メレンゲドールは恋をする。
雪が降ってきた。もう2月も終わろうとしているのに、気温と暦は並走しないらしい。
ふと、会いたくなった。今日は学校も休みで、この雪では部活も中止だろう。すぐに止むかもしれないが、半溶けの雪と混ざってドロドロのコートではまともに歩くことさえ困難だ。
――ピコン。
携帯がメールの着信を知らせた。まるで心を読まれたかのように、会いたかった彼からの温かい言葉が紡がれていた。
『おはよう。今日の部活は中止になった。道も凍結しているから気をつけて来い。
誕生日おめでとう』
あぁ、家に行くのは確定なんだね。きっと、ケーキの上に載ったメレンゲドールみたいに食べられて溶かされるんだ。
僕は返事を送ると、クローゼットを開いた。食べられるに相応しい服を、着て行こう。
『ありがとう、メレンゲドールは残さないでね』
新しい歳のはじまりに、また君に新しい恋をした。
End