旧短編 | ナノ


暗闇の中。
汗ばむ肌。
重なり合う影。
そうして出来る、愛の結晶。


ミが生まれてくる


たぬきみたいな外見のトナカイ、チョッパーとaaaはサニー号の診療室で話し合っていた。
「ウソ」
驚いた顔のaaaは、何回かその言葉を口にしていた。
「…じゃないぞ」
ふるふる、と首を横に振るチョッパー。
「………えぇえ!!?そこはウソって言うべきだよ!」
「えっ!、でも……本当のことだ」
「……と、取り敢えずサンジのとこに…」
「おれも行くぞっ」
ぴょこぴょこと跳ねながら、チョッパーが後ろをついて来る。
診療室を出て、サンジがいるであろうキッチンへaaaとチョッパーは向かった。

「さ、サンジー…暇…?」
「aaaちゃん、どうしたの?」
キッチンの扉を開け、そこから中を覗く。
サンジは三十分前にしたおやつの後片付けをしていた。
「ちょっと座ってて?」
「ん……」
チョッパーを抱きしめ、ダイニングテーブルの椅子へと腰掛けた。
サンジはすぐに皿洗いを終えて、向かいの席に座った。
「チョッパー、aaaちゃん。何話してたの?」
「それ!その話なの…」
「き、聞いて驚くなよ!」
と、チョッパーが一言断った。
「?……うん」
少し困惑気味に、サンジは答えた。
「あのね、私…」
決心して、チョッパーをぎゅうと抱きしめ、aaaは口を開いた。

「私、妊娠したらしいの!!」

「……!」
サンジは目を見開いていた。
そして何を思い立ったのか、サンジは立ち上がり、aaaの側の椅子に座った。
「サンジ?」
aaaはサンジの方を向いて座る。
「それ、ほんと?今日ってエイプリルフールじゃないよね」
真剣な眼差しでaaaを見るサンジ。
「ほっ……ほんとだぞ!」
aaaの下から声がした。
チョッパーがいたのか、と思い出したように顔を緩ませた。
「チョッパーが言うんなら、本当だな」
「うん」
aaaもサンジの瞳を見つめる。
「チョッパー、ちょっと二人にさせてくれ」
「お、おう!」
チョッパーはaaaの膝から下りて、キッチンから出ていった。

「……」
サンジは無言でたばこに火をつけ、そっぽを向いてふぅ、と煙を吐いた。
そのたばこを指に挟み、サンジは微笑んだ。
「ここに、いるんだ?」
たばこを灰皿に揉み消した後、サンジはaaaのまだ膨らんでいない腹部に手を宛てた。
「……うん」
サンジの手に、己の手を重ねたaaa。
チョッパーに言われた時は実感などなかったが、サンジに言われると急に込み上げてくる愛しさ。
「aaaちゃんは……産みたい?」
「え?」
サンジはaaaの腹部から手を離し、頬を撫でた。
「中絶っていう選択も、あるから」
「え、あー…私は、産みたいな」
迷惑かな、と笑ってみせると、サンジは首を横に振った。
「嬉しいよ、aaaちゃん。愛してる」
そう言って、サンジは頬を撫でながら、そっとaaaの唇に己の唇を重ねた。
深まるキス。
唇を離した頃にはaaaの頬は紅潮していた。
「サンジ……ありがとう。愛してる」
「これからは、aaaだけじゃなく、この子も守れるように、もっと強くならなくちゃね」
サンジはちゅ、とaaaの額にキスをして口端を上げた。
「頑張ってね、PRINCE」
くすくす、と笑い合いながら二人はキッチンを後にした。

「私、妊娠したの」
クルー達に告げると、みな喜び、その日は宴となった。
生まれてくる子供のために、と控えたお酒。
それをわかってサンジもあまり飲まないでいた。
酒の入った他のクルー達は部屋や、そのまま甲板などで寝てしまった。
「aaaちゃん?寝ないの?」
「ん、待って、サンジ」
aaaは明日のご飯の仕込みと宴の後片付けをするサンジを後ろから抱きしめている。
「……ねぇサンジ」
「ん?」
ぱっ、とサンジの体から己の体を離し、aaaはサンジの顔を覗き込んだ。
「好き」
「おれは愛してますよ、PRINCESS」
ちゅ、と軽く口にキスをして、仕込みをなるべく早くサンジは終わらせた。
「aaaちゃん?」
「うん?」
紅茶の入ったカップをaaaの前に置き、サンジは向かいに座った。
「もう夜中だよ……」
「……サンジ。一緒に、寝よ?」
「うぐふっ」
己の紅茶を吹き出すところだった。
「下心ナシで、だからね!!」
「あぁ、うん」
そうだよね、と呟きながら紅茶を嚥下した。

「サンジ……」
「aaaちゃん」
リップ音を奏でて、サンジとaaaは同じ布団の中でキスをする。
「あのね、今すっごく幸せ」
「おれもだよ、aaaちゃん」
下腹あたりを撫でた二人。
「なんて名前にしよう」
「ゆっくり、考えればいいよ……」
抱きしめあって、二人は眠りについた。


さぁ、早く出ておいで。
何も怖がらなくていいんだよ。
私もサンジも、あなたを愛しているから。



SH/キミが生まれてくる世界 より

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