旧短編 | ナノ




ゴールに入ったら、私は告白する。
幼なじみのゾロに。


シュート and ゴール


「てっ、めぇー!」
「ごめん、ほんとごめん!」
aaaがなぜゾロに謝っているかというと、体育のバスケの試合中にゾロのパスで与えられたゴールチャンスをaaaのミスで水の泡にしてしまったからだった。
「ったく、この運動音痴……てめぇに渡すんじゃなかった」
大きく溜息を吐いたゾロに、aaaは俯くしかなかった。
「ゾロ、ほんとにごめんね…」
aaaはゾロの着ている白のゼッケンを引っ張った。
「aaa…、言い過ぎた、悪ィ。勝ったんだから、もういい」
ゾロがつけた点差で勝った試合。
10点差はあり、圧勝だった。
ゾロはaaaの頭をぐしゃぐしゃと撫でると、コートから出ていった。
aaaも続けて、コートから出た。

放課後の体育館。
aaaはシューズに履きかえず、スリッパは脱いで靴下のままで、床に転がったバスケットボールを眺めている。
何度やっても入らないボール。
「…入んないし!!」
二つ目のボールを力いっぱい投げる。
勿論、ゴールには入らず、跳ね返ってから床をゴロゴロと転がった。
「また次の体育で足手まといになるのやだ…」
転がるボールを捕まえて、ゴールに投げようとするが、腕が重くて投げられず、床に座り込んだ。
「やだよぉ…っ」
ボールを抱きしめ、ぼろぼろと流れる涙を止められず泣いていると、近くから聞いたことのある声がした。
「なにしてんだ?、aaa」
「ぞ、ろ…」
ゾロはゴールの下にあるボールを拾い上げ、aaaに歩み寄る。
「……泣いてんのか?この様子じゃあ、おれっぽいな」
ゾロはaaaの向かいに座り、aaaを抱き寄せた。
「泣くなよ、aaa」
優しく背中を撫でるゾロ。
(恋人でもないのに、こんなこと…)
aaaはゾロの顔を見上げた。
「ゾロ…」
腫れぼったい目。
ゾロの胸が、きゅんと高鳴った。
(んだこれ、…aaaなんて顔しやがる。凶器的だ、キスしてぇ)
「…ほんと、ごめん」
「ばか、aaaのせいじゃねぇ」
aaaがゾロをじっと見ていると、ゾロも目を合わせ、そして唇が――。
「だめっ」
「はっ!?」
aaaはゾロから顔を離す。
「恋人でもないのにっ」
「…っ、んなこと、おれはっ」
「それもだめっ」
今度はゾロの口を押さえた。
「なんでだ!」
「待って、ゾロ。私ね、どうしてもゴールしてみたいの、どうしたら入るかな」
「んなことどう…だっ、て……」
熱烈なる視線を送ると、ゾロは諦めたのか溜息を吐いて立ち上がった。
「わかった」
「ん!」
aaaは立ち上がると、ボールを投げる体勢をした。
「そのまま」
ゾロがaaaの腕を掴むと、少し角度を上げる。
頭にボールを掲げるような体勢だ。
「……おし、これで入れてみろ。ゆっくりだ、ゴール見ろよ」
ゾロの言葉に従って、aaaは、ゴールへと投げた。
ガコォン。
「はいっ、た」
ふわあ、と感動するaaa。
「もっかい入れてみろ、そしたら、次からはぜってぇ入るようになる」
ゾロは持っていたボールをaaaに渡す。
aaaはゾロに教えられた通りの体勢をした。
(これが入ったら、ゾロに、告白する)
そっとボールを投げる。
―ガコォン。
「入った……ゾロ、私…」
「入ったな」
「私ね、ゾロのこと好きなの」
ボールを拾うゾロの背中を見つめる。
「……aaa、おれも好きだ…」
拾ったボール二つを再び床に落とし、ゾロはaaaを抱きしめた。
「キスすんぜ」
「ん…」
目を閉じたaaaに、ゾロは触れるだけのキスをした。

「aaaっ!」
「ん!」
ゾロから渡されたパス。
今度はミスしないよう、じっとゴールを見て、敵のチームが来る前に、素早く投げた。
――ガコォンと音を立てて、シュートは決まった。



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