あるはずのない才能はえいえんにあるはずがないところに身を潜めて
それをみつけだすのはあたしの永久歯のどれかひとつが
臙脂色をしていることを証明するくらいむずかしいんだってば!

贅沢なそくばく
りりしい心中
月に円すいをみるような
きんぴかがはりついためだまとか
そんなもの生業にしてる

いろぼけた滲みをよくみておいて
わたしたち柑橘類のよるに惑わされてる!

煙でばらつくるのやめて
それって藝術じゃないから

ほんもののまぼろしが
金縁をたどってやってくる
それは欠けた歯のとんがりの
おとのない災いに似ている

そのまぶしい二色のなかで
美しいなまえを与えられたふちで
あなたが華奢なまま
死を選ぶほどうつくしければいいのに

つめたい根腐れ すごくすき
呪われてもこども産みたいくらい

それっていわゆる女の感性じゃないの?
部屋は真四角で
あなたは脳天がすこしとんがって
すごく心地が悪い
すごく心地が悪い

壁に飾られた淡いいろの点描画みたいに無数の悪魔がそこにいて
わたしが女の感性で身を滅ぼすのをずうっとまちわびている
檻みたいな星ぼしを額から窓枠へ薄くうすくひきのばして
そのぎらぎらはすごくなつかしくて
花の水溶液みたいに気どったにおいがする

吸いついて吐きだしたとき
あなたは脊中に植えられた花を齧っていたにちがいない
なにいろだった?
それだけが重要なことなの?
なにいろをしていたの?
わたしが眼球のふちからこぼしてしまうちんけなぎらぎらを辺り一面に撒いて
それがうつくしいゆめの残骸であってもそうでなくても
あなたは満足げに啜ってくれる?

あなたあたしの角っこのかなしみをみていったでしょ
めめしい惰性のかたまりだって
奇妙なあたしのくちびるのいろにはふれずに
あなたただあたしのみみを噛みつくみたいににらみ刺してた
そのたびに腿にこぼされた愛のことばがぎょろぎょろして
あざやかではなやかなめまいにも似た感覚で眼球がちかちか踊った
(奇しくも化身)いまにも死ねそう 讃えて

うつくしい憑かれ
それがすごくあざやかだ








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