旧短編 | ナノ


※じゃんる:暗ほのぼの甘
※aaa:女子高生


「あ。笹塚さん、」

友人が殺されるという事件で知り合った笹塚衛士という刑事。
事情聴取のときとか、この人だった。
一目見た時から、気になってて、今わかった。
あたし、この人、笹塚さん、好きだ。


キョリ


そう思って一週間。
もんもんとした気持ちを押し殺すことも出来ず、aaaが笹塚に話すとあっさりとOKをもらえた。
二人は付き合うことになった。
そして今、二人は夕方に出会った。
「aaaちゃん、なにしてんの」
「あー、ヤコちゃんおすすめのお好み焼きのお店に行こうとしてました」
向かう方向を指差すaaa。
笹塚は一度、その指差された道を見てから、またaaaを見た。
「ひとりで?」
疑問している風でないのに、喋り方が疑問形とは、おかしい人だ。
「友達と待ち合わせてますっ」
「そっか。じゃあ早く行ってあげたほうがいいね」
笹塚はひらひらと手を振って、後輩である石垣が運転する車へと乗り込んだ。
(…笹塚さんってさ…、嫉妬とかしないのかな。女か男かとか、聞かなかった)
ぼー、と考え事をしていると、いつの間にか目指していた店へとたどり着いていた。
aaaがドアを押すと、カランカランと音がした。

「彼氏とエッチしちゃった」
「へぇー…おめでとう、って言うべきなのかな」
お好み焼きをひっくり返すと、いい具合の焼き加減だった。
(さすが、あたし。笹塚さんと行きたいな)
ジュウー、と鉄板が唸りを上げる。
気にせずお好み焼きのカタチを整えていくと、簡単に出来た。
「ねぎとか、いる派?」
「あっ、いるいるー。かけるー。でね、」
続きを話す友人。
内容なんか、aaaの耳には届かない。
(エッチか……あたしまだ処女だ)
お好み焼きを口へ運ぶ。
かつおぶしのいい香りがした。
「エッチって気持ちいんだね。三回目でやっと気付いたー」
きゃっきゃっと笑う友人の話についていけない。
(エッチなんかしたことないし、したいとも思わないよ、)
「あっ、あとねぇ、このポーチ超かわいくない?」
学校のかばんから取り出されたのは教科書ではなく、化粧用のポーチだ。
花柄で目立つ。
「そうだね、超かわいい」
笑い返すと、友人はそうだよねぇと呟いた。
(あんまり可愛くない、ってか目がチカチカするよ、それ…)
本心はクダラナイとしか、思えない。
「あっ、このアイラインね―…」
それから一時間ほど、そんなノリの話をされた。
会計はワリカンで。
夕方の六時半くらいに、店を出た。

「あれ、aaaちゃん」
笹塚に、また会った。
「こんにちは。あ、こんばんは、か」
「お好み焼きの店は?この時間だと、行ったのかな」
腕時計を見遣る笹塚は魅力的だった。
(前髪長い、邪魔じゃないのかな)
ぽー、と見ていると、笹塚はaaaの顔を覗き込んだ。
「あっ、えと、行ってきました。おいしかったです。笹塚さんは、仕事…」
「俺?仕事終わり」
「あ、じゃあ、あの……えと…」
次の言葉に困っていると、笹塚は気付いたのか、あー、とaaaの言葉に続けた。
「家、くる?」
「は、はい!」
ぱぁ、とaaaの顔が明るくなった。
「さっきそこで事件があったんだけど、車、あそこの駐車場に止めたから、持ってくるまでここで…」
近くのデパートの駐車場を指差す笹塚。
「あたしも、行く」
aaaは、ひんやりする笹塚の手を握った。
そうすると、笹塚は握り返してくれた。
「…行こっか」

駐車場に辿り着いて、車を探す。
シンプルで目立たないのが笹塚の車だ。
きょろきょろと探すと、見知った車が見つかった。
「あれ?」
車を指差すと、うんと笹塚は頷いた。
笹塚は運転席に、aaaは助手席に座る。
笹塚がエンジンをかける前に、aaaは笹塚の太ももに頭を預けた。
膝枕だ。
「…どうしたの?」
aaaを見下ろす笹塚。
迷惑ではないようだ。
「あたし……みんなと距離があるの」
大人とか、女の子の階段を上っていく友人。
ずっと下を足踏みするaaa。
「それがすっごく…怖くて……」
声が震える。

彼氏とエッチ済ませて、ブランドのポーチ持って、化粧するのがフツーらしい。
でも、あたしはエッチになんか興味ないし、ポーチだってヒャッキンでも構わないし、化粧なんて今はまだって思ってるのがフツーで。
友人のフツーと、あたしのフツーがかけ離れすぎてる。

「こわいよ……、あたしフツーじゃないのかなぁ…」
涙が出そうになるのを、唇を噛んでおさえる。
「どこが。フツーだろ」
笹塚はそう言って、aaaの頭を優しく撫でた。

さっきまで冷たかった笹塚さんの手があったかくて、涙が溢れた。




〇おまけ
「フツーだよ」
「そう?」
「ヤコちゃんとおんなじ女子高生、」
「ヤコちゃん……エッチしたことあるかなぁ」
「なに、したいの?」
「ううん、キョリをね…縮めるために…」
「そういうのは、したい時にするもんだ」


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -