千年一夜の 弐 | ナノ
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:「千年一夜の 弐」(ちとせひとよの)
小説/A5/P112/挿絵4枚とカラー口絵二枚/R18/1000円/
京涼メイン、ゲストトモ大、啓介&渉、酒井、真子、沙雪




とてもリアルな「死」の夢を見た京一。話は涼介が人魚の肉を喰らい不老不死となって京一と出会い、身を繋げる頃になる。渉とともにとある港へと寄った啓介と偶然再会した涼介は刃を交えた二人に割って入ってしまう。
人魚伝説をベースに時間も場所を超えて愛し合う京一と涼介のシリアス長編小説の弐です。
現代ベースでパラレルあり、成人向き、死にネタあり、流血描写(当社比)、暴力描写(当社比)ありです。


本文サンプル


  ぎっぎっぎっと床板が軋む音かと思えば、はしたなくも遠慮なく漏れる嬌声に遠慮しつつ、
「京一さん! あの……っ!」
と、声を掛ければ。
「取りっ……込み中だ! 後にしろ!」
 これまた激しい運動中だろう声が中から飛んでくる。
「……へえ」
 ここのところ急に増えたこういう事態に戸惑いつつ、お猫さんは文字通り京一の気に入りになったんだなあと皆は溜め息を吐く。
 もっとも、その突然現れた、というかこの船が拾った女よりも美しい少年――――青年とも言える彼は、その凄絶ともいえる美貌のせいでこの船の船員に凌辱されそうになったのだから。
 中にはそのぞっとする程の清廉さに不気味がる者もいたが、大方は船長の京一の元から離れずに、よく話せないながらも懐き、勉強しているらしい姿を見て微笑ましく思っていた。
「まあ、船長もな。そう女好きってわけでもなかったしなあ」
「港に馴染みがいる程度だしなあ」
「お猫さんも船長好いとるみたいだしよ」
「船長もあそこまで側に誰か置くの初めてだよなあ」
 取りあえず船員たちは少々どころか非常に羨ましそうに船室の方に目を向け、溜め息を吐いた。

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「ああっ……あああっ……!」
 京一の手ほどきの賜物とはいえ、涼介の性への興味は強く。
 あからさまに京一にねだるさまが、拙いながらも手管も知らないゆえに直接的で、だからこそとても淫らであった。
 京一の興味を惹きたいいじらしい想いもあるのだろうか。いわゆる商売女が行うような演技ではなく、無心にいとおしむような。
「……お前、あんな風にな」
「……きょう、きょう……っ」
 とてつもなく巧みな愛撫を受けて涼介は悦びの涙を流す。さっきまでは涼介が自らいじって尖った乳首をさんざん摘まれ擦られ、中にうねる欲望の強さに浅ましいほど足を広げて腰を振り、勃起して先走りをたらたらと垂らすはしたない性器や、男が欲しくて浅ましく収縮する後孔を眺められた。
「見て……見ぃて……俺の……××、×……」
 びくんびくんと性器は射精を求めて揺れる。欲情した雄の目に、透明な涎を垂らしている糸を引いている充血した性器を晒していた。
「んふ……あはっ……! ああはっ……!」
「ったく……。煽りやがって悪い子だ」
 電流のように流れる乳首からの快感に合わせるよう、腰を波立たせている涼介の性器に舌を這わせ、今にも弾けそうな果物のような瑞々しい亀頭を素早い舌の動きで嬲る。すると、途端に情けないような声を上げてあっさりと射精した。
「ひ、あああっ……アアッ……! ア、ア、……ッ!」
 びゅくびゅくと白濁を噴き上げて、涼介はうっとりとしながら笑みを浮かべる。
「うび……も、挿れ……もっ……して」
 京一の頬に舌にと精液を飛ばし、京一は苦笑しながらそれを拭い舐めとった。
「指で中のイイとこ擦って欲しいのか?」
 京一の言葉に涼介は何度も頷いていた。精液にねっとりとまみれた性器を、まだまだビクビクと揺らしながら、自ら足を開き、腰を上にあげて秘された場所を京一に示す。
「……ここ……俺の、中……良くし、てぇ……」
 綺麗な肉茎から滴る白く濁った精液が、射精の余韻で上下に揺れる睾丸をたどり、縫い筋から息づく桜色の窄みに伝う。
 そのぬるみを使いながら涼介は己の指先をつぷつぷと出入りさせた。
「……いやらしい悪い子だ……。俺に見せ付けて感じてるのか?」
 恥ずかしい部分を京一の目に全て晒して、その上に欲しいとあからさまに淫らな自慰行為を悦びに打ち震えながらしている。興奮もあらわにそんな涼介から漏れる吐息が一段と激しくなって、後孔への指の出入りも激しくなって行っている。
「くふ……、ん、ん、ふ……見いて、見て……きょうちの、うびで……こうし、て」
 とろりと笑みを浮かべて、涼介は手を伸ばした。強く欲情を示す京一の男根に触れたいと、甘えた声で鼻を鳴らす。
「ほら、……おい」
 京一の肉棒を熱心に擦りながら、動きを合わせて京一の目に映るように濡れた後孔へ指を抜き挿しする。
「しかたねぇな……」
 苦笑した京一が涼介の腰を下から持ち上げるようにして、ヒクヒクと指を飲み込んでいる蜜孔へ舌を伸ばした。

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 普段、航海に出る時にはやはり武装をしている。それが外国との商売であっても、広い海では何があってもおかしくはないからだ。だが、必要以上に金銀装飾をそこかしこに飾った、つくりからしてとてつもなく派手で大金を湯水の如く使ったその大きな船は、船主として高橋長者――――後継である次男の啓介が乗っていた。
 荒々しい潮風に日ノ本の人間とは思えない、金の髪が揺れ、深い青を波立たせる海上を色素の薄い吊り目が睨みつける。
「……お前さ」
 その横で黒髪を風に靡かせている渉が、啓介の心に渦巻き淀むモノを宥めようと言葉を出す。
「それが誤解だったらどうーすんだよ」
 啓介は派手な装飾で飾り付けた、まるで中東の青竜刀に見えそうな、変わった形の刀剣の鞘をぎゅっと握る。
「んな訳あるわけねー……アニキはあのスドーとか言う奴のとこにいてあんなことになったんだ」
「……まあ、回りに聞いたとこ以前はあんなじゃなかったってのはマジらしいな」
 啓介はチッと舌打ちすると、甲板につばを吐き捨てた。
「……アニキはオレなんかより頭も良くて綺麗で優しくて。あんなガキみたいに泣くようなタマじゃなかったんだよ……。まるで女みてーに、一体なんだってんだ……」
 眉間に厳しい皺を刻んで、啓介は雲が千切れ飛ぶ空を睨む。
「問題はそれじゃねーだろ? お前の周りから漏れ聞こえる話を聞いてみりゃ、お前のアニキはあやかしじゃねぇかってことだろ」
 渉は黒髪を風に揺らし、遠くに見える地を見つめ言った。啓介からは多分、殴りかかられるか刀を抜かれるかと覚悟―――――予想していたから、何も啓介からのリアクションがないのに気がついて、片眉を上げた。
 見遣った啓介は厳しい顔で水平線を見つめる。
「……歳をとってねーのは、アニキが行方不明になる前からだ。お前が聞いたあやかしってのは、それと……」
 思わぬ啓介の思慮深げな話しに渉の目が細められる。
「アニキが一度生き返ったことがあったからだ」
 は? と渉の目が冗談……かというような笑みを含んだ後、啓介を見てその目が真剣みを帯びていった。
「何? お前の兄ちゃん黄泉がえりかよ……。ったく、マジかよ」
 渉はしまったというような顔をして頭をガシガシと掻いた。その言葉に啓介の視線がぎろっと向き、次いで渉に詰め寄った。
「よみがえり? 何だよソレ? お前何か知ってんかよ?」
 ズカズカと甲板を歩いて詰め寄る啓介に、渉は「あちゃ〜」と言う顔をして、手を大げさに振った。
「いや、何かちらっと又聞きした噂話だからさ。お前の兄ちゃんと関係ないと思うよ」
「何だよ! まだるっこしいな。はっきり言えよ!」
 啓介の剣幕に渉は、仕方ないかと話し出す。
「わかったよ……。オレが聞いたのは、そういうのになっちまった人間は死ねねーってことだよ。なんつうか呪い? のせいで、回りの人間も不幸にしちまうって」
「はあ? ……お前てきとーに吹かしこいてんじゃねーぞ!」
「ああっ? 話せつーから話しただけだろうが! お前はよ!」
「いくら何でも呪いとか頭湧いてんじゃねー? つか真性バカじゃねーの!」
「はあ? 知るかよ! その話を広めた奴にバカって言えよ!」
「取り合えずお前が目の前にいるからお前にバカって言ってんじゃねーか」
「はあ?」
 怒鳴りあう二人の元へ、船員のケンタがあたふたと甲板を走ってくる。
「啓介さ〜ん、もうすぐ東港に着きますよ〜」
 あ? と、柄の悪い二人が揃って振り向くからケンタは冷や汗を掻いた。
「……で、そこにスドーはいんのかよ」
 ケンタは啓介にすごまれてあたふたと手を振った。
「いや、それはまだわかんないっすよ! それらしき船は周りに見えなかったし」
「ったく、スドーらしき船がいたらすぐに教えろ」
「はい! 連絡します!」
 ケンタは日に焼けた顔を真っ赤にして威勢良く返事をした。
「で、そのスドーに会って仕掛ける気なんだろ。相手も相当な武力あるって話だぜ。当のスドーも歴戦の……って奴だ」
 啓介は渉の物言いに肩を竦めた。
「はん、お前がいりゃ大丈夫ってくらい言えよ。渉」
 渉は普段の「秋山」呼びでなく、珍しい名前呼びに再び鼻白む。
「……ったくオレも出るの当然って訳かよ……。お前、席譲られて当たり前って性格直せよな〜」
「うるせー。オレはアニキが良ければいいんだよ」
 渉はまたバリバリと頭を掻くと、
「ふん。その言葉忘れんなよ」
と言って、啓介の肩を拳で軽く叩いた。

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 出航前夜、京一はやはり見送りにて来た夕花と外で会っていた。かと言ってその艶肌を愉しむこともなく、近くの店で食事をして名残惜しむ夕花を宥めていたくらいだ。その後しばししてから、京一の居そうなところを適当に当たっていた智幸が夕花を花屋へと送った帰り道に現れた。
「お早いお帰りで。もうヤッたのか、抜かずの三発くらいはキメて来たんだろうな」
「ヤッてねぇ」
「お前は……また女日照りが続くってぇのに、そんなに女とソノ気にならねぇんだったら極上の舌技とケツを持つこの俺が軽く抜いてやろうか」
「いらん」
 二人連れ立って夜の花街を歩く。呼び込みや声掛けと、様々に誘われながらも軽くいなす。
 そして京一の船が停泊している側の飲み屋で一杯と暖簾をくぐった。
 中は漁師や商売人、様々な男達やそんな男達目当てに身を売りに来る女で賑やかだった。
 二人は少しでも静かに飲めそうな奥の席に着く。
「……堅いにも程があるぜ……」
「女遊びか? それなりにはってとこだ。最近は気分が乗らねぇ」
「は……気分ね」
 智幸は呆れたように肩を竦めた。その目は笑いながらも少々物騒な光があった。しかし、京一はその光に気づいていない。
「そんなに溜めちゃあ……濃い〜夢精しちまうぜ?」
「……馬鹿が。ガキじゃあるまいし」
 京一が運ばれてきた酒を手酌でやりながら、智幸のからかいに悪態を吐く。
「大輝貸してやってもいいが、ケツはダメだぜ」
 京一は飲んでいたぐい呑みから口を離し、少し考え込んだ風に虚空を睨んでいる。
「大輝か……確かに俺にとっても好みではあるがな。……ありゃお前に夢中な犬コロだろうが」
 京一の言葉に智幸はにやりと笑う。




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