垂らさないで泣けるの?
なぞらないで蠢くの?
つやつやの頬ほしい
みるくいろに熟れたひたい
乳歯がなに角形
春さむい
あじわいあざやか
それはひらひらのひれのふりをしたなにか
誤ってあなたが呑み込んだ悲惨ななにか
昆虫図鑑のわたしたちが
綴じられたむかしを識らないでいるみたいに
ちいさく爛れたあとの春のねつは
さみしさもわからないまま干涸びる
あなたのうつくしく悍ましい死に様を赦してあげない
まばゆいのにしねないなんて云わないで
わたしあなたにねこ背でいてほしかった
こんなにもさみしいくらいなら
えいえんに奥歯なんていらなかった
なにひとつちぎれないわたしの愚鈍さを
のどでわらってほしかった
そのときの微かなおとを
ずっと秘密に
しておきたかったのに
わたしたち惨いきらきらが似合ってるよ
きっと
もどれないひとたちもそうだったんだよ
ね
わたしにつぼみの甘みはないので
あなたがにどとここにいてくれない