emperor2 | ナノ
皇帝2



「…っう!」

その時。
俺の理性の箍が外れた。

俺は天の後頭部と顎を両手で押さえ付け、身動きが取れないように固定をすると天の唇を強く吸い、呆然と薄く開かれた口腔に舌を割り込ませては舌を吸う。

「…んんっ、んっ…!!」

突然始まった口付けに混乱した天が俺の背後に腕を回し、自分の体から俺を引き離そうと必死に藻掻く。だが体の造りが根本的に違うのだ。必死に足をばた付かせながら腰を引いても俺の拘束は衰えず、天の抵抗は無駄に終わるーーガリッ。軋む障子に体を押し付けられ、鍛え上げられた体躯の俺にのし掛かられた衝撃で天が歯を喰い縛った拍子に俺の唇からじんわりと血が滲み。

一旦身を起こす。

激しいキスの余韻を残すように互いの唇を繋ぐ銀色の唾液が糸を引いている。だがこちらを威嚇するように見据えられた天の瞳は、肩を震わせ必死に虚勢を張っているようにも見えて俺の加虐心に火を灯す。鼓動が高鳴る。都合の良い解釈かも知れないが天のそれは俺を挑発している雌猫の様にしか見えない。

けれど天にしてみれば死活問題なのは明らかで、俺が唇を拭う為に腕を離した隙を狙い障子を開けて廊下に出ようと体を捻る。

「待て」

俺が反射的に彼の手首を掴むと、天は靴下を畳の目に滑らせて僅かに開いた廊下の隙間に倒れ込む。俺は天の後ろ姿に腕を捻って動きを鎮めると、馬乗りになり女将や他の客の様子など気にする余裕もないまま制服のズボンを下着ごと一気に引き抜く。柔らかな皮膚。発展途上の未成熟な体。ぞくりと体の芯から競り上がって来るような強烈な武者震いに下腹部が張り詰めるのを感じる。

「…鷹彦、どうし、て」
「お前が自分の役を降りると言い出したからだ」

俺は冷酷にそう言い放つとズルズルと彼の体を室内に引き摺り戻して障子を閉めた上でブレザーを畳に脱ぎ捨てる。

「え?」

俺はこの家に生まれた自分の立場が他人よりも優れて居ると言う選民意識的な思い上がりを抱いた事は一度だって無い。しかしこのくらい派手に言わないと天に対しては侮蔑の言葉にならないと思って敢えて大袈裟な言葉を選んだ。
俺は天と初めて会った時から彼を同類と認識し、もしかしたら一種の運命共同体だと思っていたのかも知れない。天とはより互いを高め合いたいと思っていたし天が道に迷うような事があれば相談にもつもりでいた。恋愛の事でも進路の事でも。勿論それは俺から離れて行く等と言う馬鹿な事を言い出さない限りの話だけれど。

「腰を上げろ」

俺は天の腰を持ち上げると、程好く肉の付いた尻を押し広げて奥に潜む小さな蕾を押し開く。全く使われた形跡の無いそこは薄いピンク色をしていて愛らしい。とは言え前へ前へと逃げようとする天が依然として暴れる為に俺はその姿勢を諦めると彼の背中を覆うように被さり、唾液で濡らした指を楔のように蕾に突き立てた。

「っ!ひあっ!!」

初めて異物を受け入れたのであろうその器官は処女の性器のように狭くて熱い。とても後々受け入れる事になる俺の自身の大きさを考えたら、指一本程度では慣らすに値しないだろう。俺がもう二本増やした指で胎内を掻き回すように指を動かすと唾液が襞に擦れてクチュクチュと鳴る音が卑猥に聞こえた。その濡れた音に天が反射的に両耳を塞ぐ。俺の指が有る突起を見を指で弾くと嫌がおうにも内腿を痙攣させた天の声に甘い色が混ざるようになる。

「はぁっ…」

慣らす事も兼ねて執拗にそこを突くいて行くと徐々に天の腰が指の抜き差しに合わせて揺れ始める。

「あっ。ん、あ、ああ…!」

前立腺の刺激により、どうやら天の小振りな自身も熱を帯びて刺激が欲しくなって居るのだろう。腰をむずむずと動かして男性自身を擦り付けているような動きは原始的だけれど立派な自慰でーー俺は目の前で繰り広げられている淫隈な光景ごくりと唾を飲み込んだ。だらしなく開いた唇から溢れ出す唾液と喘ぎ。天の白い肌がみるみる薔薇色に熱を帯び、天はそれを悦んで居るかの様に美しい。背徳美だ。

「…いい声をしているな」

俺は天の耳元で低く甘く囁くと、耳の裏から項にまで一気に舌を這わせて行く。予想通り全身が敏感な天には下半身と共に与えられるその愛撫は己の理性を打ち壊すには十分な代物だったらしい。俺の指がその体を貫いている為に力の入らない腹筋を必死に折り声を圧し殺すと言う素直な反応を示す天に俺は並々ならぬ愛情を感じる。
密着した体に感じる天の鼓動。俺は頃合を見計らい天の胎から指を引き抜くと、薄い体を仰向けにさせてその上に跨がった。カチャカチャと言うベルトを外す音に天がとろりと蕩けた瞳でぼんやりと俺を見上げる。ズボンの前を開けて下着をずらし男性自身を取り出せば俺のそれは逞しく脈打ち立派にそそり立つ凶器に変わる。

「…あ!無理…っ」

血管を浮き上がらせて先走りを溢れさせるそれは今の天の目には兇器のように映るのだろう。俺は彼の髪を掴んで顔を上げさせると、恐怖に首をイヤイヤと左右に振る天の口に引き抜いたネクタイを丸めて噛ませ彼の叫びを封じる。

「ならば俺の物になれ。
統べられる存在になればいい。お前は俺の支配を受けていればそれでいいんだ」

微かに香る天の香水の甘い匂い。
俺は細い天の両脚を思い切り開脚させると蕾に自身の濡れた亀頭を押し付ける。

グチュッ。

透明な先走りで入口を潤わせる為に腰を少し揺らめかせてみると、ほぐれ始めた蕾が無意識に蠢いてヒクヒクと収縮して俺を求めた。

「そんなに欲しいか。
それならば与えてやるよ」

俺は天の膝の下を抱えてわずかに腰を浮かせるとそのまま猛り狂うモノを限界まで一気に彼の蕾に突き刺した。

「――――!!!」

並々ならぬ質量を誇るそれが天の小さな細い器官を寸分の隙間もない程に満たし尽くす。天は蕾を締める事で俺の侵入を阻もうとするが、恐ろしい硬度を持った俺の自身が強引には敵わない。俺の先端が直腸にまで届きそれが擦れる度に走る痛みに髪を振り乱す天の口から俺は唾液塗れのネクタイを取り出す。そして天の薄い金茶色の柔らかい猫っ毛を指で梳きながら熱い吐息もそのままに、俺は弛緩した天の唇に自分の唇を改めて重ねた。

俺と対等でいる事を拒むなら。
俺の傍にいる事を拒むなら。

「ならば俺の物になれ」

掠れた声でもう一度呟くと、タイミングを計ったように瞳を閉じた天の目尻から涙が一筋こぼれ落ちた。それが生理的な涙なのか感情的な涙なのか承諾の物か拒絶の物かは俺にはわからない。

しかし天。
俺は今本当の目的を本当に見つけた様な気がする。





お前を支配する事だ。



End
読んで下さりありがとうございました!!
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