旧短編 | ナノ


nervous、それでもわたしは


「ゲンマさん、動かないで」
腕を深く切ったゲンマ。
医療班がいないから、取り敢えずの応急処置しか出来ない。
「こんくらい、大丈夫だって」
ぶんぶんと手を振り回すゲンマ。
「駄目!結構切れてるんだから」
ゲンマの手をがっしりと掴み、消毒し、包帯を巻く。
「ってぇ…、優しくしろよ、」
「してます!」
言葉とは反対に、ゲンマに注意されたことによる動揺で力を強めてしまっていたことに、aaaは気が付いていない。
(そんなに痛いのかなぁっ…やだ、力強すぎ?痛いのかな?早く病院に行かなきゃ…!)
包帯がうまく巻けず、aaaはあたふたする。
ゲンマは溜息を吐くと、包帯を押さえた。
「ほら、これで巻きやすいだろ」
ゲンマなりの優しさ。
「あっ、ありがとう、ございます」
ぐるぐる、と巻く。
きつめに巻いたことで、止血の作用もしているはずだ。
「ん、帰るか」
aaaに掴まれていた手を、強引に離す。
まるで掴まれていたことが嫌だっだかのように。
「あ…」
「どうした?」
「い、いえ、なんでもないです。早く帰って病院に行きましょう?」
aaaはゲンマの手と繋ごうとするが、しかし手を引っ込めた。
いつもなら自分から手を繋ぎたいと懇願するのだけれど、あんなふうに嫌がられたらと思うと、出来なかった。
「…aaa?」
「ね、早く」
寂しい手を握り締め、aaaは里を指差しながらゲンマに笑いかけた。
「…あぁ」
ゲンマは小さく頷いて、aaaについていった。

(いっつもベタベタしてるけど…、もしかして嫌がられた?)
ここは病院で、ゲンマは治療してもらっている。
医療忍術で簡単に治るだろう。
(やだなぁ…、ゲンマさん顔に出さないから余計怖いよ……。心の中ではウザがられてたりするのかな)
もんもんと考え事をするaaaは、近付いてくるゲンマに気が付かない。
「…aaa、aaa」
「あっ、げ、ゲンマさん」
やっと気が付いた時には、ゲンマに不自然さを気取られていた。
「帰りましょうか」
ソファから立ち上がり、病院を出ていく。
手は繋がないまま。

「すぐ治ってよかったですね」
医療忍術は凄いです、と言うaaaは、ゲンマの先を歩いている。
「……aaa、変だな」
「はい?そう、ですか?」
「あぁ…」
ゲンマがaaaの頬を撫でる。
「あ、や…っ!」
その手を振りほどくaaaの瞳から涙が溢れた。
「ほら、な。どうした、言ってみ?」
優しく、囁く。
「ゲンマさっ…わたしのこと嫌い…?」
「…いいや」
ふるふると首を横に振る。
「じゃあ、こうされるのは?」
aaaがゲンマの背に手を回し、抱きしめた。
「嫌じゃない」
ゲンマはaaaの腰に手を回し、額にキスをした。
「…よかった…、嫌がってるみたいだったからぁ…っ」
aaaは安堵の溜息を吐き、体の力を抜き、ゲンマに体を預けた。
「悪いな…」
ゲンマはaaaの頭をぽんぽんと軽く叩く。
「ううん、わたしが気にしすぎてるんだよ…」
「そうさせてるのは俺だ」
ゲンマは、aaaを抱きしめている腕の力を強めた。

nervous、それでもわたしは。
愛されている。



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