境界線消滅
小さい頃から誰よりも近くにいる女の子。
世間で言う家が隣同士で母親同士が仲がいい幼馴染み。
踏み込めない線。
飛び越えられない線。
境界線が僕らにはある。
2月28日、日付が変わる数十分前。
家が隣同士で窓を開けば互いの部屋を行き来できるくらい近い不二と名前の部屋。
窓辺に座りながら不二の誕生日カウントをしながら話すのはいつの間にか毎年恒例となっている。
いつもなら3月1日になるのだが今日は違う。
2月29日が存在する。
4年に1度の不二の誕生日の日付。
「もうすぐ周助の誕生日だね。小さい頃1番に周助に“ハッピーバースディ”って言いたくて始めたことなのに毎年やってるね」
「僕は嬉しいよ?名前に毎年1番にお祝いされて」
「私もなんか特権みたいで嬉しいよ?今日の夕方はおばさんや由美子さんに呼ばれてるからいくね」
「待ってるよ。……名前」
「ん?」
「僕、今年は欲しいものがあるんだ」
「言って。リクエストに答えるから」
不二の言葉に名前は笑いながら言う。
「名前が欲しい。幼馴染みとしてじゃなくて僕は君を女の子としてずっと好きなんだ。今言った言葉を僕は後悔しない!幼馴染みで終わりたくないんだ」
不二が名前を見ると驚いた顔をするがいきなり窓に脚をかけこちら側に飛び移る。
不二は慌てて受け止めて抱き締める。
「私だってずっと好きだよ!先に言わないで…めちゃくちゃドキドキして壊れそうだよ」
名前の顔を見ると真っ赤になっている。
ちょうど時刻が2月29日・0時になる。
「今年は最高の誕生日だよ。欲しかったものも貰えたからね」
「ハッピーバースディ周助。返品不可だからよろしく」
「大事にして離さないから安心してよ」
二人は顔をあげ自然とキスをする。
2月29日0時・境界線消滅。
END
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