旧短編 | ナノ


※現代パロディ



部屋に鳴り響く携帯の着信音に嫌気がさして、aaaはサンジの携帯を手に取り、ボタンを押した。
音が止まる。
「こんな夜中に……だれ」
パカ、と携帯を開くと、メールには知らない女の名前。
「……」
浮気がバレたことに気付いていないサンジはベッドで寝息をたてていた。


最大のミス


「……もう無理かな」
aaaは溜息を吐いて、サンジの携帯を見つめた。
開いたメールは「昨日は楽しかった」というありがちな内容だった。
何が、と思うわけでもなく、ただ胸が圧迫されたように苦しくなった気がした。
一向に治らないサンジの浮気癖に、半ば諦めていた矢先の出来事だった。
サンジの浮気は、大抵が食事に誘ったりするものだった。
一線を越えることは、まずないと思っていた。
aaaは眠るサンジを眺めて、それからメールを未開封に設定してベッドに入った。
サンジとは少しの距離を置いて。

いいのか悪いのか、翌日サンジは仕事が休みだった。
休みの日は、朝ごはんをサンジが作ることになっている。
「んむ…」
サンジによって開かれたカーテン。
窓から太陽の光が差し込み、脳を活性化させる。
「お腹…空いてない…」
お腹をさすりながら、リビングに向かった。
朝食を作るサンジに、aaaは顔をしかめた。
「おはよう、aaaちゃん」
笑顔のサンジに、嫌悪感を抱いた。
「おはよ…」
小さく呟いて、冷蔵庫からお茶を出し、コップに注いだ。
「元気ないね、大丈夫?」
「はは…、大丈夫だよ、多分」
なぜか震える手を抑えて、aaaはご飯を食べた。

「ねぇ…、サンジ」
「うん?」
「それ終わったら、座って」
ダイニングテーブルのイスに座ったまま、aaaはシンクの前に立つサンジに言う。
「?、うん」
サンジは頭にクエスチョンマークを浮かべながら、洗い物を済ませると、aaaと向かい合わせになるように、イスに座ろうとした。
「待って、携帯持ってきて」
aaaの真面目な顔に、サンジは言う通りに携帯をテーブルに置いてから、イスに腰をかけた。
「ごめんね、見ちゃった」
「何を」
「メール。浮気したんでしょ」
サンジは目を見開く。
「おれは…」
「言い訳はいいから。事実だけで十分」
淡々と喋るaaaの言葉に感情は皆無だ。
「…した」
「うん。……私に飽きた?」
サンジの言葉に、aaaは少しだけ体を震わせた。
「違う。おれはaaaちゃんのことが好きだ」
「浮気するってさ……私にとって、身近な人を好きになることなんだよ」
「…は?」
突然のaaaの言葉にサンジはaaaの瞳を見た。
aaaは続ける。
「ゾロとか、ルフィとかを好きになることなの。俳優とかを好きになるのはまた違うんだって、何度も言ってもサンジは嫉妬してばっかりだったね」
aaaは目を逸らした。
「サンジは、それなのにサンジは女の子にデレデレしてばっかりで、浮気癖は治ることはなくって…」
aaaは自分を嘲笑する。
「私、サンジに言ってなかったけど、いっぱいいっぱい嫉妬してたんだ」
「……」
サンジは息を飲む。
「ほんとは女の子と話してるの見るだけでも辛かった……でも、サンジと一緒にいたかったから、何も言わなかった…!!」
震えるaaaの唇。
aaaの潤んだ瞳から、涙が一粒零れた。
「aaaちゃん…」
サンジは、セックス時以外にaaaが泣いたところを見たことがなかったので、今がどれほどの事態かをやっと理解した。
「あ…、ごめん……クソごめん、aaaちゃん」
サンジは目頭が熱くなった。
頬が濡れる感触がして、泣いていることがわかった。
「…っ、サンジに泣いてほしいわけじゃない…!」
aaaは手で涙を拭う。
「ごめん、あんなことになるなんて…、でもおれは、おれは」
「言い訳は嫌!…サンジ、サンジいつから私に触れてないと思う?私たち一ヶ月セックスしてないんだよ…!」
それを言った後、aaaは涙を抑え切れず、うまく喋れず、テーブルに突っ伏して泣き崩れた。
「おれは……aaaちゃんを、クソ愛してる……」
「れたくない…、別れたくないよ……!!別れたくてこんなこと言ってるんじゃない…!!」
嗚咽に混じるaaaの本音。
「…おれだって別れたくて浮気してるわけじゃねぇよ……、aaaちゃんなら許してくれるって思ってた……クソごめん…、溜まってたんだ…」
「私に飽きてしたくなかったからでしょ…?」
「違ぇ!」
サンジが声を荒らげたのに、aaaは怯えながらサンジを見遣る。
「だってaaaちゃん、おれとのセックス拒むから……さすがに、一ヶ月のブランクはきつかったんだ」
「一ヶ月前……生理のとき?」
aaaが思い返してみると、一ヶ月前には生理になっていて、サンジに誘われた時にその理由を言わずに「したくない」と拒んでいた。
これではサンジとセックスが嫌だと言っているようなものだ。
「あ、私…」
男は溜まる生き物。
(それでも一ヶ月待ってくれてたのに……、仕方ないってわけじゃないけど…、私のせいだ)
「生理か…、そっか」
サンジは涙を拭うと、aaaのもとに寄った。
「私のせいだね…」
「いや、おれのせいだ……、aaaちゃんを待てなかった、おれの」
サンジはaaaを抱きしめ、目尻にキスをした。
「……aaaちゃんをクソ抱きてぇ」
「…うん、」
サンジがaaaを押し倒した。



〇おまけ
「私、最低だね」
「どこが。おれが最低なんだ」
「……ごめん。サンジは優しいね、そんなところが大好きだよ」
「嫉妬してくれるaaaちゃんを愛してるよ」
「……もう」



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