旧短編 | ナノ


雰囲気:シリアス ストーリー:甘め
※現パロ



いま、おれの罪を明かそう。
そして懺悔する。


(加速する想い)


解かれた包帯をゴミ箱に捨て、テーブルから消毒を取った。
「罪は、許されると思う?」
サンジは問うた。
塞がった傷口に流された消毒液。
少しだけしみたのか、びく、とaaaの腕が跳ねた。
「……つみ?」
繰り返したaaa。
うんうん、と考え始めたaaaを見つめるながら、ガーセを当て包帯を巻いていくサンジ。
「………許されないよ」
aaaは頭を上げサンジの横の部屋の景色を遠目で見ながら、言った。
そして、包帯でぐるぐる巻きにされた傷を握り締めた。
サンジはaaaから目を離そうとしない。
「でもね、サンジ。罪を軽くすることは出来ると思うの。人が罪を犯した事実は変えられないけど、人は変われる。そうでしょ?」
ゆっくりと下がるaaaの頭。
「aaa、ちゃん…」
サンジはaaaの頬に手を添えた。
「優しく人に接するとか、そんな簡単なことでいいから……心から変わろうと思えば、きっと…」
ば、と俯いた状態からサンジを見る。
サンジの表情は真剣だった。
「変わる……そう、だね…」
目を細めたサンジに、aaaから唇を重ねた。
「んっ…」
侵入してきたサンジの唇から逃げようとすると後頭部にサンジの手。
「うっ、んむ…」
貪るようなキス。
aaaはただ目を閉じていることしか出来なかった。
「うぅ…ふ、む……っはぁ」
やっと離された唇。
とろりと口端に垂れた唾液をサンジの舌が拭った。
「……aaaちゃん、大人を困らせないで」
眉を八の字にして懇願。
「サンジ、私…きっと――っん」
サンジの手によって覆われた口。
何も言わせないように塞がれる。
(サンジ。私、今言わなきゃ…次は無い気がするの……!!)
サンジの手を引きはがそうと藻掻く。
「aaaちゃん。しー」
人差し指を口の前に立てて、「黙って」のポーズ。
「…っ」
動かしていた手の動きを止め、口を覆うサンジの手首をそっと両手で握った。
「いい子。……それ以上は言わないで、aaaちゃん」
(サンジ…?)
サンジはaaaの瞳を見据える。
「おれは……最低で最悪の人間だから」
(…?)
「何も言わないで。そして誰にも言わないで。そうしたら言ってあげる」
aaaは力強く何度も頷いた。

「人を殺した」

何か固くて重いもので頭をガンと殴られたような衝撃。
「しょうが…なかった、なんて言い訳にしかならないよね」
目を逸らしたサンジ。
「おれはね……恋人を殺されたからって、自分の手で犯人を殺したんだ…」
aaaの口を覆っていた手を離し、サンジはaaaの包帯の巻かれた腕を握り、包帯を外した。
「怖いなら………出て行っていいよ」
掴んでいたaaaの手を離した。
「…………サンジ」
長い間の後、名前を呼ぶ。
「ン?」
「怖くないよ」
aaaは両手でサンジの頬を包んだ。
いつの間にaaaの瞳は潤んでいて。
「サンジは犯人に罰を与えた。それだけでしょ?」
「彼女も……aaaちゃんみたいだったよ」
金髪に隠れた左の瞳。
反対の右目がaaaを捉える。
「彼女って…」
「ううん、彼女なんじゃないかな」
ふるふると首を横に振った。
「おれが罪を忘れないように、彼女が、aaaちゃんが現れたんだ……」
とっても似てる、と目をなぞったり、髪を撫でたりするサンジ。
「……これは、おれへの罰だ」
サンジの瞳からぽろりと涙が零れた。
「いつまでも罪を責め続けられる」
狂ってしまいそうだ、とサンジは頭を抱えた。
「じゃあっ、なんで私を助けたの!」
叫ぶaaaの言葉に、サンジは理由を探した。

aaaに会ったあの日――。
サンジは仕事帰りに夕飯の食材を買いに行っていた。
しかし道の途中、公園で雨にも関わらず傘をささず、ベンチに座り手首を握る少女が見えた。
一瞬、殺された恋人に見えた。
髪の色や風貌。
サンジは何かを思うより先に車を止め、降りて少女のもとに歩み寄っていた。
「おいで」
手を伸ばした先の少女は己の手を重ねた。
人の体温とは思えないほど冷たかった。
己を見上げた少女を見ると、サンジはやはり恋人を重ねた。
(……似てる)
家に招き入れ、接する内にわかったこと。
昔の恋人とは性格も態度もことごとく違う。
しかし何故か惹かれている己がいた。
控えめに笑う顔、己を気遣う優しさ。
恋人を失ってから笑うことを忘れたサンジが、aaaに会って何度も笑っていた。
(どうして…)
己でも理解できない心の内。
やはり今でも、わからないまま――。

「最初…aaaちゃんに会った時は、彼女に似てると思ったんだ……」
サンジは己の両手の平を見つめる。
「でも、彼女とは全然違って……弱くて、小さくて、だからaaaちゃんを守ってやりたいって…、思ったんだ。今度は…ちゃんと……!」
その手の平を握り締めた。
サンジの瞳からまた、涙がぽろりと溢れた。
頬は伝わず、ぽたりとサンジのパンツにシミを作った。
「aaaちゃんはおれへの罰で、それでいておれへのチャンス……」
aaaはサンジの目尻にキスを与えた。
「サンジ……」
「罪を忘れないため……、愛する人を、今度は守り抜くための…」
サンジはaaaの肩を掴んで、胸に引き寄せた。
aaaの耳元でサンジの速い鼓動が音を立てる。
「愛する、ひと…?、彼女さんじゃなくて……?」
「aaaちゃんは…、彼女に"似てる"だけ。aaaちゃんはaaaちゃん」
抱きしめられ、サンジの顔を見れない。
むむ、と声を上げ力を少し込め、aaaは上を見上げた。
サンジの顔はほんのり赤く。
「彼女に似てないのに、aaaちゃんはこんなにもおれの心をいっぱいにしてるんだよ?」
聞いて、と心臓部分に押し付けられた耳。
(鼓動…速い…)
「なんでかな……すごく、aaaちゃんの力になりたい。守りたい。……愛おしい」
優しく撫でたサンジの手の感触と、聞きたかった言葉。
「っ…サンジぃ…っ!」
aaaはサンジの背中に腕を回し、互いに抱きしめ合った。

「ねぇ、aaaちゃん。おれ、遠くへ引っ越すよ」
抱きしめられた状態のaaaはびくりと体を震わせた。
「サンジ…なんで…?」
「おれ、一応逃亡犯だし。ずっと同じ場所にいるのは危ないから……。aaaちゃんのこと守ってやりたいけど…」
サンジにさらりと撫でられたaaaの頬。
「サンジ、私…」
「aaaちゃんのしたいようにしていいよ。強制じゃない」
ふるふると首を横に振ってみせる。
「サンジ……」
aaaはサンジの首に両腕を回し、ひたすらサンジの体温を確かめた。
(サンジと……離れたく、ない)



Last...

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -