旧短編 | ナノ


※時間軸:エニエス・ロビー後、シャボンディ前


笑って欲しい
涙の代わりに、憎しみの代わりに、さよならの代わりに…
Sound Horizon/メルヒェン


あなたとわたしの手をねて、 01

ある島に到着した海賊船。
そこから出てくるのは、かの有名な麦わら海賊団、ルフィたちだった。
「しーぃまに着いたぞぉーッ!!」
島に着陸したルフィが、叫んだ。
「ん…?」
その声が聞こえたのか、それとも他の音なのか、街の中で女が一人、見えもしない港を振り返り見た。

「よっと」
ひょい、と船から身軽に飛び降り、サンジはまだ船で背伸びをするナミに微笑んだ。
「ナミさん!おれの胸に飛び込んできてください!」
サンジは目をハートにしながらそう言った。
「いいわよ別に!」
なんのための梯子よ、とぶつぶつ呟きながら、ナミは白い袋を手に、軋む梯子を下りた。
そして船の甲板にいるウソップを見上げた。
「船番頼んだわよ!」
「おー!」
ひらひらと手を振るウソップを背に、サンジとナミは街に足を進めた。
ルフィとゾロ、他のクルーは急ぎ足で、すでに街に向かっていた。
「さて、この島のログは何日かしらねー」
「久々にゆっくりしたいんで長めがいいな」
サンジが胸ポケットのタバコをくわえながら言った。
「そうね。でも肝心のルフィが…」
「あぁ、騒ぎを起こしたら…」
二人は肩を大袈裟に落とした。
「せっかくの島も台なしに…」
はぁ、と大きく溜息を吐いた二人とは裏腹に、ルフィは飯屋でご飯を食べていた。
「あ。そういえば前の島で手に入れた宝を換金しなきゃなんだった」
手に持っている袋の存在を忘れていたナミ。
「おれもついていきます」
「頼りになるわ」
ルフィより何倍も、と言ってナミはぽんぽんとサンジの肩を叩いた。
「あぁっ、ナミさんありがとうございますー!」
ラブハリケーンなサンジを無視しつつ、ナミは換金所に向かった。
賑やかな街に人々が行き交う。
「…!」
サンジの横を通った女性に、サンジは釘付けになった。
整った顔に、風になびく女性の髪。
どこかに、魅入ってしまった。
女性はサンジの視線に気付かず、サンジを通りすぎて、街の風景に紛れていった。
「…サンジくーん?」
ナミが立ち止まったままのサンジに声をかけた。
「あ、ハーイ!」
サンジはナミの後を追った。

「結構な値段だったわね」
「そうだな、頑張ったかいあったかも」
スパー、とたばこの煙を吐きながら、サンジが言った。
「サンジくん、はい」
ナミは袋詰めされた金から適当に札束を取って、はサンジに渡した。
「ありがとうございます」
サンジは微笑んでから、ナミと別れた。
「…金目当てでついてきたのかしら?」
ナミは一度船に戻り金を置いてから、またショッピングへと出かけた。

その夜、サンジはルフィたちと酒場にいた。
「あー、うめぇうめぇ」
バクバクと大量の飯を腹につめ、皿を空にしていくルフィ。
「食べすぎよっ!!」
バチーン、とナミがルフィの頭を叩くが、びよん、と頭が揺れただけで、ルフィの暴食は続いていく。
「…ほんとどんな腹してんだよ」
「化け物だよなー」
「いやー、ルフィさんすごいですねぇ」
サンジとウソップとブルックがルフィを眺めて言う。
「…あ」
サンジが酒場を見渡していると、ぴたりとサンジの動きが止まった。
「ん?どうした、サンジ」
「あ、あのプリンセスは…」
酒場のカウンターで一人酒を飲む女性は、サンジが街中ですれ違った女性だった。
「美人だな」
「あぁ、だろ?」
「…あ、ライバル」
その女性に一人の男が寄ってきた。
女性は見るからに嫌がっている。
サンジはイスから立ち上がり、女性に声を掛ける男を蹴り倒した。
「…あ、ありがとうございます」
「いえ。あ、隣いいですか?」
「どうぞ」
にこ、と笑ったその女性の隣に、サンジは腰を下ろした。
「おれはサンジ。プリンセス、あなたのお名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
「…aaaです」

それがaaaとサンジの出会いだった。



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