ねえ
ひごとにしらないひとがいるみたい
がらす片がじゃりじゃり
奥歯のひらたいところで
まぶされた砂糖みたいにじゃりじゃりしてる
ま夜なかの水に泳ぐ
脊骨をひからせて
かなきりごえであったかいふりしてる
おぞましいこわねの昆虫みたい
たべたことないあなたは
その感かくすらしらないんでしょ
さかなのひれ
きれいでしょ
あなたは居ない
だからわたしも居ないよ
お化けのまねごとして
ひったくった夜るで
あなたはぐつぐつ
ほら
恐ろしいままかわいくてやわらかい
背後のきらきらをこわがるかかと
わたしがこぼしていった
おく歯の毒のあとが焦げついて
あなたは魘される
ま夜なかの藍いろに染められた背後の壁が
ぐにゃり溶けて星ぼしを取り込もうとしている
吐きだした蝶ちょがばたついて眼はぐるぐる
わたしをすり抜ける瞬きの透るしぶき
睡るみみに微かな翅おと
ほねがなまめかしくて
ゆるやかなおちる散花
ほどけない砂糖菓子
やわな春先きといえど未だひどく冷える
あとかたもない夢のあとを縁どるまで
それが了るまで
わたしたちいつまでもいっしょにいましょうね
黄金が散り散りになる
冬がえいえんをしくじって
しつこい花の匂いにあなたのまひるがしんだらいいのに
わたしの臓器のなかを蠢いて
ざわざわいわせる寄生虫じみたみえない謎が
恋と見紛う感かくをあなたに残していくはずだった
しらない眼球
すきとおっていられる
それがやっぱりちょっと酸っぱい
あなたがこのうえなく
どうしてもきれいなひとだったから
わたしはそれから生え並んだ歯をひとつずつ叩いてみて
どれかひとつがきんきん痛みを叫ぶのを期待していた
ずっとずっとかなしいから
えいえんに泣いていてもいいようにしてほしかった
だからあなたの嫌悪のなかに埋まったひるがえる翅で
たべた