旧短編 | ナノ


※現代パロディ(学パロ)
サンジ:化学教師


新しいものが作れるなんて、――。


マジック


「エタノールは…―」
化学の授業はかったるい。
面倒くさい言葉を並べて、黒板に白い文字を描いていく。
aaaはすぐにでも寝る準備はできていた。
(サンジ先生じゃなかったら寝てる…)
黒縁眼鏡を中指でくいと上げながら、化学反応の説明をする。
春から夏に入るこの季節の、この生暖かい風は、ちょうど生徒の眠気を誘う温度に調整されていた。
aaaはぼう、とサンジを見て、時たま黒板に書かれた説明をノートに書き写している。
風が吹き、化学室のカーテンが舞う。
遮られていた太陽のまぶしい光が少しだけ化学室を照らした。
(サンジ先生、光ってる)
金髪と眼鏡が光っていた。
(…みんな、寝すぎ)
お昼ご飯を終えた午後の授業のせいか、脱落者はいつになく多め。
大半が机に伏せているか、頬杖をついて俯いている。
どちらにしても、サンジの話を聞く人は少ない。
(女子はまぁまぁ…、見てるなぁ)
aaaがサンジと目が合ったと同時に、チャイムが鳴った。
生徒が起き出し、化学の授業は終了。
六時間目の授業だったから、これで学校は終わり。
(よし、帰………、や、今日は四時に終わったから、寄り道…)
サンジにたかる女子が去るのを確認してから、aaaはサンジに近寄った。
「先生、今日来るから。いて」
それだけ言って、aaaは教室に戻った。
(おれの意志は無視か)
はぁ、と溜息を吐いて、サンジは黒板を消した。

「よいしょ、と」
私立だからか、良い革のかばんに不釣り合いな教科書を入れ、教室を見渡す。
もう、ほとんどの生徒は帰っている。
aaaはかばんを持って、また化学室に戻った。

重いかばんを抱え、ガラガラと化学室のドアを開けた。
パン!と破裂音がした。
目を丸くするaaa。
「驚いた?」
サンジが、話し掛けた。
机には実験道具がちらほら。
「さっきの音、なに」
ドアを閉めて、サンジに寄る。
実験道具は試験管と、マッチと、スプレー缶。
スプレー缶には、こう書いてあった。
「水素…」
「おれは来てもいいなんて言っちゃいねぇのに、勝手に来たから、驚かせようと思って」
スプレー缶の水素を試験管に入れ、マッチの火を近付け爆発させる。
さっきのは、その音だったようだ。
「水素は少なかったから、たいしたことなかったな」
にこ、と笑ったサンジは子供みたいだったけれど、言ってることは危険だ。
「ひどい…!」
「硫黄充満とかじゃなかっただけ、マシと思えよ」
サンジは道具を片付け、焦げたマッチをごみ箱に捨てる。
「それはサンジ先生にも危険があるからしないでしょ」
aaaは笑いながら、重いかばんを机に置いた。
硫黄は体に悪い。
「ていうか、そんなことしたら薬品乱用になりますよ」
「は、そうだね」
試験管を洗い、試験管置きに立てかけた。
ぽたぽたと水が垂れていた。

「私、化学好きなんです」
「いっつもおれの話真面目に聞いてるもんね、aaaちゃん」
サンジは青いネクタイを緩める。
「サンジ先生がかっこいいってのもあるけど」
aaaはサンジを真似して胸元のリボンを解いた。
「……真面目に聞いてるやつなんか、そうそういねぇよ」
懐からタバコを取り出し、くわえるサンジ。
「それで…話戻るけど、」
「うん」
「今では当たり前なのかもしれないけど、水素をあっためたら水が出来るとか、私には神秘的だったんです」
水素の入ったスプレー缶を手に取り、注意書きを眺める。
「二つのものから…まったく違うものが出来るなんて、魔法使いみたいって」
イスに座ったaaaは、机に伏せた。
「魔法、使いか。子供が考えそうなこったな」
は、と馬鹿にしたような笑いをするサンジを見る。
「ねぇ、サンジ先生」
ん、とサンジはaaaの方を見る。
「……12時まででいい、から、夢を見させて」
夕方の空が眩しい。
「…12時までなんて言わねぇ。ずっと、夢みてぇな日々送らせてやるよ、」
サンジがタバコを指に挟むと、机越しにキスをした。

「サンジ先生、知ってたんですね。みんな寝てるの」
「教卓からの景色クソすげぇよ?、教室中見渡せる」
「へぇー…、じゃあ女子の熱烈な視線も?」
「ん、あぁ。前にフったはずなんだけど、クソ見てくる。おれを見るのはaaaちゃんだけでいっての」
「……!」
「なに顔真っ赤にしてんの?クソ可愛い、食っていい?」
「だ、め、です!」


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