旧短編 | ナノ


「あっ、…ーうぅ…!」
くるしい、くるしい。
どうか、いるなら助けてください、神様。


お願い神様、どうか


「…あ、う」
aaaは緊張すると喋れなくなってしまう性分である。
人見知りであるがゆえに他人との会話はあまり成り立たず、最近なった恋人のサンジとは緊張して話せなくなってしまう。
そんなことが、日常だった。
しかし日常といっても、aaaは慣れることはなく、そのことにいつも悩まされていた。
「…う」
サンジはaaaを理解し、緊張をほぐすため時間をかけて話し合ってくれている。
「aaaちゃん、おれね」
サニー号のアクアリウムバーのソファに腰掛けて笑いかけるサンジ。
「ん、」
たまたま合った視線。
aaaは目を反らした。
目を合わせているとaaaは赤面してしまうことがあり、それは彼氏が好きだとかそういう理由なのだけれど、赤い顔を見られるのが恥ずかしいaaaはサンジと目を合わせることが出来なかった。
「…aaaちゃん」
サンジが隣にいるaaaに上半身を近付ける。
aaaは恥ずかしさから、サンジの胸を押して一定の距離を取ろうと、身を引いた。
はたから見ると、嫌がっているようにしか見えない。
「な、…なに?」
aaaは目を反らしたまま、サンジに尋ねた。
「すき」
いつもより低めの声で一言。
サンジの言葉で、aaaは耳まで真っ赤になった。
「…あ、あぅ……、ーっ!」
aaaは言葉を返そうとするが、頭の中が真っ白で何を言えばいいのかわからず、言葉にもならない。
そんなaaaをわかっているサンジは笑って、aaaの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「…ご、めん」
涙が溢れてくるaaa。
サンジはaaaを抱きしめ、ぽんぽんと背中を叩いた。
「なんで謝るの。わかってる。わかってるから、いいんだよ」
サンジの優しさに、aaaは自分の性格を申し訳なく思った。

「さ、サンジくん……、す、す……す!……………す」
何度か想いを口にしようと試みたが、いつも言えずに終わっていた。
告白は、サンジからだったから、頷くだけで恋人になれたのだけれど。
「す…っ…」
極度の緊張で吐き気をもよおしたり、涙が出そうになってしまう。
それが、aaaにとって辛かった。
気持ちを伝えられないことが苦しくてしょうがなかった。
aaaは夜、女部屋で気付かれないように泣くことが日課になっていた。
ベッドの上で身悶え、嗚咽を上げる。

「うー…っ、あ…、ーっ!!」
苦しい、苦しい、苦しい。
たまらなく、くるしい。
自然と涙が出てくる。
好きって言いたいのに、サンジくんを目の前にすると言えないのは、なんで。
なんで、私はこんななの。
助けて、神様、どうか。

気付けば眠っていて、目が覚めると朝だった。
「…朝だ」
aaaはむくりと起き上がると、ナミとロビンはまだベッドで寝ていた。
aaaは音を立てず女部屋から出た。
ペタペタと船を歩き、甲板に向かった。
キッチンの電気はまだ付いていない。
甲板の芝生をひとしきり歩いてから、海と空を見た。
まだうすぼんやりとした空にaaaは微笑み、そして悲しげな顔をした。
「……別れようかな」
ぽつりと呟いたaaa。
「だれと」
後ろから見知った声が聞こえた。
aaaが慌てて振り向くと、そこにはやはりサンジがいた。
「あ…、サンジくん」
aaaはじりじりと後退りして、サンジと距離を取る。
「ま、付き合ってるのはおれなんだから、おれだよね」
サンジが笑う。
「……うん」
「なんで別れるの?、おれ嫌だよ」
「だって…」
甲板の端と端に二人はいる。
まだ早い朝、船も動いておらず誰もいないから声がよく通る。
「だって、す、すきとか言えないし言わないし、目は反らすし、……せっクスは嫌だって言うし……、こんな女、嫌われるよ。いつか絶対、嫌になる…」
aaaはしゃがみ込み、膝を抱えた。
「私だってこんな女、嫌いだよ…!」
声が震え、涙が出てくる。
「サンジくんに嫌われたくない…。言えなくて苦しいの、サンジくんと付き合ってからもっと苦しくなってるもん…!!」
サンジが芝生を踏み締め、歩み寄ってくる音が聞こえる。
ザクザク、と足音。
「やだ、来ないで…!」
「ごめん、無理」
サンジは蹲ったままのaaaを抱きしめた。
「おれのせいで苦しい思いさせてごめん…、でもおれはaaaちゃんと一緒にいたいよ。好きだから、愛してるから。全然嫌いになんかならないよ」
サンジの悲しげな声にaaaは顔を上げた。
「…サンジくん」
「ごめんね。焦らなくて大丈夫だよ、だっておれらまだ10代…」
「……そこ?」
サンジはaaaを抱きしめていた手を緩めて、aaaと目を合わせた。
aaaの顔は真っ赤だ。
「…見ないで」
「やだ」
サンジがaaaの額に張り付いた髪をかき上げた。
aaaの心臓はバクバクといって高鳴り、おさまることを知らない。
aaaは今にも心臓が口から出てきてしまいそうで、手で口を押さえた。
「……なんで口押さえるの?」
「だって……、心臓が、口から…っ」
サンジは少し頬を紅潮させて、aaaの手を掴んだ。
「大丈夫、押さえてあげるから」
手をどけて、サンジはaaaに唇を押し当て、心臓が口から出ないように塞いだ。
「……すき」
心の中か口に出したか、覚えてない。
サンジと初めてのキスだった。

お願い神様、どうか。
どうか、ずっとサンジくんと一緒にいられますように。



「aaaちゃん」
「ひっ…、な、な」
「…距離があると喋れるよね、なんで?」
「わっ私も、わか、わかんな…」
「どんなaaaちゃんも好きだけどね!」
「あ…ありがと」



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