1.誰にでもスキだらけ

よぉ佐原、え?…今度宅呑みしたい?あぁ良いぜ!じゃあな!

おぉ一条!ん?また沼やりに?おぅ行く行く!頑張れよな!

あれ和也、また遊ぼうって?しょうがねぇなぁ、分かったよ!

あぁ平山、麻雀かぁ!良いな、やろうぜやろうぜ!また今度な!

おぅ零、へぇ〜テーマパークかぁ、じゃぁ今度一緒に行こうな!

涯じゃん!一緒に筋トレ?良いぜ良いぜ、付き合ってやるよ!

つらつら並べたのは、カイジさんがいつもその他の知り合いに返す言葉の数々。

どうしてそうも簡単に返答するわけ。

下心丸見えだと、なんで気付かないかな。

アンタ本当に鈍感だよな…これでなんでギャンブラーやってんの。

思わずため息が出てしまう。

家にいても外に出掛けても、電話や通りすがりにこうやって声を掛けられるカイジさんが、心配で仕方がない。

とは言っても、オレ達はただの同居人。

彼がどんな行動を取ろうと、それは当然彼の勝手なわけで。

オレにだって彼の行動を制限することは、出来ないわけで。

でもその時、ふと思った。

今、買い物帰りで隣を歩く彼は、空を仰ぎ見ながら満開に咲いている桜を見て感動している。

「…なぁ、カイジさん」

「んー?…」

「凄く、素敵だ」

「だよな!すげぇー奇麗だ!」

笑顔で振り向いてきた彼に頬笑みを返して、オレは続けた。

「アンタの事だけど、オレが言ったのは」

「…へっ!?」

「と言うことは、アンタがくれた奇麗って言葉…オレに対してって事で良いんでしょ?」

カイジさんは途端に口籠もって頬を桜色に染めている。

えっと、うん…じゃぁそう言うことにする、とか困った顔で言い出すから可愛くて堪らないんだ。

本当は桜の事を言っていたのは、勿論知っているけれど、誰にでもお人好しな事をして回るものだからさ。

たまにはこうやって、普段の心配を糧にからかってやりたくなってしまうんだ。

それでも嫌いになったり邪険にしたりしないアンタは、いつでも傍にいてくれる。

裏切ったりしないと、転々とした生活の中で初めて感じたんだ。

そっか、きっとみんなそれを分かっているから、カイジさんに構ったりするんだな。

なんだ…オレも一緒じゃないか、周りのみんなと。

今度からは大目に見ようか。

立ち止まって、オレからもう一度声を掛ける。

「カイジさん…」

「…ん?」

「今度からあまり、誰にでもスキ≠見せるなよ」

「え?…別にスキなんてオレには…」

「在るから言ってるんだよ」

「…はぁ…」

「毟られたら困るし」

「だ、大丈夫だってそこは!」

「…今の何の事だか、分かるの?」

「え、そりゃぁ勿論、金だろ?」

「違うよ馬鹿、鈍感…」

さっさと歩き出すと、背後で困り声と共に追い掛けてくる足音がする。

執拗に訊ねてくるけれど、答えてなんてあげないよ。

アンタを誰かに奪い取られるのが困る、なんて言ってあげない。

だって、そんなアンタの反応もオレのスキ≠ネ一つ。

「大目に見ようと思ったけど、止めにする」

「えっ!?何が、どうしてっ?」

好きだらけなアンタだから…。


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スキだらけってか、ただの鈍感じゃねぇかカイジwww

確かに恋だった様よりお借りしました。
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