narcotic(サンプル)

2005年10月、オンリー合わせで発行した同人誌「narcotic」サンプル。



 スラムとは、一般的には貧民窟の事を差すが、ここでは町の名をそう言った。確かに荒れた町だが、スラムと言うには少し賑やか過ぎる様だ。周は千石に言われた通り露店の一角のビルから地下街に潜り、最奥の暗い店内へと足を踏み入れた。
「すみません…」
 しばらくして、奥から一人の少年が出てくる。千石の言う同い年位の少年とは彼の事なのか、しかし、地下の住人であるはずの彼は、外の世界の周より大人っぽかった。周は一回り大きなその少年を見上げて
「あ、あの、アレ…ありますか?」
と問うた。
「あーん、クスリか?」
 態度は身長以上に大きい。その少年のとても偉そうな問いに、周は必死に頷いた。
「金は?地上(うえ)の人間なら持ってんだろ?」
「す、少しなら…。3マニイ(通貨)でもいい?」
「あん?…別に構わねえけど、1g3マニイだぜ?」
 財布を眺め札を数える周の手が止まった。
「俺様の所のは、最上級の葉を使ってるんだ。用意出来ないなら帰りな」
「ね、どうしても無理なの!?」
 慌てて少年の両腕を掴み、周は叫んだ。
「学割はっ…あ、駄目だボク学生じゃないや。なら割引とか、ツケとか…あ、良ければここで働かせて下さい!」
 あまりの一生懸命さに、少年は思わず苦笑した。
「お前みたいな奴、初めてだぜ…そうだな、体売ってくれるんならいいぜ」
「え…?」
 周の目が丸くなった。
「犯らせろって言ってんだよ。1回抱かせてくれる毎に30gやるぜ?」
 ドクン…
 周の体が熱くなった。だんだん鼓動が大きくなる。男同士でそういう事が出来るのは何となくだが知っていた。
 だが。
 30g。
 90マニイの値が付く量。
 そんなに払えなんて、今の自分には無茶だから。
「俺の名は景。年は15で、12の時からクスリ屋やってる。別に、酷くはしないと思うぜ?俺様の抱きたい様に抱くけど…な」
 怪しく笑う景、表情を曇らせる周。双方の間には、暫しの沈黙が流れる。やがて、決心したかの様な顔つきに変わり、周は口を開いた。
「景、さん…」
「呼び捨てでいい」
「景…お薬下さい、体で」



To be Continued…。







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