甘、塩辛、甘。
おめでとう、そう言って差し出されたのはごく一般的なショートケーキのホール。
「爆ちゃんに聞いたよ。誕生日なんでしょ?とりあえず、みんな来ないみたいだから全部食べて」
「お、おぉ…つか珍しいじゃん。空也が俺に優しいなんて」
プラスチック製の簡易フォークでクリームを刺しながらニヤニヤと意味深な笑みを浮かべる元気に、空也は顔を真っ赤にした。
「べ、別にワンホール全部あげるつもりなかったんだってば!爆ちゃんも銀の字も先生も来ないって言うから…っ」
「はいはい、そうだなー」
「い、いらないなら俺が食べる!」
フォークも使わずに、空也はケーキを掴んだ。しかしそれが彼の口に入る前に掴まれ、元気の口内に。
「…え、」
「ん、うまい!」
「ちょ、なにやってんの…?」
「んー?食わせて貰ってる」
「っ!」
口元で笑って返した元気の言葉に、ふと空也の瞳から、はらりと零れ落ちた滴が1粒。
「え、ごめん空也!イヤだった?」
「うっさいバカ!」
「ほんっとごめん!」
ハラハラと、止めたくても止まらない滴。すると、ヤケクソなのか空也は元気の胸ぐらを掴んで引き寄せ…
「!?」
「責任取れ、バーカ」
唇同士を重ねた。へへ、と照れ笑いする元気もまた、真っ赤にした空也に釣られて顔を赤くさせて微笑んだ。
ケーキより甘く、甘く、二人だけのパーティーはこっそり続いた。
END