旧短編 | ナノ


※現パロ


dinner time(ディナー タイム)。


い時間


大学での友人であるサンジの家にaaaは訪れていた。
「aaaちゃん、これ」
「サンジ……ありがとう」
aaaが読みたいと思っていた本をサンジが持っているから、ということで本を借りに来たのだ。
「……ん」
ぱらぱらと本を見てみる。
速読は出来ないのだけれど、本の内容を少し理解したような雰囲気を漂わせてみたが、サンジには効かなかったのか、サンジは微笑んでいるだけだった。
「……ごはん食べてく?」
そう問い掛けられて、aaaは部屋に取り付けてあった時計をみた。
サンジらしいというのか、シンプルな時計は六時半ほどを指していた。
「サンジ、迷惑でしょ」
「だったらこんなこと言ったりしないよ」
ぐるぐるの眉の下の瞳は真っ直ぐこちらに向いていた。
射抜かれるかと思った。
「……迷惑じゃないなら」
「じゃあ、何がいい?」
鋭かった瞳は細められた。
サンジはキッチンに向かい、冷蔵庫を漁る。
「サンジが一番得意なやつ」
「困るなー」
と言いつつも食材を冷蔵庫から出していく。
「じゃ……和食がいい、魚」
「あ、ブリがあるから、それを食べようか」
「うん」
サンジは野菜を取り出し、うんうんと唸っている。
「どうしたの」
aaaは受け取った本をテーブルに置いて、サンジのもとに寄った。
「ん?うーん、ブリには何が合うかと思って」
「ふーん……でもこれはやめてね」
サンジが掴んでいたピーマンの袋を取り上げ、冷蔵庫の野菜室に戻した。
「ピーマン、嫌いなの?」
「うん」
aaaはリビングのソファに座った。
そうして、テーブルに置いた本を読みはじめた。
「頑張ってね、料理人(コック)さん」
素っ気ない態度で、aaaは言う。
「はい。極上の夕飯を作りましょう」
しかしサンジはいつもの調子を崩さず、aaaに返事をした。

七時過ぎ。
「……出来ましたよ、PRINCESS」
深くお辞儀をして、手を差し出す。
まるで、パーティーの時にダンスに誘う外国人のよう。
「……」
aaaは本を閉じてテーブルに置き、何も言わずに、サンジの手に己の手を重ねた。

ブリを箸で掴み、口へ運ぶ。
「……おいしい」
「aaaちゃんにそう言ってもらえると、すっごく嬉しいよ」
「へぇ」
サンジの言葉を聞き流しながら、おいしいご飯を食べていく。
「そんなにおいしい?」
「うん。自分で作るのより、ずっと」
サンジは自分のものは食べず、aaaの食事風景を見ている。
「サンジは、食べないの?」
「食べるよ……でも、aaaちゃんの食いっぷりに見入っちゃって」
「私が食い意地はってるって意味?」
む、と眉を寄せるaaaの顔を見て、サンジは首を横に振った。
「そんなに嬉しそうに食べてくれるのは、料理人(コック)として、とっても喜ばしいことなんだよ」
「ふーん。でも食べなよ、おいしいから」
aaaは己の箸に掴んだブリをサンジの口元に持っていく。
「ほら、あーん」
「……あーん」
少し躊躇ってから、サンジはブリを口に含んだ。
「おいしいでしょ」
舌に乗ったブリは甘みがあり、それでいて塩気が効いていた。
「さすが…、おれ」
不意に口をついた言葉は、己を褒めるものだった。
「自分で褒めるかぁ…!確かにおいしいけどね!」
くすくすと笑うaaaに、自然とサンジも笑っていた。
「ありがとう」
「…ん?」
「ありがとう」
再度繰り返す。
「うん。こちらこそ、おいしいご飯をありがとう」
そう返事をしてから、ぱくぱくとご飯を平らげていく。
サンジも同じように食べていった。

「ご飯も作ってもらって、送ってもらうなんて……本当、ごめんね」
「そんなことないよ」
aaaは己のマンションの玄関口にいた。
「ありがとう」
「こちらこそ」
aaaは笑顔で感謝の気持ちを述べたけれど、サンジがすぐさま返事をするので、切り替えしに困った。
「……えっと」
俯いて、考えていると、そっと頭を撫でられる。
「サンジ、私、何かお礼がしたい」
サンジを見上げると、サンジは少し目を見開いて驚いた表情を見せたが、すぐに穏やかな表情へと戻った。
「いいのに。おれがしたかっただけだよ。ご飯作るのも、送るのも」
「でも!」
サンジの言葉に頬が紅潮するのがわかったが、それでもaaaは諦められなかった。

私ばかり甘えているのは、気に食わない。

「じゃあ……失礼、PRINCESS」
サンジはaaaの頬に唇を寄せた。
「さっ、サンジ!」
突拍子のことで、声が上擦った。
「これでいいよ」
「……サンジ」
「?」
怒っているのかと思いつつも、aaaの顔を見た。
「次に家に行くときは、ここに、ね」
真っ赤な顔をさせながら、サンジの腕を掴み、その指を己の唇に這わせたaaa。
「もう、駄目」
あまりにも可愛らしい顔とお願いに、サンジは溜まらず唇を重ねた。
「次と言わず幾らでもしてあげましょう、PRINCESS…!」
「その言葉遣い、なんかイヤ」
「……aaa」
「ん」
良し、と言うように、aaaはサンジを抱きしめた。
「好きだよ、aaa」
「……遅いよ」
「ごめんね」
ちゅう、と上唇に吸い付いて、それから額にキスを送った。
「好き、サンジ。私も好き」

借りた本のジャンルはラブストーリー。
大学生の恋愛。
そして、卒業からの結婚。

そうなれるといいな、なんて、欲張りすぎ?




○おまけ
「ご飯作るのも家に送るのも甘い言葉をかけるのもaaaちゃんだけだよ」
「……うん」
「信用してない?」
「うん」
「aaaちゃんだけなんだよ、ほんと。そりゃあ他の女の子にも優しいけど、こんなにはしないよ」
「ははは」
「aaaちゃん、棒読み、棒読み!」
「しないでね」
「うん」




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -