旧短編 | ナノ


あなたしか見えていない


「マダラさん!」
「……なんだ」
ぐるぐるの仮面を付けているマダラさんに、私は声をかけた。
ぐるぐるの仮面を付けて、とんぼでも捕まえたいのだろうか。
「…なんでもありませんけど」
「そうか」
マダラさんは泉のほとりに腰掛け、ぼうと時たま波紋を広げる泉を見ていた。
「…私を見てくれませんか、マダラさん」
マダラさんの腕をつんつんと突く。
「オレはお前しか見ていないが」
マダラさんがそう言って、私を見た。
あぁ駄目だ、赤い瞳に吸い込まれてしまう。
「…奇遇ですね。私もですよ、マダラさん」
私はマダラさんの膝に頭をのせた。
ひざ枕だ。

「時々、私でいいのかわかんなくなる」
私は泉を見つめながら呟いた。
「何がだ」
「私がうちはだったらマダラさんは私にもっと興味を示してたのかなって、思って」
私は無意識に手を握った。
「なんで、そうなる」
「マダラさん、うちはに執着してるから」
「…嫌味か?」
マダラさんが溜息を吐いたのがわかった。
「違います」
私は訂正して、視線を泉からマダラさんに移した。
「マダラさんはうちはを恨んでいるけど、その裏には愛があると思います。愛していたからこそ、裏切られた時とてもショックだったんでしょう?」
マダラさんは沈黙する。
「…私がうちはだったら、私はあなたの役に立てただろうし、一族として愛されてたんだろうなぁ、と思って。結婚も出来たかも…」
もっと早く生まれたかったな、なんて思ったのは、内緒。
「お前は、馬鹿だな」
「…え」
マダラさんの悪口に私は固まった。
「うちはの汚れた血族でないからこそ、オレはお前を愛せたんだ。きっとお前がうちはにいたら、オレはお前まで恨んでいた」
マダラさんは私の頭を優しく撫でてくれた。
声色はいつになく優しい。
「マダラさん…」
「オレはお前を愛している。それだけでは、駄目なのか?」
「いいえ…、とっても嬉しいです。マダラさん」
私がマダラさんのお腹に擦り寄ると、マダラさんは仮面を取り払って私にキスをした。
なんて甘いキスなんだろう。

「…私は、マダラさん。マダラさんしか見てませんから!」
「…さっきも聞いたが」
マダラさんは仮面を再び付けた。
「駄目ですか?言っちゃあ…」
「いや…、ニヤけてしまってな」
「マダラさんってば、カワイー!!」
きゃあきゃあと笑うとマダラさんは私を抱きしめてきた。
「可愛いのはお前だろうが」
耳元で囁かれたら、私は、もう。

「ギャー!!トビお前なに抱き合ってんだ、うん!」
デイダラの叫びに、私とトビと呼ばれたマダラは現実に引き戻された。
「……すいません、先輩。見えてませんでした!」
いつもとは異なる、トビの軽い口調に私は少し笑いながら、私はトビことマダラと手を繋いでデイダラ促されながらアジトに戻った。



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