」
己では何があったか理解出来ず、戸惑う。
「aaa、もう良いぜ。はは……目ぇ赤い」
充血した、みたいな言い方にびっくりして近くにあったミラーでaaaが顔を見てみると、ゾロと同じ赤の瞳。
「……なれた?」
「あぁ、これで一緒だな。絶対ぇ離さねぇぜ?」
「……うん。よろしく、ゾロ」
ゾロの笑顔を真似したaaaの顔は心底嬉しそうに微笑んでいた。




◯補足
サキュバス:夢魔、淫魔のこと。



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