旧短編 | ナノ


「サンジ、くん」
「ん、ん?」
おれって結構プレイボーイで女たらしとかそういう男の勲章的名前で呼ばれたりするのに、なぜかこの女の子の前では全然うまく喋れない。


いじわるボーイ


キッチンでサンジが紅茶を飲んでいた時にaaaがキッチンに入ってきた。
「このおやつ、おいしかった」
さっきサンジの作った三時のおやつの皿を差し出すaaa。
「…で?もっと食べたいって?確かに残ってるけど、太るよ」
サンジが紅茶を啜る。
良い香りが部屋を充満している。
「…っ!、べ、つに…そういうわけじゃないよ…」
吃るaaa。
「あ、サンジくんは食べないの?」
「そんなに食べたいの?……半分あげるよ」
サンジは笑いながら、フォークで半分にしたおやつをaaaに差し出した。
「い、いい!!太るんでしょ!」
わたわたと手を振るaaa。
「うん、太るね」
半分を口へ運ぶ。
我ながらに、おいしいと思ったサンジはaaaを見遣る。
aaaはおやつとサンジを交互に見ていた。
悩んでいるようだ。
「じゃあ…、いらない。おいしいけど…」
「まぁ…太らないけどね」
「っ!!」
太るは嘘、これは太らない。
ナミやロビン、そしてaaaが気にしているからとおやつを含め全ての食事(レディ用)は低カロリーにしてある。
(なんか、嘘吐きたくなる。aaaちゃんと話してると)
に、と笑うサンジにaaaは少し泣きそうになっていた。
「なんで嘘吐いたの!サイテー!」
目は潤んでいるが、怒っている。
「嫌いっ」
「ごめん、嫌いにならないで」
サンジはaaaの言葉に、頭をがつんと殴られたようなショックを受けてすぐに謝った。
「……太らないよ」
子供を飴であやすように、半分になったおやつの皿をaaaに差し出した。
「……うん」
aaaはおやつを受け取り、フォークをさしてもぐもぐと食べた。
「おいしい」
カランと皿にフォークを置いた。
「aaaちゃん…」
「んむ?」
おやつを頬張って、さながらリスかハムスターのようだ。
「怒ってない?」
「…何が?」
「…よかった」
aaaは気にしていないようだ。
「うー?」
aaaは首を傾げるが、サンジは首を横に振って「なんでもないよ」と言った。
「ぷはー」
おやつを飲み込んだaaaは紅茶を飲んだ後にそう言った。
「おいしかったよ」
にっこりと笑うaaaは、サンジにとって何よりも嬉しいものだった。
「…ありがと」
サンジはそれ相応の笑顔を返し、食器を片付けた。

(…話題が……)
キッチンには沈黙が流れる。
「あ、あのさ、aaaちゃん」
「さっ、サンジくん!」
ほぼ、同時。
「あー…aaaちゃんどうぞ」
「あ、サンジくんから…」
どちらが話すのか悩んでいると、またもや沈黙が流れた。
「お…おれさ」
勇気を振り絞って、一言。
「aaaちゃんのこと……す、…き……なんだけど…」
しどろもどろに小さく呟いた。
聞こえていないかもしれないほど、小さい声。
「………………」
aaaは俯いたまま何も言わない。
(聞こえて、ない?)
aaaに声をかけようと、手を伸ばすと、aaaが何か言っていることに気が付いた。
「……ほんと?」
がば、とaaaは顔を上げた。
「え…っと、うん」
サンジは恥ずかしながらも精一杯の笑顔を向けると、aaaは速いスピードで顔を真っ赤にさせた。
「……嬉しい、すっごく嬉しい…」
手で顔を隠しながら、aaaは言葉を紡いだ。
サンジもその言葉に頬を紅潮させながらも、aaaの手を取り、手の甲にキスをした。
「いじわるばっかりするから嫌いなのかと…。私も、好き」
aaaが笑った。
「うん…、俺も好きだよ…」
サンジが笑顔したのと同時に、aaaがサンジを抱きしめた。
(いい匂いが、する)
風に靡いたaaaの髪からシャンプーの匂いがした。


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