旧短編 | ナノ


※aaa:幼さの残る21歳


「おれと海に出よう」


の遺産


aaaは元々ある島の奴隷だった。
島の領地を統べる男の女として生かされてきた。
何度も蹂躙され、牢屋に閉じ込められ、そうして生きていたaaaにある日海賊が現れた。
海賊は島を支配し、aaaを抱いた男を殺した。
白ひげ海賊団と名乗る海賊は島で何週間か過ごし、そしてaaaはその海賊の内の一人と仲良くなった。
「……サッチ?」
「そう、サッチだ」
顔がいかついくせに屈託のない笑顔をするサッチにaaaはすぐさま惚れた。
「いい…名前ね。…私はaaa、助けてくれてありがとう」
「……人殺して感謝されるってなんか変な気分だな」
うーん、と顎に手を宛て悩むサッチ。
「海賊って人殺しして笑ってるような人だと思ってたから、意外」
海賊の話は奴隷のaaaたちの耳にも入っていた。
「……そうかぁ?」
はぁ、と溜息を吐いてサッチがaaaを見た。
自然と目が合う。
すると、少し距離のあるところに立っていたサッチがaaaのもとに歩み寄った。
「…なぁ」
最初は性欲処理だった。
何度か体を重ねるにつれて、二人の関係は親密になっていった。
「お前さ、こっから出ねぇの?」
牢屋から奴隷たちは解放されたものの、aaaはいつまで経っても男の屋敷にいた。
食料もまだまだあり、生活するには申し分ない場所だった。
「ここで生きてきた私は、生き方を知らない……だから外に出ても死んでいくだけ」
屋敷のキングサイズのベッドでごろごろと転げるサッチを見遣りながらaaaは言う。
「じゃあよ、おれと一緒に来ねぇか」
「………海賊になれっていうの?」
「おれaaaに惚れちまった。離れたくねぇ」
サッチはaaaの頬に手を添え、唇を重ねた。
「……役立たずよ?」
「aaaはお得意のアレがあるじゃねぇか!」
「え?洗濯のこと!?そんなことで海賊になれるの!?」
えぇ、と驚くaaaに、サッチは微笑みを向けた。
「おれと海に出よう」
「……こんなのでよければ」
aaaも、笑った。

「こっ、こんにちは…!」
クルーたちに挨拶をすると、サッチが説得してくれたのか、すぐに話が通った。
「マルコだよい」
「おれっ、エース!!よろしくな!」
クルーたちは優しく、aaaがすぐに馴染めるよう努めてくれていた。
「あ…、サッチ!」
「aaaー!」
今の二人はそれこそラブラブカップルで、よくクルーに囃し立てられた。
「用意はちゃんと出来たか?」
「うん」
島のログが溜まり、海に出ることになった。
サッチが買ってきた服をかばんに詰めて、aaaはサッチと船に向かった。

その晩、海の上を走り出した船で、サッチは殺された。
「……」
「クソ…!!」
キッチンにあるサッチの死体を見て、マルコが悔しそうに泣く中、aaaはサッチの死が受け入れられず泣けなかった。
島にあったという悪魔の実を争ってサッチは死んだらしい。
「サッチ……、サッチ、は?」
「aaa…っ、死んだんだよい、サッチは…!」
その言葉にaaaはぼろぼろと涙を流し、その場にへたり込んだ。
「いやぁ…!!」
aaaは頭を抱え、泣き叫ぶ。
それは夜明けまで続いた。
体に悪いからとマルコにキッチンを連れ出された。
「……待って、マルコ」
ぐいぐい引っ張るマルコに声をかけ、aaaは遠くの空を見た。
「これが…、日の出」
太陽が水平線から顔を出している。
「…私いつも牢屋にいたから見たことなかったの」
「…いつ見ても綺麗だよい」
「サッチと一緒に見たかったなぁ…」
ぽつりと呟くaaa。
「aaa、お前はサッチの遺産だよい。だから守る。お前も、そのお腹の中の子も」
aaaが無意識にまだ膨れていない腹に手を宛てた。
「…遺産、ね。こんな汚れた女が?」
「サッチが愛した女だい」
ほろり、とaaaの瞳から一粒の涙が零れた。
「……私、サッチみたいに戦えないけど、役に立てるよう頑張ってみる」
ふ、とマルコは笑って、aaaを抱きしめた。



〇おまけ
「ねぇ、サッチ、聞いて!」
「どうしたぁ?」
「赤ちゃんが出来ちゃった…!!」
「……!!」
「め…、迷惑かな。どうす…」
「マジかよ!スゲー嬉しい!」
「…サッチ!」
「名前なんてぇのにしようかなぁ!」
「そうねぇ…」
遠い昔の、記憶。


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